入院中の話。
やっと、自分で歩いて売店へ行けるようになった頃の話。
ある土曜日。
ベッドに寝転んでばかりいても飽きる。ベッドに寝転んでばかりいると眠ってしまう。
眠ってしまうと困る。昼間に眠ると夜に眠れなくなる。困る。困る。
でも、ベッドに寝転んでばかりいると、眠る。困る。
そんなわけで出歩く。出歩くしかない。
手術が終わったばかりで、感染症の心配があるため、出歩くのはまぁまぁ禁止されている。禁止されても困るので、こっそりと出歩く。
でも、ゆっくりしか歩けないので、こっそりとのそのそとぼとぼと、ナースステーションの前を横切って出歩く。
行く先は、売店。売店しか、行くところがない。病院だから。
まだちょっとしか歩けない時、勝手に出歩くと看護師さんに怒られるので、看護師さんに言ってみた。
車椅子に乗って、売店へ行って来てもいいですか?
看護師さんは、「ダメです!」と食い気味に言う。
負けずに僕は言う。
車椅子に乗って、押してもらって売店へ行って来てもいいですか?
看護師さんは、呆れた表情でこう言う。
「欲しいものがあるなら、売店で買って来てもらえばいいじゃない?」
僕は、ちがーう!という意味を込めてこう言う。
「何かが欲しいんじゃなくて、売店へ行ってみたいんですってば!」
かなり食い下がったのだけれど、看護師さんは、僕の売店行きを許可してくれなかったのだ。
なんてこった。
こうして、僕にとって、売店は「夢の場所」となっていったのである。
ある土曜日の話はどこへ行った?
つづく。
やっと、自分で歩いて売店へ行けるようになった頃の話。
ある土曜日。
ベッドに寝転んでばかりいても飽きる。ベッドに寝転んでばかりいると眠ってしまう。
眠ってしまうと困る。昼間に眠ると夜に眠れなくなる。困る。困る。
でも、ベッドに寝転んでばかりいると、眠る。困る。
そんなわけで出歩く。出歩くしかない。
手術が終わったばかりで、感染症の心配があるため、出歩くのはまぁまぁ禁止されている。禁止されても困るので、こっそりと出歩く。
でも、ゆっくりしか歩けないので、こっそりとのそのそとぼとぼと、ナースステーションの前を横切って出歩く。
行く先は、売店。売店しか、行くところがない。病院だから。
まだちょっとしか歩けない時、勝手に出歩くと看護師さんに怒られるので、看護師さんに言ってみた。
車椅子に乗って、売店へ行って来てもいいですか?
看護師さんは、「ダメです!」と食い気味に言う。
負けずに僕は言う。
車椅子に乗って、押してもらって売店へ行って来てもいいですか?
看護師さんは、呆れた表情でこう言う。
「欲しいものがあるなら、売店で買って来てもらえばいいじゃない?」
僕は、ちがーう!という意味を込めてこう言う。
「何かが欲しいんじゃなくて、売店へ行ってみたいんですってば!」
かなり食い下がったのだけれど、看護師さんは、僕の売店行きを許可してくれなかったのだ。
なんてこった。
こうして、僕にとって、売店は「夢の場所」となっていったのである。
ある土曜日の話はどこへ行った?
つづく。