今日は午後から呼吸器感染症の研究会に行ってきた。症例発表は2題で、1例目は31歳男性の検診で指摘された胸部異常陰影。右S4に不整な4cmX1cmの陰影があり、陰影内に気管支と判断される透亮像がある。炎症反応は陰性で、気管支鏡検査による精査を要する。結果はMycobacterium aviumだった。2例目は83歳男性で、気腫性変化を伴う間質性肺炎と診断され、在宅酸素療法を受けていた。発熱・呼吸困難で緊急入院となって、両側肺全体に浸潤影+スリガラス影が広がっている。尿中レジオネラ抗原は陰性だったが、LAMP法でレジオネラ血清型6型と判明した。ニューキノロン点滴静注で一時は改善したが、その後悪化して死亡に至った。途中から増悪した原因は何かという話になったが、間質性肺炎の増悪、二次性細菌性肺炎の併発が考えられるが、確定はつかない。
後半はお目当ての、「画像で感染症と非感染症の鑑別がつくか、感染症の起炎菌は鑑別できるか」というテーマの講演だった。講師は大分大学放射線科の岡田文人先生。目からうろこの素晴らしい講演で、休みの日に行った甲斐があった。
小葉間隔壁の肥厚interlobular septal thickeningがあれば、感染症ではない。小葉間隔壁の肥厚は静脈の拡張かリンパ管の拡張(癌性リンパ管症など)で起きる。
小葉中心性結節centrilobular nodulesには、淡い陰影のill-definedと濃度の高いtree-in-budがある。ill-definedはinhalation(過敏性肺臓炎)かDeposition(透析患者の石灰化や肺胞出血)からなり、気管支周囲の炎症を表している。原因は感染症でも癌でもない。tree-in-budは感染症が原因で、気管支の炎症を表している。
起炎菌の同定は、air space pneumonia(大葉性肺炎)とbronchopneumonia(気管支肺炎)に分けて考える。大葉性肺炎をきたす起炎菌は、肺炎球菌・肺炎クラミジア・クレブシエラ・レジオネラ。分布は非区域性non-segmentalで、気管支壁肥厚bronchial wall thickeningと小葉中心性結節centrilobular nodulesがあることは少ない。気管支肺炎をきたす起炎菌は、肺炎マイコプラズマ・インフルエンザ菌・黄色ブドウ球菌・モラキセラ。分布は区域性segmentalで、気管支壁肥厚bronchial wall thickeningと小葉中心性結節centrilobular nodulesを認めることが多い。ただし、混合感染には注意を要する。
臨床情報がない状態で画像のみで読影するのも大変だと思うが、読みが当たっていると放射線科医として嬉しいということだ。岡田文人先生のことはこれまで知らなかった。著書は出されていないが、何冊かの雑誌に寄稿している。まずはそれを取り寄せて読んでみよう。