これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

仮面ライダーと同窓会

2015年11月15日 19時55分31秒 | エッセイ
 高校の教員になり、初めて卒業生を送り出したのは12年も前のことである。
「僕たち今年で30歳だから、記念に同窓会を開くんです。よかったら、先生たちも来てくれませんか」
 幹事と仲のよい男子から知らせを受け、喜んで参加することにした。
 一緒に学年を持った元同僚と会場に行くと、すでにたくさんの卒業生が集まっていた。
「えー、誰が誰だかわからない。全然おぼえていないわぁ~」
 元同僚は苦笑していたが、受付ではネームプレートが配られている。名札さえあれば、心強いというものだ。偉いぞ、幹事!
「こんにちはぁ。お久しぶりです」
「こんにちは。今日はありがとうございます。元気でやってる?」
「はい。先生も?」
 こんな会話を繰り返し、何人もの元生徒と言葉を交わした。女子はみんなキレイになっていて、恋に仕事にと充実した毎日を送っているらしい。3分の1ほどがママになったという。子どもの世話を通して、ますます大人になるだろう。
 男子は、仕事がきついのか、ガリガリに痩せてしまった子がいたり、逆に原型をとどめないほど太ってしまった子がいたりと極端だ。
「先生、オレ、20キロ太りましたよ」
「オレも~」
 ……この人たち、病気になっていないかしら。
 実に不安だ。
 中には、高校時代からまったく変わらず、マイペースに生きている男子もいて頼もしい。
「それでは皆さん、記念撮影をしたいと思いますので上座にお集まりください」
 幹事の呼びかけで場所を移動する。ここで、会場の名物ハニートーストが登場した。



「先生方、お世話になりました。本日はお越しくださいましてありがとうございます」
 幹事の挨拶に、会場がドッと沸く。何と、花束贈呈もあるではないか。高校を卒業してからの成長ぶりに、胸が熱くなった。
 撮影が終わると、ようやく周りを見る余裕が生まれた。おやおや、たくさんのフィギュアが所狭しと飾られている。



 ここにも。



 あそこにも。



 あとからわかったことだが、ここは「仮面ライダー ザ ダイナー」という場所だったらしい。マニアだったら大喜びするのに、卒業生たちは一向に興味を示さない。面白がって写真を撮っているのは私だけ。







 特に等身大の「仮面ライダー旧1号」と



「旧2号」には、カメラが向けられそうなものなのだが。もったいないことである。



 旧1号の近くには、ひな人形のように並べられたフィギュアもあり、なかなかの迫力だ。



「何やってんですか、先生。仮面ライダー好きなんですか」
 後ろから男子が2人、怪訝な表情で近づいてきた。変な人だと思ったのかもしれない。
「うーん、特に好きじゃないけど、価値があるよこれは」
「そうですか。じゃあ、ここに座ってください。撮ってあげますよ」
 仮面ライダー旧1号と旧2号の間には、ショッカー首領のイスがある。
「わーい」
 私は男子の1人にカメラを預け、玉座に腰を下ろした。
「もっと偉そうに、肘掛けに腕を置いて、足を組んでください」
「こう?」
「そうそう」
 パシャッ。



「じゃあ、縦でもう1枚」
 パシャッ。
「イエーイ、ありがとう~!」
 すっかりハシャいでしまった。幹事の女の子は、「先生、飲み過ぎていませんか」と声をひそめて話しかけてくるが、飲み過ぎどころか話してばかりいて、料理もお酒もほとんど口にしていない。
 お腹がすいて料理の近くに行くと、別の女の子たちがハニートーストを切り分けている。何とグッドなタイミング。
「アタシにも、アタシにも」
「はーい。先生どうぞ」
 食パンと生クリームはよく合う。フルーツも載っていて、とても美味しいが、フォークやスプーンでは食べづらい。
「先生、これは箸で食べるのが正解だと思います」
「あっはっは」
 あっという間の3時間だった。最後に教員から挨拶をして、幹事をねぎらい、楽しい同窓会は終了した。
「じゃあ、今度は40歳のときにお願いします」
「はーい! 元気でね」
 ブンブン手を振って別れを惜しんでいたら、幹事の女の子がまた声をかけてくる。
「先生、大丈夫ですか。お酒に強くないのでは」
 ……どうも彼女は、私が酔っ払いだと思っていたようだ。
 間違いではない。お酒ではなく、雰囲気に酔った。私の中では未熟な高校生だった子どもたちが、立派な社会人になって、見事な成長ぶりを見せてくれたのだ。こんなに素敵なことはない。
 家に帰って、花束を取り出す。



