創作小説屋

創作小説置き場。BL・R18あるのでご注意を。

BL小説・風のゆくえには~将来4-2(浩介視点)

2016年04月05日 07時21分00秒 | BL小説・風のゆくえには~ 将来

 慶と付き合うことになって、初めてのバレンタイン。

 せっかく、慶の妹、南ちゃんから、行為をスムーズに行うためのジェルまでもらったのだけれども………

(やっぱり無理だったよ、南ちゃん……)

 付き合いはじめてからまだ1ヶ月と3週間。軽い触れるだけのキスしかしたことがないおれ達。
 その上、ジェルと一緒にもらった小説を読んで、初めて男同士でする方法を知ったおれには、そこまで進む心の準備もまだできていなかった。


 実は、慶と付き合うことになってから、男同士ってどうするんだろう?と考えてはいた。
 おれの貧困な発想力では、扱きあったりするのかな?というのが精一杯で、それを想像して自慰行為をしたりしていたんだけど……

(まさか……あんなところを代用するとは……)

 でも考えてみたら、すごい快腸な時に、そのくらいの大きさのものが出ることだってあるんだから、入ることも可能といえば可能……?

(でも、痛そう……)

 でも、男女間でするように、物理的に『繋がる』『一つになる』方法は、確かにこれ以外には考えられない………

 
 その本とジェルを渡してきた時、南ちゃんは「お兄ちゃんには内緒ね」と言った後に、

「できたら報告してね。お兄ちゃんも同じの読んだことあるからきっと大丈夫」

 とも言っていた。
 その時は何のことだかわからなくて、頭の中が?だらけになったけれども、ようやく意味がわかった。そして、あらためてそのセリフを思い出して、

(慶は………知ってるんだ)

 そう気がついたら、ますます下半身の血のめぐりが………。
 でも、慶からキス以上のことに進もうとする気配はまったく感じられなかった。


 バレンタインには、おれは5粒で3千円もするチョコレートをプレゼントした。小遣いで買いたくなかったので、年始にコンサートホールの会場係のアルバイトをしたのだ。

 慶はすごく喜んでくれて、

「全種類半分こしようぜ!」

といって、一粒をおれの口元に寄せて「半分だけな~」と言って噛ませ、残りのチョコをパクッと自分の口にいれた。

(間接キスだ)

 間接じゃないキスも散々してるくせに、ドキドキしてきてしまう。

「うめー! 次どれがいい?」
「これ!」

 慶が掴む前に一粒取り、さっき慶がしてくれたみたいに、慶の口元に寄せると、慶がちょっと笑いながら半分のところでチョコを噛んだ。

(うわ……可愛いっ)

 キスをせがむみたいな角度。上目使いの目。我慢できなくて、チュッと唇を合わせると、慶はくすぐったいような顔をして笑ってくれた。

(ああ………幸せ)

 これ以上なんて贅沢だ。せっかくプレゼントしてくれた南ちゃんには悪いけど、おれはこれ以上のことは望まない………


 なんて思っていたはずの翌々日、日曜日。

「聞いたか? 東野のやつ、こないだのバレンタインで彼女と……」

 クラスの男子14人で来ているカラオケ屋で、みんなが話しているのを聞いてしまった。

「バレンタインで、あたしをプレゼント! みたいな?」
「そうそう。今日、うち誰もいないから……、って誘われたらしいぞ」

 東野とその彼女が付き合いはじめたのは、おれ達とまったく一緒。昨年の12月23日。

(それなのに、もう!?)

 一昨日は、これ以上は望まない、なんて思っていたはずなのに………

「………いいな」
 思わず声に出てしまって、自分でも気がつく。

(うらやましい………)

 東野は好きな人と一つになれたんだ。それはどんなに甘美なことだろう………。


 その日の夜は2回抜いてもまだウズウズしてしまって自分でも呆れた。

(慶はこんなこと思ってないだろうな……)

 大きくため息をついて、眠れない夜を過ごしたわけだけれども………



 翌、月曜日。
 登校してきた慶が、ツカツカとすごい勢いでおれの席まで歩いてきた。

(な、なに!?)

 こちらの戸惑いをものともせず、慶は挨拶もせずに、バンッとおれの机を叩くと、顔を寄せて言い切った。

「今度の日曜、おれんち誰もいないから遊びに来い」
「!!」

 そ、それは………

 途端に自分が赤面したのが分かった。慶も仏頂面を作りながらも赤くなっている。 

「う、うん………」

 昨日の今日のこのセリフ。そういう意味だ。慶も、おれと同じこと思っててくれたんだ……。

 そういうわけで、日曜日が来るまでの一週間は、これでもかというくらいギクシャクしてしまった。何度か慶と顔を見合わせ苦笑してしまったくらいだ。


 そして迎えた運命の日曜日……





----------------------------------------

く、悔しい……。書き終わらなかった……。ので、ここまでを一回アップします。

お読みくださりありがとうございました!
このお話の慶視点が、R18読切『初体験にはまだ早い』の前半になっております。
本当は切る予定なんて全然なかったのですが、書き終わらなかったのでとりあえずここまで……
続きはできたら明日、無理だったら明後日更新しますー。次回もどうぞよろしくお願いいたします!

