一箱古本市で物々交換で入手した
『彼方のアストラ』を読み終えました。
まず思ったのが「懐かしいな!」ってことです。
自分が子供の頃に読んだジュブナイルでも少年少女が宇宙船に乗って未知の宇宙を旅するお話があったような、、、気がします(うろ覚えですが)。
それに少年少女の中に妙齢の女性が一人というのは『銀河漂流バイファム』だし、自分たちの住んでいる星がXXだと思っていたら△△だったというのは『戦闘メカザブングル」ですよね。
その他、様々な名作SFのいいとこ取りって感じで、「へぇ」と感心しました。
キャラクターは全員魅力的で、伏線は見事に回収されて、真相は予想外で、読後感も非常に良い。
評判が良いのも頷ける作品でした。
ただ、個人的には傑作だとまでは思わなかったかな。
傑作だと思わなかった理由、それはクローンに対する扱いです。
我々の住んでいる世界では人間のクローンを作ることは全世界的に禁止されているわけではありません。
おそらく、人間のクローンの世界的な規模での法規制というのは無理です。
いつの時代も独裁者というのは存在するものですし、独裁者は後継者として自分のクローンを作りたがるものです。
おそらく北朝鮮ではクローン技術の研究が行われているんじゃないかなぁ。
またラエリアン・ムーブメントがクローン人間の開発を中止した、という話は未だに聞きません。
スイスに本部を置くラエリアン・ムーブメントがクローン人間の開発を推進しているということは、少なくともスイスではそれは違法ではないのでしょう。
一方、『彼方のアストラ』の世界ではクローン人間を作ることは重罪です(ウルガ―が「投獄レベルの重罪だ」と言っています)。
しかし、なぜクローン人間を作ることが重罪であるのか、その理由が説明されることはありません。
倫理的に問題があるからなのか?
倫理的に問題があると言えば、ザックの父親であるジェドの、「記憶を他人に移植する」という研究も充分倫理的に問題があるように思えます。
「記憶を他人に移植する」研究は法の規制を受けないのに、クローン人間を作ることは重罪である、と言われても、あまり納得出来るものではありません。
私たちの世界でクローン人間を作ることが規制されているのは、一つには私たちが健康なクローン体を生み出せないからです。
クローンといって有名なのは、何と言ってもクローン羊のドリーだと思いますが、羊の他にもブタ、ネコ、イヌ、サルといった具合に様々な動物のクローンを生み出すことに成功しています。
ただ、例外なくどのクローンも短命だったんですよね。
おそらく技術的には人間のクローンを生み出すことも可能なのですが、ただ、健康なクローン人間を生み出すまでには至ってないのです。
最初から短命であることがわかっていて、クローン人間を作るのは倫理的に問題がある、というわけですね(それだけが規制の理由ではありませんが)。
『彼方のアストラ』のクローン人間たちに目を向けると、一人として何かしら健康に問題があるようには見えません。
どのような法律も成立するに至った経緯があり、理由があり、背景があるものです。
しかし『彼方のアストラ』の世界において、なぜクローン人間を作ることが法的に禁止されているのか、作中説明されることもなければ、想像することも出来ません。
作劇上そうしなければならなかったというのはわかります。
そうでなければ最終的に黒幕を裁くことは出来ないですからね。
ただ、なぜクローン人間を作るのが重罪であるのか、出来ればその理由付けも欲しかったのです。
細かいことにこだわりすぎなのかもしれませんね。
通常そこまでこだわることはないのですが、まぁ『彼方のアストラ』はそれだけ出来の良い作品と言えるのかもしれません。