いしいしんじ 『プラネタリウムのふたご』 講談社
プラネタリウムに捨てられた双子の兄弟テンペルとタットルの温かくて悲しい物語。
ひょんなことから村を離れ手品師になって各地を転々とするテンペルと
郵便局員をしながら養父の元でプラネタリウムの仕事を手伝うタットルの
それぞれが自分にしかできない仕事を自分なりのやり方で
全うしようとする姿が感動的でした。
二人の生い立ちやさまざまな出来事など、どのエピソードからも
優しさと静かな悲しみが流れているような印象を受けました。
成長した二人が再会するシーンが楽しみだったのに…。
「あんたじゃなきゃ務まらないって役柄が、この世にはちゃんと用意されてる。」
「あたしだって、あんたと同じように、結局、自分にできることしかできやしない。
ただ、大事なのは、その仕事だけは、ぜったい手をぬかずにやりとおすことだよ。」
そうタットルに語った老女の言葉が胸に響きました。
外国産の童話のような語り口ですが、大人にも十分楽しめて
いろいろ考えさせられます。
450ページにわたる大作なのに、3時間で一気に読破してしまいました。
「プラネタリウム」も「手品」も「物語」も
だまされる才能がないと楽しめないという点で共通だなあと思います。