百田尚樹氏の「大放言」を読んだ。この新著に興味を持ったわけは、同氏の著作「永遠のゼロ」、「海賊とよばれた男」、「夢を売る男」を読んで、その表現力・構想力を高く評価していたこともあるが、最近メディアで同氏がさんざん叩かれていたことが記憶にあったからである。
読む前に目次を見ると、メディアが百田氏に貼ったレッテル≪過激な保守派≫とは矛盾する「日本は韓国に謝罪せよ」という章がある。「なんだ、これは!」と思い、まずこれから読み始めた。
その章は、日本統治時代の所業を批判している(ように見える)。
●教育の破壊:
朝鮮人に頼まれもしないのに、五千もの小学校を作り、ハングルを教え、文盲を激減させた。おまけに帝国大学まで作った。
●伝統文化の破壊:
王族、両班、中人,常人、白丁()という身分制度を廃した。権利を剥奪された王族、両班はさぞ怒ったに違いない。白丁にとっても迷惑だったことだろう。
●自然の破壊:
禿山に植林して、勝手に景色を日本風に変えてしまった。美しかった朝鮮の土地に醜い鉄道網を敷きまくった。道路や河川を整備し、橋やダム、発電所を作り、自然を破壊した。
●人口問題:
荒地を開墾して農地を増やし、近代的農業を導入して、僅か30年で人口を2.5倍に増やして人口問題をひきおこした。
だから日本政府は韓国および北朝鮮に対して、誠意をもって謝罪すべきである。
始めのうちは「なにをバカなことを言ってるんだ」と思いつつ読んでいたが、途中で「これは皮肉をこめたジョークなんだ」と気づいた。それならば「我が意を得たり」で、大笑いである。
「日本は韓国に謝罪せよ」以外にも、世の中の理不尽な事象をすべて一刀両断に切り捨て、痛快の一言。特に面白い部分は、朝日新聞・毎日新聞がNHK経営委員としての百田氏を批判したことに対する反論。一連の発言の一部を切り取って過激に批判する手法に対する反論だが、これを読むと新聞記事は「表現の自由」という錦の御旗で守られており、これでは新聞の方が一方的に強く、攻撃された個人が反撃できる余地がほとんどないことがわかる(百田氏は、こうして「大放言」で反論しているが)。メディアの権力を強すぎる現況をどう打開したらいいのか。大いに考えさせられた。
そんな大問題はさておき、「大放言」は知的娯楽としての価値がある。一読をおすすめする次第である。