数カ月ぶりに熱海の「笑笑(わらわら)」に行ったら、テーブルに見慣れない端末機がある(写真)。タブレット形で、察するに料理発注機らしい。従業員は「これに注文を入れてください」と言って、立ち去った。
そばにあるメニューブックと端末の画面を見比べると、まったく同じである。画面の料理に指を触れて、“注文する”と入力すればいい。画面の指示通りに注文の入力を完了した。
メニューブックは英語が主体で、日本語はその下に小さく表示されている。以前は、日本語が先で、字も大きかったが、逆になった。端末機を調べると、言語の選択が可能で、英語・日本語以外に中国語と韓国語のチョイスがある。明らかに、外国人観光客向けだ。これなら注文を取る係はいらなくなるし、間違いも起きない。室内を見回すと、従業員の数が以前よりはるかに少ないことに気づいた。
すぐ運ばれてきたワインを飲みながら、注文したチキンとスモークサーモンなどを待つことおよそ20分。時間がかかりすぎる。以前は、注文して5~6分で料理が運ばれてきた。私の注文の仕方がまずかったのかもしれないと思い、従業員を呼んで調べてもらうと、注文は間違いなく入っていた。IT化して人員を削減した時に、料理人も減らしたのではないだろうか。
やっと運ばれてきた注文の品を見ると、心なしか以前より一皿の分量が少なくなったような気がする。
問題点はまだある。それはサーバーが食べ終わった皿を片付けようとしないこと。配膳した帰りに周囲のテーブルを見渡せば、すぐ気がつくはずだが、そんな態度はさらさらない。料理を運んできた帰りに、空いた食器を持ち帰る知恵も働かないらしい。
さて、我々の食事スタイルは、ゆっくりアルコール飲料を飲みながら、タパスのような小皿料理をいくつか食べ、最後にご飯ものを少量(つまりワイフと半分づつ)、食べる流れである。だから以前は、料理を二度に分けて注文していた。最初に全部注文すると、すぐさま一遍に運ばれてくるので、料理が冷めてしまうからである。しかし、こんなスローペースでは、あとで注文するつもりだった料理もすぐ注文した方がよさそうだ。
そこで、酒の肴としてフライドポテトとご飯ものを注文した。ところが、ご飯ものを食べ終わってもフライドポテトが来ない。従業員を呼んでフライドポテトの注文をキャンセルできるか聞いたら、従業員はすぐさまフライドポテトを運んできて、口もきかずにテーブルの上にドンと置き、無言で立ち去った。だから、フライドポテトがデザートになった(笑い)。
入店した6時頃には、まだ空席があったが、間もなく満席になった。以前よりも繁盛している。繁盛はご同慶だが、料理もサービスも以前の方が格段によかった。肝心の勘定は以前より2割ほど安く上がったが、もう懲りた。「笑笑」には二度と来ないだろう。IT化による人員削減は、店としては進化だろうが、われわれには劣化である。残念だ。