親友の幸枝は、ことあるごとに山に出かけている。
「今度は尾瀬に行こうかな。あ、一緒にどう?」
「いいねぇ、行く行く」
大学時代のゼミの教授も山が好きで、「今頃の尾瀬はニッコウキスゲがキレイですよ」などと話していたことを思い出す。狭い電車に揺られ、パソコンとにらめっこしてばかりの毎日から脱出するチャンスだ。ちょっと遠いけれど、楽しんでくるぞと気合いを入れた。
朝は4時に起き、5時半に練馬の家を出て、現地に着いたのが10時半過ぎだった。5時間もかかるとは、やはり「遥かな尾瀬ぇ~」なのである。若い世代は、この「夏の思い出」という曲を知らない人が多いようで残念に思う。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/18/5a/6f5dc5b8dece5808beebe74b46155b48.jpg)
歩く前に、体育会系の幸枝がウォーミングアップを始めた。私もアキレス腱を伸ばしたり、膝の屈伸をしたりしたが、目の前にトンボがたくさんいたので、ついついそちらに気を取られた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/32/20/6dc96e1d865e1775a59c124e697f9376.jpg)
近づくとササッと逃げていく。
「虫よけスプレーをかけてきたからかな。ちぇ~っ」
嫌われてしまったかと悲しくなったが、中にはあえて接近してくるトンボもいた。しかも、ウエアにとまったりして、スプレーをものともしない。大物なのか鈍感なのかわからないが、しばし、トンボとの触れ合いが楽しかった。
「さあ行こう」
準備のできた幸枝について木道を目指す。尾瀬には平坦なイメージがあったが、30分以上、斜面を下っていくので「帰りは上りか、大変そうだな」と覚悟をした。行きはよいよい、帰りは怖いとはこのことだ。
やっと木道に出てホッとした。見上げれば、原色のような青い空に、ふわふわした白い雲が浮かび、足元には一面の緑が広がっている。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/22/cb/a9a51b1fd477acec716db988a7a4fe55.jpg)
これですよ、これ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5a/6a/e339f2900b314d5bc3a14374b162853b.jpg)
東京のコンクリートジャングルとは真逆の大自然。期待していた通りの景色が広がっていた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/48/aa/5cc145c2b9c6077fad7847cba8d41553.jpg)
「後ろが至仏山(しぶつさん)で、前に見えるのが燧ヶ岳(ひうちがたけ)だよ」
幸枝が何やら説明していたが、うわの空で「ああ」とか「うん」などの返事をした。山と緑に囲まれた場所に来られたことがうれしくて、それどころではなかったのだ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/64/4f/8a7a03977295eb8a3fff749d07d731e9.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6d/3d/fa6bf7c53f972870a4881bc3dcc81a1b.jpg)
この木道はあなどれない。振り返って至仏山を撮ろうとしたら、重いリュックにバランスを崩し、落ちてしまった。水場でなかったからよかったものの、場所によってはずぶ濡れになる。気をつけよう。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7b/54/67ec3a056def529893655f12fc7c775b.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2b/b0/4997c2d5c4206e80977410f000fa8e7d.jpg)
「ニッコウキスゲはまだ先だよ」
「ふーん」
1時間ぐらい歩いただろうか。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/26/c5/22d30999944af1ab87e3ad5c12987d70.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/31/4f/6be0b7a345cea4e1fd4e24ff21926160.jpg)
木道だけでなく、吊り橋も渡っていった。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0d/d6/b688440632744cd3ec37031e67ff00c5.jpg)
この日の尾瀬は28度だった気がする。都心の最高気温が37度と報道されていたので、汗はかくけれど、かなり涼しい。
「あったあった」
ようやくニッコウキスゲの咲く場所に到着した。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5c/f4/0bdabea6f9be19ce6b696089a58af617.jpg)
「なんか、まばらだね」
幸枝の顔が曇る。来るのが早かったのか、遅かったのかと不満気だったが、初心者の私にはさほどのダメージはない。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/00/0f/b01522e4f6d2b81e6d8de57135e38713.jpg)