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BL小説・風のゆくえには~将来4-1(浩介視点)

2016年04月03日 07時21分00秒 | BL小説・風のゆくえには~ 将来


 慶と付き合っていることが両親にバレてから1ヶ月たった。

 初めの頃は毎日毎日、母に呪文のように、

「男の子同士でそんな関係はおかしい。早くやめなさい。学校側に知られたらどうするの」

 等々言われ続けて、頭がおかしくなりそうだったけれども、ある時ふと、

「でも、お父さんは放っておけっておっしゃったんですよね?」

 そう確認すると、母は気まずい顔になり、それ以来、時折嫌みを言う程度になったので助かった。
 あれが続いていたら、そのうち力づくで母を黙らせようとしてしまっただろう。最近、衝動性が強くなっているようで自分で自分がこわい時がある……



**


 第一回進路希望調査票の提出があった。
 もうすぐ受験生になる、と思うと、足元が崩れ落ちていくような感覚になる。

 大学は父と同じところに、というのが母の希望だ。おそらく父も、同じ大学ならば文句は言わないだろう。あれで実は愛校心のある人だ。母校の出るスポーツの試合は必ず見ている。
 私立大学のトップクラスの学校だけれども、家庭教師の先生に言わせると「今のままいけば確実に受かる」そうで、「東大も目指せる能力はあるよ」とも言ってくれている。
 でも、それに甘んじている場合ではない。確実に受からなければならない。これで受からなかったら……


「桜井君っ」
「え」

 いきなり呼ばれ、我に返る。見ると、顔は見たことはあるけれども名前は知らない他校の女の子……

(またか……)
 辟易してしまう。けれども、普通の顔を装って「なあに?」と聞くと、女の子は真っ赤になっていった。

「今日も渋谷君、応援にくる?」
「………」

 今日はバスケ部の交流試合のため、近隣の3校がうちの高校に来ている。
 バレンタインが近いせいか、昨年同様、他校の女子生徒が慶の居場所を聞いてくるのだ。今日はこれで三人目……

「もう少ししたら来ると思うけど……」
「あ、ありがとう」
 女の子は真っ赤のまま、女子の群れに戻っていってしまった。

「かわいそうに……」

 思わず一人ごちてしまう。
 慶は昨年も、こんな感じで他校の女の子からチョコを渡されそうになり………

(あああああ!!!)

 記憶を辿っていたら、とんでもないことに気が付いて、悲鳴をあげそうになってしまった。

(そうだ……そうだよ……)

