この十一月、明後日から幕張メッセで、日本初の防衛・セキュリティ総合展示会、「DSEI JAPAN 2019」、ロンドンで隔年開催されていた世界最大規模の武器見本市が、初めてイギリス以外の国で開催される。日英両政府の肝入り。両国の国防・防衛省、外務省も後援。日本からは経済産業省もだ。
世界の防衛産業と日本の防衛コミュニティが共同。陸・海・空・サイバー・セキュリティなど安全保障に関するすべての領域をカバー。未来のイノベーションをサポートする。死の商人たちによって、数多の武器が展示される。世界の防衛・危機管理関連企業約百五十社が出展。うち日本企業は約五十社。ニーズにあったクライアントに出会う絶好の機会というわけだ。
ベル社製、木更津へ暫定配備される予定のオスプレイが飾られることは間違いない。
開発中の無人戦闘ヘリ「V247ビジラント」も展示されるだろう。無人化省力化が世の流れ。「ヘルファイア」も搭載可能、オスプレイの護衛も出来る。海上自衛隊が関心を抱いてるようだ。欧米企業が日本を拠点にアジアに売り込みをかけ、イスラエルの軍事大手三社も出そろうだろう。
三菱重工は、今年度から防衛庁に提案している沿岸監視用小型ドローン、機雷探知用の水中ドローン、東南アジアへの輸出もにらむ水陸両用車を展示するだろう。川崎重工は対潜哨戒機「P1を出すだろう。イギリスとニュージーランドに輸出しようとしたけど失敗したものだ。防衛装備庁ブースには軍用輸送機「C2」も展示するはずだ。ニュージーランドやアラブ首長国連邦への輸出を目論んだが見込みなしだった。
アジアの防衛市場は広がる一方。日本の防衛予算が過去最大の五兆円に達し、海外のパートナーと手を組む機会が急速に増えてきた。防衛装備庁が応援している企業も出てくるだろう。「オオハシ」はゴム製の臨時ヘリポートを出すだろう。日本版海兵隊と言われている「水陸機動団」での採用が決まっている。
軍事企業化しているJAXAは「はやぶさ2」の実物大模型を出すと予想される。目玉はSSA、宇宙状況監視システム。デブリ対策や宇宙での攻撃に備える。「宇宙兄弟」の夢が軍拡競争に利用され、国立天文台まで安全保障目的に使われている。
完成品の武器輸出は難航ばかりが、共同開発は確実に進行している。日本の自動車技術の軍事への取り込みも期待されてるはずだ。製造インフラが整備された日本はアジア向け生産輸出拠点にはもってこいというわけだ。
「9条世界会議」をやった幕張メッセで武器見本市。武器を爆買いすることで、教育、医療、福祉予算が痩せ細ってく。大学でも軍事研究部門にばかり予算がつく。幕張メッセは千葉である。千葉県はほとんどまったく展示内容を把握してないというが、趣旨は理解しているはずだ。つい最近台風被害の人命救助で活躍したはずの自衛隊の面々が、今度は同じ千葉県で、人の命を奪う武器を選んでいる、ということになる。
杉原浩司さんは言う。「武器見本市への千葉県有施設の貸し出しは、「戦争という手段によらずに紛争を解決する道を追求する」と明記した「非核平和千葉県宣言」(1994年10月、千葉県議会で決議)に明らかに反するもの。」
安倍政権は、改憲法案で9条に手を入れることへの反発を警戒。ただ「自衛隊を明記する」としているが、憲法に「国防」「自衛隊」という概念はない。定義もないまま文案に入れられるはずもない。
「積極的平和主義」の旗の下、安倍政権は武器輸出三原則に代わる「防衛装備移転三原則」を策定。一定の条件を満たせば武器の輸出を認め、輸出対象となる国も大幅に拡大。パレスチナに対する殺戮を続けるイスラエルを紛争当事国に当たらないとし、準同盟国として商売相手にできるようにした。武器輸出三原則という歯止めを失い、日本版「軍産複合体」の形成が始まっている。長距離巡航ミサイルの導入、「いずも」型護衛艦の空母化、それに搭載する短距離離陸戦闘機F35の保有。「解釈改憲」は総仕上げの時期にかかってしまってる。
杉原浩司さんは言う。「中東などで国際人道法違反の戦争犯罪(無差別空爆、無人機戦争など)を行う国に大量の武器を供給したり、核兵器の製造に関与するなど、戦争犯罪に公然と加担する軍需企業=「死の商人」に憲法9条を持つ日本が商機を与えることはあり得ない。」「武器見本市の開催は、戦争と武力による威嚇、武力の行使を永久に放棄し、陸海空軍その他の戦力を保持しない、と誓った憲法9条の平和主義とは決して両立しない。」
まったく、賛成する。
この見本市のことも、演劇版「憲法くん」に登場します。