これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

遙かな尾瀬ぇ~

2023年07月23日 22時58分55秒 | エッセイ
 親友の幸枝は、ことあるごとに山に出かけている。
「今度は尾瀬に行こうかな。あ、一緒にどう?」
「いいねぇ、行く行く」
 大学時代のゼミの教授も山が好きで、「今頃の尾瀬はニッコウキスゲがキレイですよ」などと話していたことを思い出す。狭い電車に揺られ、パソコンとにらめっこしてばかりの毎日から脱出するチャンスだ。ちょっと遠いけれど、楽しんでくるぞと気合いを入れた。
 朝は4時に起き、5時半に練馬の家を出て、現地に着いたのが10時半過ぎだった。5時間もかかるとは、やはり「遥かな尾瀬ぇ~」なのである。若い世代は、この「夏の思い出」という曲を知らない人が多いようで残念に思う。



 歩く前に、体育会系の幸枝がウォーミングアップを始めた。私もアキレス腱を伸ばしたり、膝の屈伸をしたりしたが、目の前にトンボがたくさんいたので、ついついそちらに気を取られた。



 近づくとササッと逃げていく。
「虫よけスプレーをかけてきたからかな。ちぇ~っ」
 嫌われてしまったかと悲しくなったが、中にはあえて接近してくるトンボもいた。しかも、ウエアにとまったりして、スプレーをものともしない。大物なのか鈍感なのかわからないが、しばし、トンボとの触れ合いが楽しかった。
「さあ行こう」
 準備のできた幸枝について木道を目指す。尾瀬には平坦なイメージがあったが、30分以上、斜面を下っていくので「帰りは上りか、大変そうだな」と覚悟をした。行きはよいよい、帰りは怖いとはこのことだ。
 やっと木道に出てホッとした。見上げれば、原色のような青い空に、ふわふわした白い雲が浮かび、足元には一面の緑が広がっている。



 これですよ、これ。



 東京のコンクリートジャングルとは真逆の大自然。期待していた通りの景色が広がっていた。



「後ろが至仏山(しぶつさん)で、前に見えるのが燧ヶ岳(ひうちがたけ)だよ」
 幸枝が何やら説明していたが、うわの空で「ああ」とか「うん」などの返事をした。山と緑に囲まれた場所に来られたことがうれしくて、それどころではなかったのだ。





 この木道はあなどれない。振り返って至仏山を撮ろうとしたら、重いリュックにバランスを崩し、落ちてしまった。水場でなかったからよかったものの、場所によってはずぶ濡れになる。気をつけよう。





「ニッコウキスゲはまだ先だよ」
「ふーん」
 1時間ぐらい歩いただろうか。





 木道だけでなく、吊り橋も渡っていった。



 この日の尾瀬は28度だった気がする。都心の最高気温が37度と報道されていたので、汗はかくけれど、かなり涼しい。
「あったあった」
 ようやくニッコウキスゲの咲く場所に到着した。



「なんか、まばらだね」
 幸枝の顔が曇る。来るのが早かったのか、遅かったのかと不満気だったが、初心者の私にはさほどのダメージはない。



 大学時代の教授も、同じことを言ったかもしれないなと口端を上げた。



 時間の都合で、ニッコウキスゲを見たら引き返し、来た道を戻っていく。



 青白緑の3色セットの空間で、マイナスイオンを十二分に浴びリフレッシュできた。山の丸みに「またおいで」と呼びかけられた気がして、微笑みながら別れを告げる。
 尾瀬のトイレは入山者の負担となるため、1回につき100円が必要だ。さすがに長財布はかさばるので、小さな財布を探したが見当たらず、ファスナー付きの袋に入れる破目になった。



 ちょっと恥ずかしい。次回はミニミニ財布を用意しなくては。
 身軽になってから最後の上りに備える。何カ所か、途中に休めるスペースがあるので、体力に自信のない人でも何とかなる。でも、体力自慢の幸枝と一緒では、そういう雰囲気にもならず、黙々と段差を上って行った。
 足は痛くないが、肺のあたりが苦しくて、すぐに息切れする。弱音を吐きたくなっても、我慢して動くしかない。ツラくても歩いて歩いて、上って上ってを繰り返すと、やがて終わりが見えてくる。
「着いた~!」
 ゴールを迎えたときの清々しさが、登山の醍醐味だろうか。
 苦しかったことも忘れ、「次はいつ?」と予定を探る。
 ぜひ、紅葉の尾瀬に行ってみたい。

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8 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
わぁ~良いですね~ (ZUYA)
2023-07-23 23:18:06
小生はまだまだ

遥かなぁ尾瀬ぇ~

ですね。なかなか行く機会に巡りあえません。天気も良く最高の一日になりましたね~
返信する
Unknown (🐇)
2023-07-24 08:52:36
すご~い👌
絶景が、目白押しですね
お天気も良く日頃の行いが効いてますね🙆
行ってみたいです
神戸からはチト遠いなぁ
返信する
遥かな尾瀬ぇ~ (ヤッギー)
2023-07-24 09:49:50
私も世代です。このところ災害級の猛暑でまいっていましたが尾瀬は涼しそうですね。

青空が綺麗でうっとりします。
返信する
唯一? (砂希)
2023-07-24 18:08:19
>ZUYAさん

もしかして、尾瀬がこの夏唯一のお出かけになるかも……。
いやいや、他にも行きたいところがあるので頑張ります!
少々日焼けしましたが、想定内に収まってくれて助かりました。
3連休の中日を選んだせいか、バスの運転手さんが「異常な人出」と話していました。
考えることは皆同じ。
返信する
ご訪問ありがとうございます (砂希)
2023-07-24 18:11:33
>🐇さん

こんにちは。
ブログ拝読しています♪
山荘前にはテントがいくつも張られ、キャンパーたちも集っていました。
🐇さんのところからは遠いかもしれませんが、機会があればぜひ!
私は雨女なので、同行者がよかったのでしょう(笑)
返信する
青い空 (砂希)
2023-07-24 18:14:52
>ヤッギーさん

やはり人間は大地とともに生きるようにできているのでしょう。
青い空と果てしない緑に心が安らぎました。
たまには遠出しきゃいかんと思いましたよ。
海より山が好き♡
返信する
まさに夏! (白玉)
2023-07-28 21:42:12
青空に白い雲、山や野の緑。
目も心も洗われる景色ですね。
自然保護のための有料トイレ、必須だと思います。
富士山こそ、真っ先に導入すべきなのに・・・
山荘に食品等を運ぶ歩荷さんも頭が下がりますが、
し尿を担いで降りる方々は、神に思えます。
返信する
雲モクモク (砂希)
2023-07-28 22:04:13
>白玉さん

私は雨女なので、天気が心配でしたが何のその。
晴れ過ぎたわけでもなく、ちょうどいい塩梅でした。
山の景色には心が躍ります。
有料トイレこそ、設備のありがたみがわかりますよね。
みなさん、律儀に小銭を用意されていました。
財布もゲットできてよかったです。
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