 昨年、慶はどの子からのチョコも一切受け取らなかったのだ。

「お返しするのめんどくせー」
 そう言っていたけれど、女の子達は「お返しはいりませんっ」と言って渡してきてたのだ。だから、

「もらってあげればいいのに。女の子達かわいそう」
 なんて余計なことを慶に言って、「いいんだよ。うるせーな」って蹴られたんだ。

(そりゃ、蹴るよな……)
 思い当たって、頭を抱えたくなってきた。

 そりゃ、蹴りたくもなっただろう。

 だって、その時すでに、慶はおれのことが好きだったんだから…… 


「………」
 そう思ったら、顔がニヤケてきてしまった。

 あれだけモテている人が、おれのことを1年以上も想い続けてきてくれていた。
 そして今、おれ達は恋人同士で……

「………あ」
 入り口近く、キラキラオーラの慶がいる。慶は毎試合見に来てくれるのだ。

(あ、さっきの……)
 先ほどの女の子が慶のところに行くのが目に入った。

「でも……残念でした」
 思わず声が出てしまう。

「ほらね」
 慶が丁重にお断りしている様子に、喜びが抑えられない。
 何人来たって同じ。慶は絶対に受け取らない。だって……

「あ」
 こちらをみた慶と目があう。嬉しそうに手を振ってくれる慶。

 慶はどんな子からのチョコも受け取らない。
 だって、慶が好きなのはおれだから。


**


 帰り道、2人で並んで歩きながら、昨年のことを確認してみた。

「あれって、去年もおれのために受け取らないでくれてたの?」
「まあな」

 素直に肯いてくれた慶。
 わかっていたけれど、嬉しい。

「ごめんね。それなのにおれ、女の子がかわいそう、とか言って……」
「そうそう。ありゃ凹んだ」
「ごめん……」

 知らなかったこととはいえ、そういうことたくさんあったんだろうな。
 それなのに、ずっと好きでいてくれた慶……

「……慶って、本当におれのこと好きなんだね」
「なんだそりゃ」

 慶がぷっと吹き出した。
 その唇にキスしたいけど、我慢我慢……

「バレンタイン、おれのチョコは受け取ってね?」
「当たり前だろ」

 肯いてくれた慶。ああ、愛おしくてたまらない……

 バレンタインには、大きなチョコをプレゼントしよう。
 大好きの気持ちをこめてチョコを渡そう。
 あと他に何を渡せばいいのかな……


**

 その日の帰り、慶の家に寄ったところ、慶の妹、南ちゃんがコッソリとプレゼントをくれた。

「バレンタインに間に合うように、そろそろと思いまして」

と、意味の分からないことを言った南ちゃん。「お兄ちゃんには内緒ね!」というので、帰ってから開けてみたところ、

「??? なにこれ?」

 単行本が一冊と、箱に入った容器が一つ……
 頭の中が?でいっぱいのまま、ざっとその小説に目を通し……

「………え」

 固まってしまった。
 そこには、男性同士が性交渉をする様が具体的に書かれており、想像もしていなかった方法で一つになる二人の姿はそうとうに衝撃的で……

「……あ。ま、まさか……」
 思い当たって、一緒にもらった箱から容器を取りだし、本格的に固まってしまう。
 そこには、作中に出てきた、行為をスムーズに行うためのジェルが入っていて……
 
「バレンタインに間に合うようにって……」

 南ちゃん……

 それはハードル高すぎだよ……





----------------------------------------


お読みくださりありがとうございました!

こうして、R18読切『初体験にはまだ早い』に繋がるわけございます。
次回はこの読み切りの、浩介視点。R18にはならない感じで!
次回もどうぞよろしくお願いいたします!

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BL小説・風のゆくえには~将来3(慶視点)

2016年04月01日 07時21分00秒 | BL小説・風のゆくえには~ 将来

 高校一年生の秋、おれは浩介のことを恋愛対象として見ている自分の気持ちに気がついた。
 でも、おれ達は同性。こんな気持ちは受け入れられるはずがない………と、気持ちをひた隠しにして一年以上が過ぎた、高校二年生のクリスマスイブ前日。奇跡が起こる。

『慶のことが、好き』

 浩介が、そう告白してくれた。
 それからおれ達は『親友兼恋人』になった。

**

 冬休み明け初日。
 いつもは先に教室に着いている浩介が、昇降口の入り口に突っ立っていた。今日は寒い。浩介の鼻の頭が赤くなっている。

「どうした? 寒いのにこんなとこで……」
 
 声をかけると、浩介は嬉しそうな、それでいて泣きそうな顔になってボソリと言った。

「待ってた。慶のこと」
「待ってた? 教室で待てばいいのに」
「だって……」

 冷たい手がおれの頬に触れる。

「教室行ったらみんないるから、慶に触れない」
「………。今まで散々人前でも触ってたじゃねえかよ?」
「そうなんだけど……」
「………」

 指が唇を辿ってきたので、ゾクゾクしてしまう。
 クリスマスイブ前日に告白されてつき合うことになって以来、何度もキスをした。唇が触れる度、体中に電流が走って、幸せいっぱいになってどうしようもなくなる。

 でも……。キスしているところを浩介の母親に見られてしまい、その翌日、母親がおれの両親にそのことを告げにきて、大騒ぎになってしまった。
 浩介の父親が「一過性のものだから放っておけ」と言ったそうで、とりあえず、今すぐにどうこうということはない。でも、元々浩介は両親と上手くいっていなかったから、余計にギクシャクしていることは容易に想像できる。今の「触れない」発言も、また母親から何か言われたとか、そこらへんから派生しているのだろう。

「気にしないで、今まで通りでいようぜ」

 ポンポンと腕を叩いてやると、浩介がふにゃりと笑った。
 うん。おれの大好きな笑顔だ。おれはこの笑顔を守るためだったら何でもする。

「あーさみー。早く入ろうぜー」
「くっついてあったまろー。慶、体温高いからあったかーい」
「おれは人間湯たんぽか」

 後ろから抱きつくみたいにくっついてきた浩介の腕をぎゅうっと掴む。おれはいつでもお前のことを温めてやりたい。
 冬はいいな。こうしてくっついていても「寒いから」って誤魔化せる。


「教科選択の紙、提出今日だよな?」
「うん。あ、おれ、結局、やっぱり世界史にしたよ」
「政経じゃなくて?」
「だって世界史のほうが面白いんだもん」
「面白いって言えるあたりが余裕だよなあ」

