久しぶりに会ったおだちゃんは、髪が伸びていた。
人生ほぼ坊主頭をポリシーとしているおだちゃんの髪が伸びているのは、きっとお金がないからだと想う。
人生に於いて重要なのは、新鮮さだと言えなくもないので、このままロン毛になったらいいと注進したのだが、たぶん、聞き入れられることはないんだろうな。
キムタクみたくなって、女の子にもてるかもしれないのに。とかね。
そんなおだちゃんなんだけど。
入院中にメールが来て、「退院するまでには見舞いに行くよ。調べたら、バスなら安く行けそう」なんて言ってきた。
生意気なおだちゃん、お金がないおだちゃんにしては、めずらしく殊勝な発言である。
おだちゃんの性格を考えるに、新潟まで見舞いに来ると言うなんて・・・ないよなぁ。と想うわけだ。
でも、今回は死にかけちゃったわけだし、怪我の程度が普通じゃないし、おだちゃんとは友達歴も長いし、最近は八丈島にも一緒に行ってるし、困った時にはお金も貸してあげてるし、やっぱりおれのことを心配してるんだなぁ・・・なんてね。
うんうん、良い友達だなぁ・・・なんて想ったりしてね。
で、おだちゃんと、その事について話した。
「見舞いに来ようなんて、偉いじゃん」
「で、病院は新潟市のどこだったの?」
「ん?病院は新潟市じゃないよ」
「えっ?新潟市じゃないの?新潟市から遠いの?」
「新潟市からは遠いね。南魚沼市だよ」
「なんなの?なに?新潟市に行きたかったってこと?」
「いや、新潟は行ったことがないからさぁ」
なんだか、怪しい。非常に怪しい。怪しすぎる。新潟は?
問い詰めると、白状した。
どうもおだちゃんは、新潟市にある競馬場へ行きたかったらしい。行ったことのない新潟競馬場へ、見舞いついでに行こうと想っていたらしい。どちらかというと、競馬場ついでに見舞いに来ようと想っていた節がみてとれる。
やっぱりね。おかしいと思ったんだよ。長距離バスに乗ってまで見舞いに来ようなんて・・・。おかしいと想ったんだよ。ほんとにさ。
もう、困っても、お金貸してあげないかんね。ほんとに。
でもまぁ、おだちゃんが、「生きてて良かったじゃん、ほんとに」と言うたびに、「生きてて良かったなぁ」と想ったりしちゃってね。
でも、困っても、お金は貸してあげないよ。ほんとに。