ジョニー・デップ主演、ウォーリー・フォスター監督、
『トランセンデンス』、6/29、ユナイテッドシネマキャナルシティ13にて鑑賞。2014年27本目。
以下、映画とはあまり関係ないSF論を書きます。
いろいろ偉そうなことを書いてますが、筆者はSFの専門家でもなければ研究者でもないことを先に断っておきます。
一言で言えばただの知ったかぶりです。
SF冬の時代と言われています。
何しろSF関連の本が売れない!(本が売れないのは出版業界全体ですが)
明らかにSF映画であるのに、そのことを宣伝で言えない!(っていうSF映画がありましたよね?)
もしかしたら今の若い人たちはSFが何の略かすら知らない人もいるかもしれませんね。
SFが衰退した原因はいくつもあると思いますが、その一つに科学の進歩が挙げられると自分は考えます。
SFの衰退した原因が科学の進歩だって?何言ってるの、この人?と思われるかもしれませんが、実際そうなんですよ。
SFと現実の科学とは必ずしも相性はよくない。
例えば、『機動戦士ガンダム』。
このSFアニメの中で、主人公のアムロ・レイは人型ロボット「ガンダム」に搭乗して戦場に赴きます。
この基本設定の時点で実は既に科学的ではないんですよ。
なぜガンダムは人型でないといけないのか?
なぜ戦闘のための兵器であるにもかかわらず、人が乗り込まないといけないのか?
人が操縦する兵器が人型でなければならないという理屈はどこにもありませんし(実際『機動戦士ガンダム』のおいては物語が進むにつれて兵器は人型でないものが登場するようになる)、科学が進歩すれば戦場で展開する兵器はすべて無人になるはずです。
ガンダムがなぜ有人の人型ロボットなのか?
理由は単純明快、その方が画(え)としてイカすから。カッコいいから。視聴者が玩具を買うから。
さらに有人であれば敵パイロットとの交流も描けますからね。遠隔操作の無人兵器だとそういうわけにはいきません。
ガンダムに限らず、SFアニメにおいて、主人公が人型ロボットに乗り込むのは、一言で言えばその方がロマンがあるからです。科学とは無縁の理由からです。
一方科学というものはそこにロマンを求める科学者もいるでしょうが、基本的に商業利用が目的です。どれほど夢やロマンがあったとしても最終的に利益を見込めなければ、その分野の科学が進歩するということはありません。
だからSFと現実の科学とは相性が悪いのです。
SFも現実の科学に囚われず、思いっ切り大風呂敷を広げればいいと思うんですけどね。
いくら現実の科学に空間跳躍や時間旅行はあり得ないと否定されても、架空の理論や物質をでっち上げて、それを可能にすればいいと思うのですが、実際にはなかなか難しいようです。
『スター・ウォーズ』や『スター・トレック』といった昔からの固定のファンがいるシリーズものを除いて、最近はSF超大作という呼び名が相応しい映画を観ないような気がします。
さて、『トランセンデンス』です。
予告や宣伝を見ると、ジョニー・デップ主演のSF超大作!!のような印象を受けますが、実際観ての感想はぶっちゃけあまり出来のよくないB級SFでした。
ジョニー・デップ扮するウィル・キャスターはある日テロリストから銃撃を受けます。軽傷かと思われたのですが、銃弾に特殊な加工が施されており、一ヶ月後ウィルは放射能中毒により命を落とすのです。
って、この段階で脚本がおかしくないですか?
何でテロリストはそんなまどろっこしいやり方でウィルを殺そうとしたの?
どうせ加工するなら即効性の猛毒か何かを塗り込めばいいんじゃないの?
一ヶ月も猶予を与えるからウィルの頭脳は電脳化されちゃったじゃん。
もしかしたら、テロリストたちは意図的に電脳化を狙ったのか?などと深読みしながら観てたんですけど、別段そういうわけではありませんでした。
SFにおいてはヴィジュアルも重要なんですよね。
これまで見たことのない画を見せて欲しい。
しかし、『トランセンデンス』にはそれもなかったですね。
電脳化された男の物語なのですから、せめて電脳空間で男がどのような視点で物を見ているか、それぐらいのヴィジュアルは見せて欲しかったです。
たぶん、作り手はそれが想像できなかったのでしょう。
メッセージ性も特に感じ取れませんでした。
SFにおいてはそれもまた重要なファクターだと思うんですけどね。
まぁこれに関しては自分の理解力の問題なのかもしれませんが。
そんな感じでSFであることは間違いないが(ロマンはありました)、一本の映画として観た場合、何だかなぁと思わずにはいられませんでした。
ジョニー・デップのファンでない限り観る必要はないと思います。
お気に入り度は★☆、お薦め度は★☆(★は五つで満点、☆は★の半分)です。