 そんなたわいもない話をしながら歩いていたのだけれども……

「……え?」
 教室に入るなり聞こえてきた声に、心臓が止まりそうになってしまった。

「まじで?!それいつの話?!」
「去年の、クリスマスイブの前日だって! なんかすごいロマンティックな場所で告白したらしいよ!」
「それでつき合い始めたってこと?!」
「そうだってー初詣とかも一緒にいったって」
「うわー羨ましー。今日きたら問い詰めないと!」

 思わず、浩介と顔を合わせる。浩介も固まってしまっている。

 ば……ばれた? いや……まさか……

「あ! 渋谷! 桜井!」
「え」

 話していた輪の中の一人の溝部が、わーっと言いながらこちらに突進してきた。

 まさか……あの時、誰かに見られてたとか!?

「溝部、いやその……っ」
「溝部っ」

 二人して、溝部にワタワタと手を振る。でも溝部はそのままの勢いで走ってくると、

「くっそー! クリスマスの奇跡、おれにはなかったぞー!」
「え?!」

 ドーンッといいながらおれ達二人に抱きついてきた。

 クリスマスの奇跡って、そ、それは……っ

 溝部はアワアワしているおれと浩介に気が付くこともなく、続けて叫んだ。

「東野のやつ、例のお嬢様に告白してオッケーもらったんだってー!」
「それは……、え」
「え?」

 東野? お嬢様?

「イルミネーション綺麗なところで告白したらしいぞ。あー羨ましい!」
「………あ、そう」

 どっと体の力が抜ける。
 なんだ、おれ達のことじゃないんだ……。

 浩介をみると、浩介も苦笑しながらこちらを見ていた。

 やっぱり、当たり前だけど、クラスメートに話すのは無理だな……

 何も言わず、2人で肩をすくめあうと、溝部が引き続きわあわあと、

「なんだよ二人して目と目で通じ合っちゃって!」
「あーもう、溝部うるさい」

 軽く蹴ってやると、溝部はますます大きな声で言った。

「うるさいじゃねー! 今度東野に彼女の友達紹介してもらうからお前らも来い!」
「行かねーよっ」
「なんで?!」

 詰め寄られたけれども、グーで押し返す。

「だから、そういうの興味ねえんだよ。めんどくせえ」
「はー、そうですか。渋谷君は余裕でいいですね」

 溝部は棒読みで言うと、今度は浩介に向き直った。

「桜井、お前は来るよな?」
「え、おれ?」

 浩介、きょとんとした顔をしてから……にっこりといった。

「遠慮しとくー。おれには慶がいるから」
「!」

 こ、こいつは何を……っ

 赤くなりそうなところを、なんとか耐えて仏頂面を作る。

「何いってんだ、お前」
「ホントだよ。何言ってんだよ、桜井」

 溝部と二人で言ったけれど、浩介は引き続きニコニコと笑ったまま自分の席に行ってしまった。

「桜井って変だよな」
「……そうだな」

 溝部のつぶやきに、こっくりと肯く。

 そういえば……告白してくれたときに言ってたな。

『付き合ってること『だけ』は内緒にするよ』

 と。 

 それって……

 うーん……と思いながら、自分の席につき、浩介の方をみると、浩介もちょうどこちらを見ていて、ニコニコで手を振っていた。そして、

『だ、い、す、き』

 口の形が言っている。

「………アホか」

 あいつアホだホントに。

『バーカ』

 おれも口の形だけで返すと、浩介がこの上もなく嬉しそうに笑った。

 同じクラスでいられるのもあと三ケ月。それまでたくさん一緒のクラスの思い出を作りたい。




----------------------------------------


お読みくださりありがとうございました!
この話の約2週間後が、以前書きました読切『お礼はキスで』になります。
まだ触れるだけのキスしかしたことのない、初々しい二人でございます。

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BL小説・風のゆくえには~将来2-2(浩介視点)

2016年03月30日 07時21分00秒 | BL小説・風のゆくえには~ 将来


 おれが自転車をとばして慶のうちにたどり着くと、慶の妹の南ちゃんが玄関前で待っていてくれた。

「ちょうど今、うちのお父さんにも絵の教室から戻ってきてもらったところなんだー」

 慶のお父さんは趣味で絵をならっていて、日曜の午前中は教室に行っているのだ。わざわざ戻ってきてもらったなんて申し訳ない……

「今また、浩介さんのお母さんがお父さんに説明してるとこ。昨日、キスしてるとこ見られちゃったんだってね~。いいなあ私も見たかった」

 ニヤニヤしている南ちゃん。でもそんなことには構っていられない。

「慶はどうしてる?」

 一番聞きたいことを聞くと、南ちゃんは両手をヒラヒラと振った。 

「お兄ちゃんは現在、黙秘権を行使中です」

 黙秘権? なんだそれは……
 わからないまま、中に入れてもらい………

(………慶)
 開いていたリビングのドアから見えた光景に立ちすくんでしまう。

 まるで石像のように、その美しい顔をピクリともさせていない慶……。こんな時にもかかわらず、その完璧な美しさに見惚れてしまう。
 そして、その斜め前には………延々と喋り続けているおれの母……。その前に、軽くうなずきながら聞いてくれている慶のお父さん。眉間に皺がよっている慶のお母さん。

