予定変更で、次回金曜日の読み切りをもってお休みに入ります💦
今回は、先週まで連載していた「続々・2つの円の位置関係」の、最終回から3週間ほど後のお話をお送りします。
-------------
『~続々・2つの円の位置関係・追加のおまけ』
【慶視点】
高校の同級生の、溝部と山崎と斉藤がうちに遊びに来た。
高校2年生の時は、浩介とおれとこの3人でつるんでいたので、余計に高校時代に戻ったような感覚になる。
「なー、卒アルすぐ出る?」
一番最後にうちに着くなり、溝部がこめかみに人差し指をグリグリしながら言ってきた。
「さっき、電車の中で、こいつ絶対知ってるーって奴がいて……同じ高校な気がすんだけど」
「えー、誰だろう」
「オレが降り際、向こうもオレに気がついて、微妙な感じに頭下げてきて……」
話している間に、浩介が卒業アルバムを持ってきてくれた。
「人数多いから、全然知らない人もいるよね」
「だよなー。話したことない気がする。一人は眼鏡かけててー……」
「え?」
一人は?
「って、一人じゃないのか?」
「いや、二人。わりとイケメンの背高い奴と、小さい眼鏡の奴」
それは……
思わず浩介と顔を見合わせてしまう。
それは、かなりの確率で、村上享吾と村上哲成だ。そういえば、二人の新居の最寄り駅は、溝部の家の最寄り駅と隣同士だ。そりゃ、偶然会うこともあるだろう……
と、思っていたら、案の定、
「あ、こいつらだ」
あっさりと、溝部がダブル村上の写真を指差した。
「同じ苗字……兄弟とか親戚とかじゃないよな?」
「えー、違うよな? 山崎」
溝部と斉藤が振り返ると、山崎は苦笑いを浮かべて、
「そんな話は聞いたことない」
と、首を振った。山崎は3年の時に二人と同じクラスなので、同じページに写っている。山崎、あまり変わってない。ちょっとフケただけだ。
「こっちの村上は、バスケ部だから、バスケ部同窓会で会ったよ。3月だったっけ?桜井?」
「あ、うん。そうだね」
浩介も斉藤も元バスケ部なのだ。
実はおれ達はダブル村上とは先月も会っているけれど、浩介と一瞬視線をやり取りして、その件は「話さない」に決定。
そんな秘密のやり取りを知るわけもない溝部が、「あ、そうだそうだ」と手を打った。
「なんか思い出してきた。こいつら当時もずっとつるんでたよな? バスケ部と野球部、部室同じ扉だったから、外でこの眼鏡が待ってるの何回か見た気がする」
「そうそう。この二人、仲良かったよね。渋谷と桜井みたいに」
斉藤もニコニコと言ってくる。
確かに、テツと享吾もいつもつるんでた。まあでも、おれ達は当時から付き合ってたけど、テツと享吾はずっと友達してて、ようやく最近付き合いはじめたんだけどな!……なんてことも、もちろん言わない。二人はカミングアウトする予定はないとのことなので、絶対秘密なのだ。
と、思っていたら、溝部が普通のことのように、言った。
「こいつらも、付き合ってんのかもな」
「え?」
「えええ?!」
み、溝部!?
「なんで……」
「いや、今日見た時な、携帯二人で覗き込んで楽しそうに話してて……その雰囲気が、なんか恋人っぽかったから」
「そうそう。この二人、仲良かったよね。渋谷と桜井みたいに」
斉藤もニコニコと言ってくる。
確かに、テツと享吾もいつもつるんでた。まあでも、おれ達は当時から付き合ってたけど、テツと享吾はずっと友達してて、ようやく最近付き合いはじめたんだけどな!……なんてことも、もちろん言わない。二人はカミングアウトする予定はないとのことなので、絶対秘密なのだ。
と、思っていたら、溝部が普通のことのように、言った。
「こいつらも、付き合ってんのかもな」
「え?」
「えええ?!」
み、溝部!?
「なんで……」
「いや、今日見た時な、携帯二人で覗き込んで楽しそうに話してて……その雰囲気が、なんか恋人っぽかったから」
「………」
「………」
す……するどい。
と、思っていたら、今度は斉藤が、「ないない」と手を振った。
「だって、村上享吾、結婚してるよ? 奥さん、ピアノの先生してるんだって」
「………」
す……するどい。
と、思っていたら、今度は斉藤が、「ないない」と手を振った。
「だって、村上享吾、結婚してるよ? 奥さん、ピアノの先生してるんだって」
「あ、そうそう。そう言ってたね!」
浩介も慌てて同意する。
詳しくは聞いていないけれど、契約結婚?みたいなものらしい。テツとのことは、奥さんも同意している、と言っていた。
「なんだ。そうなのか~」
溝部は苦笑してから、おれと浩介を振り返った。
「最近さあ、お前らのせいで、世の中の見方が変わってきた気がする」
「……なんだそりゃ」
世の中の見方?
