オカブには故郷がない。
あえて言えば今住んでいるところが故郷である。
だから故郷を出でて、何かを成すなどという感覚には乏しい。
この今住む地を離れたのは、新卒で姫路に赴任した5年間だけである。
当初は、さして気にしてはいなかったが、しばらくして猛烈なホームシックに罹った。
再び東京に転勤になったときには、心身共にへとへとだった。
たしかに、この地での、一筋の路地や、建ち並ぶ街並みにも、深い思い入れがある。
もはや、この地を青山の地とするしかない。
しかし、自らの生まれ育ったところというものは、親の懐のようなものである。
つくし野の毀たれかけたかしらいし 素閑
この路を行けば古寺へとつくしかな 素閑
つくし群れ茶色の小瓶の捨ててあり 素閑
猫もまたおもひの果てやつくし野に 素閑
稜々と山巓映えるつくし野の 素閑
山の端の茜の末やつくしかな 素閑
親と子の背をくらべるやつくしんぼ 素閑
山猿も雫に濡れよつくしんぼ 素閑