風と水の記憶 Mitsuhiro's Photo Page/ 田谷光宏

日常のこと。旅先のこと。生き物達のこと。つれづれを写真と一緒に。

バンドウイルカ/懐古

2014-11-21 20:56:50 | 日記
突然ですが、これはイルカの写真を整理していて出てきた十数年前、ネガフィルムで撮ったバンドウイルカの写真です。アフリカの画を一休みして、ちょっと不思議でちょっと楽しい、このイルカとの出会いをお話したいと思います。

もう十数年も前、まだデジタルカメラが出るか出ないかという頃の話です。
自分はメキシコのカリフォルニア湾でクジラを追いかける船に乗っていました。あいにく大風に遭遇して入江に逃げ込んだ船が外海に出られずにいた時の話です。

明け方、自分は入江の入口付近で朝日の中、ジャンプを繰り返すこのイルカを見つけました。「イルカが遊んでる。」と眺めていると、このイルカが少しづつこちらに近づいてきました。やがて彼は数メートルまで近づくとボートの周りを泳ぎ始めました。たまにジャンプをしては船の中を覗く仕草を見せると、自分の前で顔を水面から出し、こちらを見ました。それからまた少し泳いではこちらを見ます。ボートの周りを行ったり来たりしながらこちらの様子を伺っています。
ちょっといたずら心を起こした自分が彼から見えない所に隠れると、慌てたようにボートの周りを廻って自分を探し回りました。自分が顔を出すとジャンプをして、今度は彼が姿を隠しました。自分が船から体を乗り出して探していると、反対の側に「ここだよ。」と言わんばかりに大きな噴気の音をたてて現れました。
夢のような時間はあっというまに過ぎ、他の人間が動き出す音がすると最後に自分の目前に顔を出して、船から遠ざかりました。

不思議な邂逅でした。今でもその時のことは鮮明に覚えていますが夢だったような気もします。

昼過ぎ。やっと風も止み、船は旅を続けることになりました。午前中、入江の中では数頭のバンドウイルカがイワシを追いかけていました。その中にこのイルカもいましたが船に近づいてくることはありませんでした。
船がイカリを上げ入江の出口に向かう途中、彼が船の船首に付きました。その時の写真がこれです。
彼はこちらを見て「バイバイ。」と言っているようです。ファインダーでこのイルカを捉えた自分は彼の体が光っているのに気がつきました。最後までやってくれました。

冷静にこのイルカの行動を分析することは可能かと思います。
でも、自分の感覚と感情の中の彼をこのままずっと記憶のなかに留めておきたいと思います。

間違いなく、同じ時を共有した友達です。
コメント (1)
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