「見たまんまじゃないっていうのかな。色々な可能性があるっていうか……」
「ああ、なるほど」
斉藤もポンと手を打った。
「ただの仲の良い友達、と見えるけど、実は恋人、とか?」
「そうそう」
溝部はパラパラとアルバムをめくると、文系クラスのページで手を止めた。そこには、溝部の奥さんになった鈴木の写真がある。溝部は今、鈴木の連れ子の陽太君と、二人の娘のよつ葉ちゃんとの四人家族なのだ。
「逆にさ……オレと陽太なんか、血の繋がりはないけど、普通に親子だと思われてて」
ふっと目元を和らげた溝部は、妙に大人びてみえる。あ……いや、もう充分、大人なんだけど……
「陽太の小学校からの友達は、オレが本当の父ちゃんじゃないって知ってるけど、中学からの友達は知らないからさ」
陽太君は今年の4月から中学生になった。やっぱり野球部に入ったそうで、あいかわらず溝部は毎週末は野球部の試合を見に行ったり、車出しをしたりしているらしい。部活なのに、親が車出し?と疑問にも思うけれど、そういう世界だそうだ。
「こないだも、野球部の先輩に『陽太、父ちゃんソックリだな!』とか言われてさ」
クククと笑った溝部はとても幸せそうだ。
「世の中全部、見えたまんまじゃないんだよな~。小さい渋谷の方が男役とかさ」
「は!?」
せっかく良い話だと思って聞いていたのに、聞き捨てならない言葉に、ピキッとなる。
「小さくて悪かったな!お前だって鈴木より小さいだろっ」
「小さくねーよ!若干高い!ヒール履かれると抜かされるだけだ!」
「まあまあまあまあ」
我ながら子供じみた言い争いを始めそうになったところで、浩介が割って入ってきた。
「二人ともお腹空いてるんでしょ? ご飯にしようご飯に!」
「そうだな」
すいっと山崎が浩介と一緒に台所に向かう。最近、山崎は料理の腕を上げたいとかいって、浩介に弟子入り?しているのだ。
「ご飯なに?」
「すき焼き」
「え!マジか!!」
やったーやったーと斉藤と手を打ち合わせている溝部。この切り替えの早さ……
(こいつ……)
ホント変わんねえよな……
高校2年生の、あの楽しかった日々から、何年…何十年経ってるんだろう。みんな、見た目はすっかり大人になったけれど、中身はあの頃のままだ。そして……
「慶ー、人数分卵だしてくれるー?」
「……おお」
あの頃と変わらないふんわりとした笑顔の浩介がここにいる。おれの恋人として。こんな奇跡が起きるなんて、あの頃のおれは想像もしなかった。
高校2年生の、あの楽しかった日々から、何年…何十年経ってるんだろう。みんな、見た目はすっかり大人になったけれど、中身はあの頃のままだ。そして……
「慶ー、人数分卵だしてくれるー?」
「……おお」
あの頃と変わらないふんわりとした笑顔の浩介がここにいる。おれの恋人として。こんな奇跡が起きるなんて、あの頃のおれは想像もしなかった。
(『雰囲気が、なんか恋人っぽかったから』か……)
ふと、溝部のさっきのセリフを思い出す。
享吾と恋人みたいになりたい、と言っていたテツ。願いが叶って良かったな……
おれの願いは……
「ご飯ももうよそってもいい?」
「うわーすげーうまそー」
「ビール!ビール!」
愛する人と、気の合う仲間と、美味しいご飯と。これ以上ない、幸せな時間。これ以上、願う事なんて、何もない。
------------
お読みくださりありがとうございました。
まったり日常話、失礼しました。
って、いつもの「終わる終わる詐欺」発生……
言い訳をさせていただきますと……
元々、この話は「続々……」の最終回の後にくっつけようと思ってました。
が、これくっつけたら、慶達に乗っ取られちゃうなーと思い、休載前の読み切りの前にくっつけよう!ということにしました。
が、途中まで書いた時点で「これ、本編のネタバレじゃん……」と気が付きまして……。これを短編のカテゴリーの中に入れるわけにはいかん。
うーんうーんと考えた結果、分けることにしました。今日はせっかく浩介誕生日だったのに~~!
ということで、次回金曜日に読切をあげます。お時間ありましたらどうぞよろしくお願いいたします。
ということで、次回金曜日に読切をあげます。お時間ありましたらどうぞよろしくお願いいたします。