朝風呂のあとは朝食をとり、大涌谷に向けて出発した。
紅葉でもないのに、箱根の観光客は相当数に膨れ上がっているようだ。近くまで来たところで駐車場待ちとなり、「ここから約30分」との看板が出ている。ドライバーの義弟には悪いが、待ち時間を利用して居眠りし、無事停められたときには頭がスッキリしていた。
車外に出ると、寒暖差の大きさに驚く。
「さ、寒い~」
ここはかつて、地獄谷と呼ばれる場所だったそうな。寒氷地獄に身震いし、バッグの中の手袋を出した。
地面から噴き出す火山ガスが、観光気分を盛り上げる。人混みの中にも外国人が目立ち、国際都市HAKONEを実感した。
この寒さでも、売店には「たまごソフトクリーム」が売られている。そして、それを食べる人もいる。だが、決して美味しそうな表情ではない。「食えるもんなら食ってみろ」と挑発された気がして、「おう、上等だぜい」と応じただけなのかもしれない。
頭の中で、くだらない妄想をしながら、ひたすら石段を上る。
「着いた~」
上まで登ると、妹が黒たまごを買ってくれた。生卵を温泉池でゆでると、地熱と火山ガスが化学反応を起こし、黒い殻のゆで卵ができるそうだ。これを食べると、寿命が7年延びると言われている。
だが、明らかに運動不足と思われる人々は、歩くだけでフーフー言っているではないか。プラマイゼロにならなきゃいいけど、と心配になった。
売り場付近はメチャクチャ混雑していたので、下山し車内で食べることにした。
買ってから15分ほど経っていたにもかかわらず、たまごはまだ熱い。釜茹で地獄を味わわされたのだろう。私はたまごに生まれなくてよかったと安堵し、黒い殻を剥く。中から、弾力性のある白身が登場した。
パクリ。
白身も黄身も、味が濃いような気がして、とても美味しかった。寿命7年分をゲットする。
大涌谷のあとは、わがままを言って、ポーラ美術館に連れて行ってもらった。
都内近郊の美術館にはいつでも行かれるが、ここは滅多に来られない。評判もいいし、一度は来たかった場所だから、思わず先頭を歩いた。
「紙片の宇宙」というテーマで、挿絵の展示をしているようだ。
印象に残る作品をあげてみたい。
マリー・ローランサンの名前は知っている。でも、どんな絵を描くのかは知らなかった。柔らかな輪郭の淡い色づかいが、ゆる~い印象を与える。日々、時間に追われ、あわただしい生活をしている身には、「肩の力を抜いてリラックスリラックス」と言われているようで、初対面で好きになった。
お気に入りの、アンリ・ルソーも見つけた。
茶を基調とした夕焼けのグラデーションが落ち着く。「今日も一日お疲れ様」とねぎらわれた気がした。
そしてルノワール。
彼の描く女性は、毎日、箱根の温泉に入っているような色艶のよさである。
気位の高そうな流し目が、「私ほどじゃないけど、あなたもお肌がふっくらしたわね」とささやいている。「まあね」と応じた。
名画をたっぷり堪能したあとは、ランチである。コラーゲンたっぷりの、牛シチューを選んだ。
軟らかくて、実に口当たりがよかった。こちらのレストランは、見た目にも味にもこだわりが感じられる。やはり、来てよかった。
自然に親しみ、美味しいものに舌鼓を打ち、芸術を愛でて箱根の2日間は終わりを告げた。
東京に戻ってからも、お肌はツルツルのままだ。翌日はブルーマンデイだったが、鏡をのぞきこんでは「いい感じ~♪」とニヤけて出勤した。
ところが、翌朝の洗顔でしくじった。洗顔料を使いすぎたのだ。つややかな頬から急激にハリが失われ、皮膚が白くケバ立っている。
しまった、またカサカサに戻ってしまった!