大学時代の教授も、同じことを言ったかもしれないなと口端を上げた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3c/a7/27efe6a8af4a741448733d13453b5d05.jpg)
時間の都合で、ニッコウキスゲを見たら引き返し、来た道を戻っていく。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/31/52/01d27043c950371f506ac66d82526ee9.jpg)
青白緑の3色セットの空間で、マイナスイオンを十二分に浴びリフレッシュできた。山の丸みに「またおいで」と呼びかけられた気がして、微笑みながら別れを告げる。
尾瀬のトイレは入山者の負担となるため、1回につき100円が必要だ。さすがに長財布はかさばるので、小さな財布を探したが見当たらず、ファスナー付きの袋に入れる破目になった。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/36/21/cec7c5462e6f39ebdac8e7b74af7529b.jpg)
ちょっと恥ずかしい。次回はミニミニ財布を用意しなくては。
身軽になってから最後の上りに備える。何カ所か、途中に休めるスペースがあるので、体力に自信のない人でも何とかなる。でも、体力自慢の幸枝と一緒では、そういう雰囲気にもならず、黙々と段差を上って行った。
足は痛くないが、肺のあたりが苦しくて、すぐに息切れする。弱音を吐きたくなっても、我慢して動くしかない。ツラくても歩いて歩いて、上って上ってを繰り返すと、やがて終わりが見えてくる。
「着いた~!」
ゴールを迎えたときの清々しさが、登山の醍醐味だろうか。
苦しかったことも忘れ、「次はいつ?」と予定を探る。
ぜひ、紅葉の尾瀬に行ってみたい。
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「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
「今度は尾瀬に行こうかな。あ、一緒にどう?」
「いいねぇ、行く行く」
大学時代のゼミの教授も山が好きで、「今頃の尾瀬はニッコウキスゲがキレイですよ」などと話していたことを思い出す。狭い電車に揺られ、パソコンとにらめっこしてばかりの毎日から脱出するチャンスだ。ちょっと遠いけれど、楽しんでくるぞと気合いを入れた。
朝は4時に起き、5時半に練馬の家を出て、現地に着いたのが10時半過ぎだった。5時間もかかるとは、やはり「遥かな尾瀬ぇ~」なのである。若い世代は、この「夏の思い出」という曲を知らない人が多いようで残念に思う。
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歩く前に、体育会系の幸枝がウォーミングアップを始めた。私もアキレス腱を伸ばしたり、膝の屈伸をしたりしたが、目の前にトンボがたくさんいたので、ついついそちらに気を取られた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/32/20/6dc96e1d865e1775a59c124e697f9376.jpg)
近づくとササッと逃げていく。
「虫よけスプレーをかけてきたからかな。ちぇ~っ」
嫌われてしまったかと悲しくなったが、中にはあえて接近してくるトンボもいた。しかも、ウエアにとまったりして、スプレーをものともしない。大物なのか鈍感なのかわからないが、しばし、トンボとの触れ合いが楽しかった。
「さあ行こう」
準備のできた幸枝について木道を目指す。尾瀬には平坦なイメージがあったが、30分以上、斜面を下っていくので「帰りは上りか、大変そうだな」と覚悟をした。行きはよいよい、帰りは怖いとはこのことだ。
やっと木道に出てホッとした。見上げれば、原色のような青い空に、ふわふわした白い雲が浮かび、足元には一面の緑が広がっている。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/22/cb/a9a51b1fd477acec716db988a7a4fe55.jpg)
これですよ、これ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5a/6a/e339f2900b314d5bc3a14374b162853b.jpg)
東京のコンクリートジャングルとは真逆の大自然。期待していた通りの景色が広がっていた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/48/aa/5cc145c2b9c6077fad7847cba8d41553.jpg)
「後ろが至仏山(しぶつさん)で、前に見えるのが燧ヶ岳(ひうちがたけ)だよ」
幸枝が何やら説明していたが、うわの空で「ああ」とか「うん」などの返事をした。山と緑に囲まれた場所に来られたことがうれしくて、それどころではなかったのだ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/64/4f/8a7a03977295eb8a3fff749d07d731e9.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6d/3d/fa6bf7c53f972870a4881bc3dcc81a1b.jpg)
