この世界の憂鬱と気紛れ

タイトルに深い意味はありません。スガシカオの歌に似たようなフレーズがあったかな。日々の雑事と趣味と偏見のブログです。

映画『ガタカ』のキャラクターについての考察、まとめ。

2021-01-20 21:42:58 | 旧作映画
 SF映画は数多くあれど、『ガタカ』ほど評価が高く、同時に誤読されている作品を自分は寡聞にして知りません。
 なぜ『ガタカ』は誤読されるのか?
 理由は明白です。
 それは登場するキャラクターがそれぞれ嘘をついているから、です。
 ヴィンセントは自分の心臓に障害があることを自覚しつつも「自分なら立派に宇宙飛行士の職務を果たせた」と嘯き、ジェロームは二度と地球に戻ってくることはないであろうヴィンセントを「お前なら出来る」と励まし、アントンは10年ぶりに会った兄が宇宙飛行士になるという夢にあと一歩に迫っていることに感嘆しながらも「出来るわけがない」と罵倒する。
 その言葉を額面通りに受け取れば、当然誤読することとなるでしょう。
 
 どうすれば誤読せずに済むのか?
 ヒントを一つ一つ丁寧に拾っていく、都合の良い解釈をしない、きちんと筋道を立てて物事を考えるといったこともありますが、まずは常識に従うことが大切です。
 常識に縛られてしまっては物語を楽しむことが出来ませんが、常識を蔑ろにしてしまってはそもそも物語を追うことも叶いません。
 作品によっては死者が蘇ったり、人が自由に空を飛びまわったりとその作品独自のルールがありますが、基本的に物語は常識の範囲内で進みます。
 『ガタカ』の世界において心臓の障害は願えば治癒するものなのか?
 答えは「NO」ですよね。
 常識的に考えてあり得ません。
 ヴィンセントは生まれつき心臓に重い障害があり、宇宙飛行士としての適性に欠けているのです。
 それが『ガタカ』という物語の大前提であり、その前提を無視しなければ『ガタカ』という物語を大きく読み誤る恐れはないかと思われます。

 『ガタカ』という物語を誤読していた方は、有り体に言えば『ガタカ』をスポコンのようなお話だと捉えていた方は、それらの前提を受け入れて、もう一度『ガタカ』を見直してください。
 これまでとは違った『ガタカ』が見えてくるはずです。
コメント (14)
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