(異物が混入している……)

 いつもの居心地のいい、慶のうちのリビングじゃない。異物が一つあるだけでこんなに変わるなんて……

「あら、浩介君」
「椿さん」

 コーヒーがのったお盆を手にした慶のお姉さんの椿さんが、おれを見てにっこりと笑ってくれた。慶とよく似た笑顔。そういえば椿さんは、お正月は旦那さんの実家に行っていたので、昨日の夜から今日まではこちらに帰ってくると昨日いっていた。

「浩介!」
 おれの姿を認めた慶が驚きの声をあげた。途端に石像に血が通い、力強い生命力が溢れだす。

「なんでお前……って、南!お前か!」
「本人いた方が話しやすいかな、と思って」

 えへと笑った南ちゃんに、慶は苦虫潰したような顔をしてから、おれに自分の隣に座るように合図を送ってきた。

「浩介……なんであなた」
「………」

 驚いた顔をした母に一瞥をくれてから、慶の隣に座る。

(………慶)

 泣きそうになってしまう。
 慶がさりげなく座り直して、膝をおれにくっつけてくれたのだ。

『何があっても嫌いになったりしない』

 信じられるぬくもり……。慶は、おれを嫌いになったりしない……

『お前はおれが守る』

 慶の思いに包まれていることを実感できる……

 慶にうなずきかけてから、慶のご両親に視線を向ける。

「おはようございます。朝早くから、母がご迷惑をおかけして申し訳ありません」

 頭を下げると、ご両親が何か言う前に母がカッとなったようにおれに向かって叫んだ。
 
「何言ってるの! お母さんはあなたのためにわざわざお話をしにきたっていうのに!」
「………」

 我が母ながら、本当に嫌気がさす。あなたのため、あなたのため……そういってこの人はさんざんおれを苦しめてきた。

「おれのためってなんですか。おれは何も」
「何もって、あんなことしておいて!」
「だから……っ」
「まあまあ」

 慶のお父さんの飄々とした声に遮られた。見返すと、さっきの南ちゃんみたいに両手を振っている。顔もだけれど、飄々としたところもお父さんと南ちゃんはよく似ている。

「お話はよく分かりました。ま、桜井さんのご心配もわかりますが、そんな大した問題じゃないんじゃないですか?」
「は?!」

 母の顔色がザッと赤から青に変わった。

「何をおっしゃってるんですか?! 男の子同士であんな……」
「興味本位でしてみた、ってことでしょう? 子供の頃にはありがちですよ。むしろ、女の子相手でなくて良かったとも言えますね。女の子相手にそれ以上のことにまで興味を持ってしまって、万が一のことがあったりしたほうが問題でしょう」
「…………」

 母が、ハッとしたように黙った。「女の子相手で万が一のことがあったら」という言葉はかなり効果的だったようだ。

「ご主人はこのことご存じなんですか?」
「え、ええ……」

 慶のお母さんの問いかけに、母が軽く肯く。

「昨日話したので……」
「……」

 話してたんだ! ちょっと驚いてしまう。

「ご主人はなんて?」
「…………。一過性のものだから放っておけ、と……」

 放っておけ、か。いいそうなことだ。あの人はおれの成績にしか興味はない。有り難いといえば有り難い。

「でも、私は心配で。これでもし、息子があらぬ道にそれてしまったらと思ったら……」
「あらぬ道?」
「だってそうでしょう? これで女の子じゃなくて、お、男の子に興味を持つようになったら困ります」

 困る? 何が困るんだ?

