金属が軋むような音がして、扉が開いた。
すると突然、すごい勢いで体が扉の中に引きずり込まれた。
扉の中はまぶしいほど真っ白だった。
キラキラキラキラ・・・という鉄琴のような音が、あたり一面に広がっている。
「緑澤くーん」
くーん、くーん・・・と声がこだまする。
「和也くーん」
目が慣れてきたのか、周りが見えてきた。
黄緑の草原が広がっていて、所々に木がはえている。テレビで見たモンゴルの草原っぽい感じ。でも空は青ではなく、真っ白く靄がかかっている。
振り返ってみたが、扉は景色と一体化していて見あたらなかった。
とりあえず一番近くの木に行ってみると、驚いたことに和也が木の根本に座り込んでいた。木に体を預けた状態で、ボーっと上のほうを見ている。
「和也君。大丈夫?」
思い切り体を揺さぶると、和也はぼんやりとこちらに視線を向けた。
「ああ・・・七重さん。七重さんも来たの?」
「来たけど・・・ずっといるつもりはないわよ。一緒に帰ろうよ」
「なんで?」
和也はうっすらと笑った。
「ここにいれば何も考えなくていいんだよ。家族のことも学校のことも、全部、ね」
「・・・あんたはそれでいいかもしれないけど、残されたお母さんはどうするのよ?」
和也はゆっくりと頭をふった。
「母さんはお兄ちゃんさえいればいいんだよ。オレがいなくなったところでどうもならないよ」
「どうもなってるわよっ」
イラッときた。
「あんたが消えたって言って、おばさん半狂乱になって家中探し回ったもんだから、あの小綺麗な家がメチャクチャになってたわよ。あんたも帰ったら片づけ手伝いなさいよ」
「・・・母さんが? ううん。それはオレをお兄ちゃんだと思ってたからでしょ。お兄ちゃんが消えたっていって探して・・・」
「だーかーらー違うの!」
強引に腕を掴んでひっぱり起こした。
「本当はあんたが和也だってわかってて、わざと達之って呼んでたんだって。あんたのお母さん。でも、あんたが平気な顔してるから、あんたが自分に全然感心がないんだってショックを受けてたみたいよ。あんたも嫌なら嫌って言えばよかったじゃないの」
「だって・・・」
和也は口をパクパクさせていたが、続きの言葉は出てこなかった。
「ちゃんと話し合いなさいよ。本当はまだまだお母さんに甘えたい年頃なんでしょ?」
「そんなことないよっ」
赤くなった和也の目に精気が戻ってきた。
「よし。じゃあ、これを辿っていって」
私は自分の体に巻いてきたロープの一本を和也に渡した。
実はこの扉に入る前に、ロープを二本巻き付けてきたんだ。扉の向こうでおばさんが逆の端を机に巻き付けて待っているはずだ。
ロープを引っ張って合図をすると、僅かながら引っ張り返された。ちゃんとまだつながっているようだ。
「ほら、これを辿ってお母さんの元に戻って」
「七重さんは?」
心配げに聞いてきた和也に、私は力強くうなずきかけた。
「緑澤君をさがしてくるよ。必ず連れて帰るから、お母さんと一緒に待ってて」
--------------------------------
何とか11月中に復帰できましたっ。
更新していないのに見に来てくださっていた方々、本当にありがとうございますっ!
今後ともよろしくお願いいたします。
すると突然、すごい勢いで体が扉の中に引きずり込まれた。
扉の中はまぶしいほど真っ白だった。
キラキラキラキラ・・・という鉄琴のような音が、あたり一面に広がっている。
「緑澤くーん」
くーん、くーん・・・と声がこだまする。
「和也くーん」
目が慣れてきたのか、周りが見えてきた。
黄緑の草原が広がっていて、所々に木がはえている。テレビで見たモンゴルの草原っぽい感じ。でも空は青ではなく、真っ白く靄がかかっている。
振り返ってみたが、扉は景色と一体化していて見あたらなかった。
とりあえず一番近くの木に行ってみると、驚いたことに和也が木の根本に座り込んでいた。木に体を預けた状態で、ボーっと上のほうを見ている。
「和也君。大丈夫?」
思い切り体を揺さぶると、和也はぼんやりとこちらに視線を向けた。
「ああ・・・七重さん。七重さんも来たの?」
「来たけど・・・ずっといるつもりはないわよ。一緒に帰ろうよ」
「なんで?」
和也はうっすらと笑った。
「ここにいれば何も考えなくていいんだよ。家族のことも学校のことも、全部、ね」
「・・・あんたはそれでいいかもしれないけど、残されたお母さんはどうするのよ?」
和也はゆっくりと頭をふった。
「母さんはお兄ちゃんさえいればいいんだよ。オレがいなくなったところでどうもならないよ」
「どうもなってるわよっ」
イラッときた。
「あんたが消えたって言って、おばさん半狂乱になって家中探し回ったもんだから、あの小綺麗な家がメチャクチャになってたわよ。あんたも帰ったら片づけ手伝いなさいよ」
「・・・母さんが? ううん。それはオレをお兄ちゃんだと思ってたからでしょ。お兄ちゃんが消えたっていって探して・・・」
「だーかーらー違うの!」
強引に腕を掴んでひっぱり起こした。
「本当はあんたが和也だってわかってて、わざと達之って呼んでたんだって。あんたのお母さん。でも、あんたが平気な顔してるから、あんたが自分に全然感心がないんだってショックを受けてたみたいよ。あんたも嫌なら嫌って言えばよかったじゃないの」
「だって・・・」
和也は口をパクパクさせていたが、続きの言葉は出てこなかった。
「ちゃんと話し合いなさいよ。本当はまだまだお母さんに甘えたい年頃なんでしょ?」
「そんなことないよっ」
赤くなった和也の目に精気が戻ってきた。
「よし。じゃあ、これを辿っていって」
私は自分の体に巻いてきたロープの一本を和也に渡した。
実はこの扉に入る前に、ロープを二本巻き付けてきたんだ。扉の向こうでおばさんが逆の端を机に巻き付けて待っているはずだ。
ロープを引っ張って合図をすると、僅かながら引っ張り返された。ちゃんとまだつながっているようだ。
「ほら、これを辿ってお母さんの元に戻って」
「七重さんは?」
心配げに聞いてきた和也に、私は力強くうなずきかけた。
「緑澤君をさがしてくるよ。必ず連れて帰るから、お母さんと一緒に待ってて」
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何とか11月中に復帰できましたっ。
更新していないのに見に来てくださっていた方々、本当にありがとうございますっ!
今後ともよろしくお願いいたします。