明日はライブだ。明日がライブだ。
下北沢lownへようこそ。
今回のライブのテーマは・・・「22歳」。と、「旅」。
つまり、22歳の時に作った唄を歌う。もちろん、22歳の時に作った唄以外も歌う。
そろそろこの話も締めなければならない。
僕らは、その年の十月を、「最悪の十月」と呼んでいた。英語にすると、Fuckin' Octoberである。
それはたぶん、二人とも、十月に大失恋をしたから。だったかなぁ。どうだったかなぁ。
とにかく、「ファッキンオクトーバーに捧ぐ」というのが合言葉だったような気がする。
僕はロントモの部屋にいる。
ロントモが言う。
「シング、曲を作ろうぜ!」
僕は言う。
「うーん・・・どうかなぁ」
ロントモが畳み掛ける。
「シング!曲を作ろうぜ!一緒に!」
僕はロントモの部屋にある「迷走王ボーダー」というタイトルの漫画なんかを読みながら言う。
「うーん・・・どうかねぇ」
ロントモは諦めない。
「さぁ、紙とエンピツだ!さぁ、作るぞ!」
共作ってのが苦手だ、僕は。
共作を試みて、成功した試しがない。
ほとんどの場合、我がぶつかり合って途中で終わる。
だから、「どうかねぇ」と言ってはぐらかしているのに、ロントモはしつこい。
漫画を取り上げられた僕は、仕方なく、エンピツを手に取る。
ロントモは胸を張って言う。
「テーマは、おれたちの最悪の十月に捧ぐ、だ」。
・・・ふーん・・・。
「シング、真面目にやれ!」
ロントモとの共作は楽しかった。
空想の世界である。小説を書くようなものである。
自分たちに見立てた主人公の二人を、カッコ良く立ち回らせるのである。
言葉を生み、操り、踊らせ、削り、消し、比べ、選び、組み立てていく。
大切なのは世界観であり、僕らの22歳の世界観が似通っていたせいもあり、そうなると、そこには創造という楽しさしかない。
出来上がったのは、ツキのない主人公二人が、巨大な世界に挑み、敗れ、ボロボロになって、やっぱりツキはないままだが、それでもニヤリと笑い、レール無き荒野を歩んで行こうとするという話。つまり、笑っちゃうくらいどうでもいい話。
笑っちゃうくらいどうでもいい話ではあるのだが、22歳の僕とロントモにとっては、じゅうぶん過ぎる「道しるべ」となる唄なのである。
誰にも相手にされなくても、笑われても、バカにされても、自分の選んだ道を笑いながらゆく。そういう、「決意表明」みたいな唄なのである。
自分の部屋に戻った僕は、すぐにこの唄を録り始め、その日の夜にはロントモの部屋へ完成品を届けに行った。
カセットテープを再生し、目を閉じで聴いていたロントモは、少し泣いていたような気がする。
「すげぇよ、シング。・・・こことこことここは、俺が考えた歌詞だよな。いいよなぁ、こことこことここ。なっ?」
僕とロントモは、そんな風に大層仲が良かったんだ。
これが、僕らの「最悪の十月」近辺にに起きた出来事であり、僕らが過ごしたいくつかの季節。
ちなみに、この唄はライブでは歌わない。
なぜならば、ちょっとだけ、恥ずかしいから。ははは。
「Hard Luck Baby」
街を埋め尽くす顔のない人ごみの中に無意味にしゃがみ込み
俺たちを拒絶する全てのものに敵意を剥き出しにしてる
昨夜盗んだ白いタブレット噛み砕き勇気のカケラを手に入れる
どうせ後悔がついてくるなら 俺たちは行ける所まで行ってみようぜ
いつもの店で奴と俺は不安と憂鬱をテキーラに託す
仲間達はあいつ等を恐れてカードを捨てて行っちまった
今夜レディオのレノンの力を借りて俺たちのゲームを始めようぜ
さぁ早くダイスを転がせよ 勝ち目なんて無くてもいいのさ
Hard Luck Baby
俺たちは神にも見放されちまった堕天使さ
大切なものに気づいてしまっただけなのに
夢を見るチャンスはそこら中に転がってるさ
道を外して不幸になってみるのもいいもんだぜ
Hard Luck Days No More Give Up
パーキングエリアに追いつめられヘッドライトに照らされた奴と俺
勝ってはいけないルールを破って制裁を受けようとしてる
閃光が闇を切り裂き銃声が静寂を打ち壊す
奴と俺は目くばせを交わした 約束の場所で落ち合おうぜ
ボロボロのカラダを引きずりながら俺はガードの壁に寄りかかる
奴の姿は見当たらない 傷口から流れる血を拭った
あきらめにも似たため息を漏らし俺は目を閉じて天を仰いだ
口笛が鳴り振り返ると 這いつくばってる奴が笑ってた
Hard Luck Baby
俺たちは誰にも見向きもされない堕天使さ
見失う恐さに気づいてしまっただけなのに
探そうぜ俺たちだけがたどり着ける場所を
傷ついて立ち上がれなくなっても笑っていようぜ
Hard Luck Days No More Give Up
仲間達はベッドの中で暖かで窮屈な夢を見る
俺たちは凍てついたアスファルトでコークスクリューのスリルを感じてる
Hard Luck Days No More Give Up
Written by kei and sing
8/26(土) 下北沢lown
「月に向かって吠えるライオン」
sing from trash box jam)
open 18:00 start 19:00
ticket 2500yen plus drink