「お宅は、他にお嬢さんが二人もいらして、しかももうすぐお孫さんまで生まれるからいいですよ。でもうちはこの子しかいないんです。ここでこの子が変な方向に進んで、孫の顔も見れなくなったら……」
「……なんだそりゃ」

 慶が小さくつぶやいた。ほんと、なんだそりゃ、だ。おれは母に孫の顔をみせるための道具か。

 慶のお父さんは「なるほどなるほど」と肯いてから、

「でもまあ、ご主人もおっしゃる通り、放っておいていいんじゃないですか? なあ。二人とも」
「え」

 いきなりニコニコと話を振られ、ドキマギしてしまう。

「ようはあれだろう? 練習、だろ?」
「え……」
「そうなの? 浩介」

 ここで「はい」と肯いてしまえば、一件落着だ。母も納得するだろう。
 おれ達は仲の良い友人でしかない。あれはただの練習。そう言えばいい。そう言えば……

 だけど……だけど。

(………慶)
 慶の方を見ると、慶の透明な瞳と目が合った。……たぶん、おれと同じこと考えてる……

「浩介」
 慶の手がそっとおれの手に重なる。

「慶」
 絡めるように繋ぎ直すと、ぎゅっぎゅっぎゅっと温かい手で包みこんでくれた。繋いだ手から気持ちが伝わってくる。

「慶……いいかな」
「………」

 こっくりと肯いてくれた慶。愛しい慶……

「ちょっと、あなたたち、そんな風に手をつなぐなんて……」
「お母さん」

 目ざとくおれ達の手に気が付いて眉を寄せた母をまっすぐに見る。

「おれ……渋谷君のことが好きなんです」
「は?!」

 呆気にとられた顔をした母。
 今度は慶が、慶のご両親に向かってきっぱりと言ってくれた。

「今ここで、練習だったって言えば、この場が丸く収まるってことは分かってるんだけど………おれ、お父さんとお母さんにまでウソつきたくない」

 繋いだ手にぎゅっと力がこもる。

「おれ達、つき合ってる。興味本位とかそういうことじゃなくて、普通に、真剣に」

 慶の瞳に情熱のオーラが灯っている。

「それが悪いことだとは思ってない。世間的にはあまり認められないことかもしれないけど、お父さんとお母さんには分かってほしい」
「……………」

 シンッとその場の空気が止まる。
 そのままの状態で、何秒……何十秒たった時だっただろうか……

「………ふざけないで」
「!」

 地の底から聞こえてくるような低い声。まずい……っ

「お母さん……っ」
「冗談じゃないわよっ」

 勢いよく母が立ち上がった。テーブルに膝があたり、のっていたコーヒーカップが揺れ、カチャカチャと音がなる。

「男の子が好きなんて許されるわけがないでしょう!」

 母のヒステリックな叫び声が響き渡る。

「ああああ!男の子同士なんてありえない!ありえない!ありえない! やっぱり渋谷君がこんな可愛い顔してるから惑わされてるのよっ。そうじゃなかったら……っ」
「お母さん!」

 おれも立ち上がり母の両肩を思いきり上から押さえつけた。

「やめてください!」
「何するのっ」

 母の手がおれの手を剥がそうとする。でも、剥がさせない。力任せにもう一度ソファーに座らせる。

「ちょっと浩介……っ」
「………っ」

(黙れ……黙れ魔女っ)

 憎しみが募って、押さえつけた肩をギリギリと握り潰したくなる。

(粉々になってしまえばいい……っ)

「痛……っ」

 母の顔が苦痛に歪んだ、その時。


「浩介」
「!」

 慶に手をつかまれ、ハッとする。

「慶……」

 おれは、何を………


「まあまあまあ」

 この重苦しい空気を一掃するかのように、ポヤンとした女性の声が響き渡った。

「とりあえず、様子見ってことでいいんじゃないですか?」
「え……」

 おれと母のやりとりに呆気に取られていた風の慶のご両親も、我に返って声の主を見上げる。
 声の主、椿お姉さんは、おれの母に向かってニッコリと笑った。

「ここで無理に別れさせようとしたって、同じ学校なんだし無理ですよ」
「でも……っ」
「ご主人は、放っておけっておっしゃったんですよね? だったら、奥様はそれに従うべき、では?」
「………」

 すごい。あの母が黙ってしまった。追い打ちをかけるように椿さんが言う。

「ご主人は、今日奥様がここにいらっしゃることご存じなんですか?」
「!」

 痛いところを突かれた、という顔をした母。そして、はっとしたように時計を見た。父に帰ると約束した時間なのだろう。

「……わかりました」
 母は不承不承という顔を隠しもせず肯くと、

「それでは、とりあえずは様子見としますが……」
「…………」
「許すことは絶対にできません」

 言い放ち、挨拶もせずに部屋を出て言ってしまった。見送りに南ちゃんが追いかけて行ってくれる。

「………」
「………」
「………」
「………」

 嵐の去った後の静けさ、とでもいったような長い沈黙の後、慶のお父さんが「あーああ」と茶化すような口調でため息をついた。

「二人ともバカだなあ。あそこで肯いておけば、全部丸くおさまったのに」
「え………」
「お父さん……」

 わかっていて、ああ言ってくれてたのか……?

