50歳台男性が夫婦で温泉旅行に来て、新幹線で帰る途中にめまいがした。何とか東京まで帰ろうと思ったらしいが、耐えきれず新幹線を途中で止めて、救急要請した。当院に搬入されて、救急担当は神経内科医だった。午前中の当番で、その時午後の当番は私だった。ほとんど交代の時間だったのだが、救急隊からめまいという報告が入っていたので、脳神経の問題だと専門なので自分が受けた。来てみると、明らかに貧血で、Hbは7g/dlだった。話を聞くと、温泉にいる時から黒色便(タール便)が続いていたそうだ。
すぐに消化器科に回されて、緊急内視鏡検査となった。胃噴門部から食道に少しかかる腫瘍があって、露出血管が出ていた。消化器科医がエタノールとクリップで止血処置をした。輸血も6単位行った。糖尿病で総合病院に通院しているというので、担当した消化器科医(とても律儀な先生)がそこの主治医(糖尿病の担当)に電話した。そうしたら、癌ならがんセンターに紹介してくださいと言われたそうだ。できれば東京に戻ったそのまま入院で診てほしい。がんセンターでは手術まで2カ月待ちで、受診日に入院はとてもできないだろう。消化器科医がインターネットで調べたところでは、通院しているのは旧国立病院なので、当然消化器科も外科もちゃんといる。私は適当なので、病棟でその話を聞いた時、「その病院の消化器科宛てに紹介状を持たせればいいじゃないの。あとは向こうで何とかするでしょう。」と言った。