 今日はどうもありがとうございました。


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 「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
 「うつろひ~笹木砂希~」(日記)

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10 コメント

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先生は (ZUYAさん)
2015-11-15 22:42:57
渋谷の病院といい

ガンダムカフェといい

ショッカーの椅子といい

お次は...楽しみです~
返信する
【空白の…】 (心機朗)
2015-11-16 01:49:40
現在の平成仮面ライダーシリーズの第一段であるクウガは2000年の1月放映開始だからたぶん彼らは中学生かな…?その前のBLACK RXに至っては幼児だから、丁度特撮を見始めるであろう彼らの小学生時代が完全な仮面ライダー空白時代。興味なかったのもわかる気がします。
しかし、ショッカー首領に座る砂希さん、様になってますね。まさにラスボスの貫禄。
子供たちの成長がうれしいですね。素敵な時間が過ごせましたね。
返信する
趣味 (砂希)
2015-11-16 17:40:06
>ZUYAさん

変わった場所が好きなんです(笑)
ディズニーランドもいいけど、少々屈折しているもので、メジャーすぎるのはダメですね。
もし、このフィギュアがすべてガンダムだったら……。
卒業生そっちのけでガラスにへばりついていたかも(笑)
20回くらい「飲み過ぎていませんか」と聞かれたことでしょう。
次はどこで何をしようかしら。
返信する
さすが (砂希)
2015-11-16 17:46:38
>心機朗さん

なるほどなるほど。
実に理論的な謎解き。
こっち方面の豊富な知識には舌を巻きます(笑)
彼らにとって、仮面ライダーは通行人程度でしかなかったのかしら。
ここに来て一番喜ぶのは、中高年だったりして。
そもそも、何故この部屋になったのかが謎です。
たまたま空いていたとか…。
貫禄不足で、すぐ倒せそうなラスボスでしょ~(笑)
子どもの成長はいいですね。
こちらもオバさんになるはずだ。
返信する
写真を撮りまくった…(笑) (片割れ月)
2015-11-16 18:11:28
椅子に座っている首領は砂希さんですか?そのへんの娘っ子みたいでイケてます~(*^^*)ポッ
生徒さんに混じったら判らないかも…(笑)
ガンダムだったら同窓会どころでなかっただろうな、完全にオタクがばれたかとヽ(´o`; オイオイ
先生という職業は生徒の成長を見る機会があって羨ましいな~♪
返信する
本人です(笑) (砂希)
2015-11-16 18:30:42
>片割れ月さん

はい、椅子の女はワタクシでございます。
コメントをいただいてから、へのへのもへじを直しました。
字が太かったもので…。
これからも本人を出すときは、すべてへのへのもへじで行きたいと思います。
生徒に混ざったら、一人だけ浮きそうです…。
髪の艶とか、肌の輝きが違いますね。
ガンダムルームだったら、大変な騒ぎになっていたのでは…。
飲む前から酔っぱらってる、なーんて言われたりして。
今の学校では、同窓会を企画しそうな生徒がいません。
これが最初で最後だったりして。
返信する
Unknown (YUMI)
2015-11-16 23:00:12
幹事さんはなんでここを選んだんだろう?
同窓会、話しているうちにあああの子だと思い出しますが、最初はわからないよね。
みんな綺麗になる年頃だし。
だから、ネームプレートは絶対必要です。
返信する
 (砂希)
2015-11-17 19:05:14
>YUMIさん

ホント、何でこの部屋になったんでしょうね?
ちなみに、カラオケがあったのに誰も使いませんでした。
娘に言わせれば、カラオケを使わないと意味がないそうです。
へやの特典として、変身ベルトの貸出があると、あとから知りました。
もっと早くわかっていれば借りたのに…(笑)
名札がなかったら大変でしたよ。
アルバムを見て予習するのを忘れたもので。
返信する
にぎやか (Hikari)
2015-11-18 07:30:32
スッゴい数のライダーにビックリ!
そりゃ写真も撮るわ。
ミニがお似合いの体型が羨ましいわ。
卒業生体「砂希先生変わらないですね」って言われたことでしょう。
いいなぁ。
返信する
コレクション (砂希)
2015-11-18 21:16:25
>Hikariさん

おびただしいライダーに仰天です。
これを見て何も感じない人たちに驚きます。
卒業生からは「痩せましたね」と言われました。
体重は変わっていないのに、なぜ?
彼らのイメージは、丸い私なんでしょうか。
どうにも納得がいきません(笑)
返信する

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