「あー、もう、どうでもいいわ」

 今度は慶のお母さんが、さも面倒くさそうに言うと、勢いよく立ち上がった。

「ようは、すごく仲良しの友達ってことでしょ? いいんじゃないの?」
「だから、友達じゃなくて」
「あーー面倒くさい。聞きたくない聞きたくなーい」

 お母さんは耳をふさぎながら行きかけて、

「お腹空いたわね。早めにお昼にしましょうか。浩介君も食べてけば?」
「え」
「お好み焼きにするから。慶、ホットプレート出してきて」
「あ、うん」

 慶も立ち上がり、おれを振り返ると、

「食べてけよ?」
「あ……」
「そうしなさい」

 返事をする前に、慶のお父さんまでもが声をかけてくれた。それから、お父さんはお母さんに向かって「おーい」というと、

「オレは絵画教室戻るから。それで、帰りに一杯って誘われてて」
「また真っ昼間から!ずるいっ」

 ぶーぶーいうお母さんを、お父さんが「君もくればいい」と誘っている。
 そこへ、慶が大きなホットプレートを持って戻ってきた。

「ホットプレート、ここにおけばいいー?」
「お母さん、こないだの桜えびどこにしまったのー?」
「私チーズのせたい。とろけるチーズまだある?」

 3人の子供達が口々に、お母さんお母さん、と言っていて、あちこちで笑いが起こっていて……。ああ、すごいな……と、感動さえおぼえる。

(これが普通の家……)

 おれのうちとは全然違う………
 
(でも……)

 昨日、久しぶりにアルバムをみて気がついた。
 おれが3歳になる前くらいまでは、うちの家族も普通に笑って写真に写っていた。どうして今みたいに誰も笑わない家になってしまったんだろうか……


**


 お好み焼きをお腹いっぱいいただいてから、帰路についた。慶が「運動がてら」といって着いてきてくれたので、自転車を押して歩く。

「……大丈夫か?」
「うん」
 心配げに言ってくれた慶に、笑顔で肯いてみせる。

「父が放っておけ、って言ったっていうから大丈夫だと思う。父の言うことは絶対だから」
「……そっか」

 慶の手が、ハンドルを握っているおれの手の上にそっと重なる。温かい手……
 慶が下をむいてボソッと言った。

「おれ、何もできなくてごめんな」
「え?」

 真剣な声にぎょっとする。何を言って……。
 慶はポツポツと続ける。

「守るって言ったのに、何もできなかった」
「慶……」

 歩みをとめ、慶が重ねてくれた手の上に、もう片方の手をのせる。

「そんなことないよ。慶、守ってくれたよ」
「守ってないじゃん」
「守ったよ」

 ぎゅううっと手に力をこめると、ビックリしたように慶がこちらを見上げた。

 愛しい慶。大好きな慶……

「慶は、おれの心を守ってくれてる」
「…………」

 慶がいてくれるから、おれは壊れないでいられる……

 しばらくの沈黙の後……

「……ばーか」

 慶が照れたように言って、重ねていた手にぎゅっと力をこめてくれた。


 慶がいてくれるから大丈夫……
 おれはずっとずっと、慶と一緒にいたい。それは叶えられない夢なんだろうか……




----------------------------------------


お読みくださりありがとうございました!
慶の父は、アメリカに本社のある製薬会社の営業マンです。慶の母は、薬剤師。最寄り駅近くのクリニックにお勤めです。慶の姉は、看護婦(作中92年なので、看護師ではなく看護婦)です。
また明後日よろしくお願いいたします!

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BL小説・風のゆくえには~将来2-1(浩介視点)

2016年03月28日 07時21分00秒 | BL小説・風のゆくえには~ 将来


『何があったって嫌いになんかなるわけねえだろ?』

 おれの親友であり、恋人でもある慶が、その揺るぎない瞳で言ってくれた。

『安心しろ。何があっても大丈夫だから。お前はおれが守るから』

 愛に包まれていると実感できる言葉……

(そういえば)
 ふいに思い出して、笑いそうになってしまった。

(合宿の時、慶ってば五十嵐先輩に飛び蹴りしたんだよなあ)

 おれが写真部OBの五十嵐先輩に突き飛ばされたのを見て、慶は問答無用容赦なく、先輩を飛び蹴りで吹っ飛ばしたのだ。あの小柄な体にどれだけパワーがあるのか、あの中性的で美しい顔からはまったく想像できない。

 慶はいつでも守ってくれる。精神的にも肉体的にも。その揺るぎない瞳で。

(今日も会いたかったなあ……)

 でも、用心して止めておいた。
 明日はバスケ部の冬休み最後の練習が朝からある。親に文句を言わせないため、今日は一日家で勉強していなくては………というのもあるのだが、最大の理由は、昨日、慶とキスしているところを、母に見られてしまったからだ。

