毎年、天皇誕生日には、親族とのクリスマス会が待っている。
「私はケーキとテリーヌ、フルーツを持っていくわね」
姉と妹には、前もってメールで連絡をしておいた。
「じゃあ、私は泡物とクラッカー、パテにしようかな。そうそう、お客さんから大きなチョコレートをもらったのよ。とても食べきれないから、みんなで食べようよ」
姉はいつもアルコール係となっている。今年はそれに加えてチョコレートか。
ん? 待てよ。となると、ケーキの種類が限られるってことね。
「今年はチョコレートケーキにしたのよ。で、こっちはチョコレート」
「えー、他のケーキなかったのぉ?」
なーんてことになったら悲惨だ。チョコレートケーキは絶対に買っちゃいかん!
私は気を引き締めて、オーソドックスなイチゴのデコレーションを予約した。
そして迎えた当日。妹たちは、せっせと料理に励んでいたようだ。
「ミートソースを作ってみたけど、美味しいかどうか……」
義弟が自信なさげに披露した。

すかさず、姉が、いたずら心を起こしたような表情で尋ねる。
「セロリ入れたの?」
「入れてない」
「ふっふっふ~」
どうやら、義弟はセロリが嫌いのようだ。ミートソースに入れるべきところを省略したから、姉にからかわれたのだろう。で、お味のほうは?
「うまっ」
「セロリなくても問題ないんだね」
さっぱりしていて、挽肉の味が生きているミートソースだったから、大好評。飛ぶように売れた。
こちらは、妹が作ったナントカジュレ。

前菜にぴったりの軽さで、イクラでも食べられそうだ。なんて、寒いことを言っている場合ではない。
「キッシュは買ってきたヤツ。大豆を使っているんだって」

義弟の説明に頷き、一切れ口に運んだ。うーん、ヘルシー。なかなかバランスがいいんでないかい?
「アタシも用意してきたんだよ。ほらこれ」
母がタッパーを出して、皿に取り分け始めた。だが、それは、見間違いかと思う料理だった。
「ななな、なにそれ?」
「煮卵と茄子」
「はっはっは! だって、クリスマスだよ!?」

思わぬ珍客もあったが、これが意外に美味しい。茄子は柔らかく煮えていたし、煮卵はしょうゆ味が利いていた。見た目で判断してはいけないと反省する。
かくして、宴会は進んでいった。今年は料理が充実していたせいか、おしゃべりはそこそこに、食事を楽しんだ気がする。

お腹がはち切れそうになっても、デザートは別だ。
「これが、白金台のショコラティエ・エリカっていうお店のチョコレートよ」
「うわあ、美味しそう!」

中にはマシュマロやクルミなどが入っていて、結構なボリュームである。
「で、こっちがクリスマスケーキ」
「へー、可愛いじゃん」

10等分に切り分けたケーキの隣に、これまた10等分にしたチョコレートを並べると、なかなかの迫力だ。まずは、フワフワのケーキからいただいた。だが、チョコレートの方は、硬くてフォークが刺さらない。少々行儀が悪いが、「エイッ」と手づかみで取り上げ、ガブリといくのが早い。チョコレートには適度な甘みがあるのに、マシュマロは予想に反して淡白だから、全然しつこくなかった。
誰かに何かを贈るときには、エリカの商品も候補にしてみたい。
宴会が終わったのは23時を回っていた。今年のカレンダーには感謝をしている。翌日は土曜で仕事がない。毎年、眠い目をこすりながら、早起きして電車に乗っていたことが嘘のようだ。
天皇陛下が、生前退位をご希望されていることは、今年の10大ニュースのひとつである。
今後、天皇誕生日がどうなっていくかはわからないが、親族で集まるイベントは続けたい。

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