以来、ずっと東京乾燥肌が居座っている。
哀しいかな、箱根ツルツル肌も、上京後は1泊2日で去って行った。
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※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
紅葉でもないのに、箱根の観光客は相当数に膨れ上がっているようだ。近くまで来たところで駐車場待ちとなり、「ここから約30分」との看板が出ている。ドライバーの義弟には悪いが、待ち時間を利用して居眠りし、無事停められたときには頭がスッキリしていた。
車外に出ると、寒暖差の大きさに驚く。
「さ、寒い~」
ここはかつて、地獄谷と呼ばれる場所だったそうな。寒氷地獄に身震いし、バッグの中の手袋を出した。
地面から噴き出す火山ガスが、観光気分を盛り上げる。人混みの中にも外国人が目立ち、国際都市HAKONEを実感した。
この寒さでも、売店には「たまごソフトクリーム」が売られている。そして、それを食べる人もいる。だが、決して美味しそうな表情ではない。「食えるもんなら食ってみろ」と挑発された気がして、「おう、上等だぜい」と応じただけなのかもしれない。
頭の中で、くだらない妄想をしながら、ひたすら石段を上る。
「着いた~」
上まで登ると、妹が黒たまごを買ってくれた。生卵を温泉池でゆでると、地熱と火山ガスが化学反応を起こし、黒い殻のゆで卵ができるそうだ。これを食べると、寿命が7年延びると言われている。
だが、明らかに運動不足と思われる人々は、歩くだけでフーフー言っているではないか。プラマイゼロにならなきゃいいけど、と心配になった。
売り場付近はメチャクチャ混雑していたので、下山し車内で食べることにした。
買ってから15分ほど経っていたにもかかわらず、たまごはまだ熱い。釜茹で地獄を味わわされたのだろう。私はたまごに生まれなくてよかったと安堵し、黒い殻を剥く。中から、弾力性のある白身が登場した。
パクリ。
白身も黄身も、味が濃いような気がして、とても美味しかった。寿命7年分をゲットする。
大涌谷のあとは、わがままを言って、ポーラ美術館に連れて行ってもらった。
都内近郊の美術館にはいつでも行かれるが、ここは滅多に来られない。評判もいいし、一度は来たかった場所だから、思わず先頭を歩いた。
「紙片の宇宙」というテーマで、挿絵の展示をしているようだ。
印象に残る作品をあげてみたい。
マリー・ローランサンの名前は知っている。でも、どんな絵を描くのかは知らなかった。柔らかな輪郭の淡い色づかいが、ゆる~い印象を与える。日々、時間に追われ、あわただしい生活をしている身には、「肩の力を抜いてリラックスリラックス」と言われているようで、初対面で好きになった。
お気に入りの、アンリ・ルソーも見つけた。
茶を基調とした夕焼けのグラデーションが落ち着く。「今日も一日お疲れ様」とねぎらわれた気がした。
そしてルノワール。
彼の描く女性は、毎日、箱根の温泉に入っているような色艶のよさである。
気位の高そうな流し目が、「私ほどじゃないけど、あなたもお肌がふっくらしたわね」とささやいている。「まあね」と応じた。
名画をたっぷり堪能したあとは、ランチである。コラーゲンたっぷりの、牛シチューを選んだ。
軟らかくて、実に口当たりがよかった。こちらのレストランは、見た目にも味にもこだわりが感じられる。やはり、来てよかった。
自然に親しみ、美味しいものに舌鼓を打ち、芸術を愛でて箱根の2日間は終わりを告げた。
東京に戻ってからも、お肌はツルツルのままだ。翌日はブルーマンデイだったが、鏡をのぞきこんでは「いい感じ~♪」とニヤけて出勤した。
ところが、翌朝の洗顔でしくじった。洗顔料を使いすぎたのだ。つややかな頬から急激にハリが失われ、皮膚が白くケバ立っている。
しまった、またカサカサに戻ってしまった!
以来、ずっと東京乾燥肌が居座っている。
哀しいかな、箱根ツルツル肌も、上京後は1泊2日で去って行った。
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「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)