 ほとぼりが冷めるまで待ってから帰宅したところ、母は普通に夕食の用意をしていた。父も帰宅していたけれど、食事の席でも何も言われることはなく安心したのだが……


(あそこまでの悲鳴は久しぶりだったな……)

 思いだして、うんざりしてしまう。
 慶とおれのキスをみて、母は金切り声で叫び続けた。
 あそこまでの声は、中学三年の夏休みに「高校からは地元の公立高校に行きたい」と話した時以来だと思う。

『今の学校に入学するのがどれだけ大変だったか分かってるの?! 今だって、保健室登校と定期テストだけで進級させてもらうために、お母さんがどれだけ大変な思いをしてるか……っ』

 中3のあの時……母が恩着せがましく騒ぎ立てた上に、いつものように手を振り上げてきたので、

『やめて』
『!』

 はじめて、母の手を掴んだ。すると簡単に母の手は止まった。
 今まで恐怖のため体が動かず母からの暴力を甘んじて受け続けていたけれども、もう、おれはその気になれば、母を止めることができる、ということに、この時初めて気が付いた。背も、とっくに母を越していたのだ。

 母は一瞬怯えたような表情をしたものの、手で敵わないなら口で、と言わんばかりに暴言セリフを大声で吐き続けていた。でも、おれはもう怖くはなかった。


「あの時も……」
 中3のあの時、母に反抗しようと思えたのは、『渋谷慶』のおかげだった。偶然見かけた『渋谷慶』の光がおれを救ってくれた。

「慶は本当に、おれの救世主だな」
 鉛筆をプラプラさせながら一人ごちて、勉強を再開しようとしたところ、

「………?」

 階下から電話の呼びだし音が聞こえてきた。
 3回、4回……とコールするのに、母が出る気配がない。

 なんだろう? 出かけているのだろうか?
 日曜の朝10時過ぎに外出? 珍しい………

 と、そこへ。

「!」
 バンッと隣の部屋のドアが開く音がして飛び上がった。そして、

「おい! 電話!」
「!!」

 廊下に響く怒鳴り声。……父だ。

「は、はい!!」
 一瞬で血の気が引く。転がるように椅子からおり、部屋からでる。と同時に、

「!」
 バンッと、今度はドアが閉まる音。そしていらついたように物を叩きつけたような音が聞こえてきて身を縮める。

「す、すみませんっ」
 慌てて下までかけおりて、玄関に置いてある電話の受話器を取り上げる。

(こわい……)
 父の機嫌を損ねるのは何よりも恐ろしい。それは小さい頃から変わらない。

(母がおれを支配下に置こうとするのは、おれを父が望む子供にするため)

 そのことにも小学生の時には気が付いていた。おれも母も、父の駒にすぎない……


「はい。桜井です。……え」

 日曜の朝から誰だよ、と心の中で毒づいてから名乗ったのだが、その電話の相手の意外さにビックリしてしまう。

「み……みなみちゃん?」
 慶の妹、南ちゃんだった。南ちゃんはいつものように飄々とした口調で恐ろしいことを言った。


『今ねえ、浩介さんのお母さんがうちに来てるよー』
「え?!」

 うちにって、慶のうちに? おれの母が?!

『それで、うちの子を誘惑するのをやめさせてください!とかうちの親に言って、面白いことになってる』
「!」

 なんてこと……


 フラッシュバックがおこり、一瞬倒れそうになる。

 あれは幼稚園の時……
 せっかく仲良くなれそうだった同じ班の男の子。子供同士のたわいもないやり取りの中で、引っ掻き傷をつけられた。そんなのは痛くもなんともなかったのに、

『人に怪我させるなんて、いったいどんな教育してるんですか!』
 母に引きづられるようにその男の子の家に連れて行かれ、母がその子のお母さんを散々罵り、最後には土下座をさせたのを見てどれだけショックだったか……

 そしてその次の日から、その男の子どころか、他の子からも話かけても避けられるようになった。

『浩介君と遊んじゃだめってママに言われてるの。みんなそうだよ』
 お喋りな女の子が教えてくれた。おれと遊ぶと大変なことになるから遊んじゃダメだって。そして……

『みんな浩介君のこと嫌いになったんだよ』



 慶……
 慶は……何があっても嫌いにならないって……


「今すぐ行くから!」

 南ちゃんの返事を待たずして、受話器を乱暴に置く。


 慶……慶。

 慶、お願いだから……お願いだから、おれを嫌いにならないで。





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お読みくださりありがとうございました!
また明後日よろしくお願いいたします!(あー本当は明日更新したいー。本当は一回で終わるはずが、書き終われなくて二回に分かれてるから……)
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