この木道はあなどれない。振り返って至仏山を撮ろうとしたら、重いリュックにバランスを崩し、落ちてしまった。水場でなかったからよかったものの、場所によってはずぶ濡れになる。気をつけよう。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7b/54/67ec3a056def529893655f12fc7c775b.jpg)
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「ニッコウキスゲはまだ先だよ」
「ふーん」
1時間ぐらい歩いただろうか。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/26/c5/22d30999944af1ab87e3ad5c12987d70.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/31/4f/6be0b7a345cea4e1fd4e24ff21926160.jpg)
木道だけでなく、吊り橋も渡っていった。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0d/d6/b688440632744cd3ec37031e67ff00c5.jpg)
この日の尾瀬は28度だった気がする。都心の最高気温が37度と報道されていたので、汗はかくけれど、かなり涼しい。
「あったあった」
ようやくニッコウキスゲの咲く場所に到着した。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5c/f4/0bdabea6f9be19ce6b696089a58af617.jpg)
「なんか、まばらだね」
幸枝の顔が曇る。来るのが早かったのか、遅かったのかと不満気だったが、初心者の私にはさほどのダメージはない。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/00/0f/b01522e4f6d2b81e6d8de57135e38713.jpg)
大学時代の教授も、同じことを言ったかもしれないなと口端を上げた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3c/a7/27efe6a8af4a741448733d13453b5d05.jpg)
時間の都合で、ニッコウキスゲを見たら引き返し、来た道を戻っていく。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/31/52/01d27043c950371f506ac66d82526ee9.jpg)
青白緑の3色セットの空間で、マイナスイオンを十二分に浴びリフレッシュできた。山の丸みに「またおいで」と呼びかけられた気がして、微笑みながら別れを告げる。
尾瀬のトイレは入山者の負担となるため、1回につき100円が必要だ。さすがに長財布はかさばるので、小さな財布を探したが見当たらず、ファスナー付きの袋に入れる破目になった。
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ちょっと恥ずかしい。次回はミニミニ財布を用意しなくては。
身軽になってから最後の上りに備える。何カ所か、途中に休めるスペースがあるので、体力に自信のない人でも何とかなる。でも、体力自慢の幸枝と一緒では、そういう雰囲気にもならず、黙々と段差を上って行った。
足は痛くないが、肺のあたりが苦しくて、すぐに息切れする。弱音を吐きたくなっても、我慢して動くしかない。ツラくても歩いて歩いて、上って上ってを繰り返すと、やがて終わりが見えてくる。
「着いた~!」
ゴールを迎えたときの清々しさが、登山の醍醐味だろうか。
苦しかったことも忘れ、「次はいつ?」と予定を探る。
ぜひ、紅葉の尾瀬に行ってみたい。
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「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
私は雨女なので、天気が心配でしたが何のその。
晴れ過ぎたわけでもなく、ちょうどいい塩梅でした。
山の景色には心が躍ります。
有料トイレこそ、設備のありがたみがわかりますよね。
みなさん、律儀に小銭を用意されていました。
財布もゲットできてよかったです。
目も心も洗われる景色ですね。
自然保護のための有料トイレ、必須だと思います。
富士山こそ、真っ先に導入すべきなのに・・・
山荘に食品等を運ぶ歩荷さんも頭が下がりますが、
し尿を担いで降りる方々は、神に思えます。
やはり人間は大地とともに生きるようにできているのでしょう。
青い空と果てしない緑に心が安らぎました。
たまには遠出しきゃいかんと思いましたよ。
海より山が好き♡
こんにちは。
ブログ拝読しています♪
山荘前にはテントがいくつも張られ、キャンパーたちも集っていました。
🐇さんのところからは遠いかもしれませんが、機会があればぜひ!
私は雨女なので、同行者がよかったのでしょう(笑)
もしかして、尾瀬がこの夏唯一のお出かけになるかも……。
いやいや、他にも行きたいところがあるので頑張ります!
少々日焼けしましたが、想定内に収まってくれて助かりました。
3連休の中日を選んだせいか、バスの運転手さんが「異常な人出」と話していました。
考えることは皆同じ。
青空が綺麗でうっとりします。
絶景が、目白押しですね
お天気も良く日頃の行いが効いてますね🙆
行ってみたいです
神戸からはチト遠いなぁ
遥かなぁ尾瀬ぇ~
ですね。なかなか行く機会に巡りあえません。天気も良く最高の一日になりましたね~