先週整形外科医から、骨折で入院した80歳代女性の血糖(随時)が389mg/dlだったので、診てほしいと連絡が来た。週明けの月曜日に手術予定だったが、血糖がコントロールされるまで延期したという。ところが、HbA1cは5.4%だった。糖尿病ではないのか。胃切除術後の食後高血糖かと思ったが、胃切除はしていない。極短期間でHbA1cが上昇する前に著しい高血糖になる劇症1型糖尿もあるが、尿ケトン体は陰性で、患者さんは元気だった。脳血管障害後遺症(軽度)で脳外科の外来に通院していて、時々検査を受けている。昨年はHbA1cが4%台だったが、随時血糖で160~200ちょっとになっている。アメや和菓子など甘いものをしょっちゅう食べているというが、それだけでそんなに上がるのか。食事を糖尿病食にして、間食を禁じて3~4日血糖を見ることにした。溶血や肝硬変はない。
入院後2日間の食前血糖は170~200ちょっとmg/dlで推移した。これは糖尿病で間違いない。HbA1c自体がおかしいのだった。内科の若い先生からは、異常ヘモグロビン血症でしょうと言われた。外注検査を提出して、ジャヌビア50mg投与で治療を開始した。
よくよくこれまでに記録を見ると、11年前に当時の消化器科で1,5-AGを測定した既往があった。異常ヘモグロビン血症でHbA1cがあてにならないことが、おそらくわかっていたのだった。糖尿病薬の処方はなかった。
外注検査の結果が出た。抗GAD抗体は陰性で、血中Cペプチド(空腹時)は0.96と微妙な値だった。グリコヘモグロビンが26.2%で1/3がHbA1cに相当するとすればHbA1c8.7%。空腹時血糖が170~180mg/dlとすれば、HbA1cは8.5~9%になるから、よく合っている。1,5-AGは2.9(12-29)だった。
他県から来た娘さんの話では、娘さん自身の健診結果でHbA1cが異常に低くて、大学病院で検査を受けたそうだ。珍しい家系なので、全員集めてほしいと言われたが、遠方なのでと断ったそうだ。少なくともこの母と娘は異常ヘモグロビン血症だ。姉妹がいるが、そういう話は聞いていないという。
SRLの本社に聞いてもらったら、異常ヘモグロビンの検査は請け負っていないということだった。大学病院の糖尿病代謝科に紹介すれば、検査してくれるのかもしれない。股関節の手術は大学病院整形外科の医師が当院に来て行う予定だった。まず糖尿病代謝科に入院してインスリン強化療法で血糖コントロールして、そのまま整形外科で手術するのがいいと提案したが、手術を受ける気がなくなったそうだ。何とか杖歩行はできるので、絶対手術という状態ではないらしい。
糖尿病の治療としては、BOT(ランタス注+ジャヌビア内服)で行ってみることにした。認知症はなく、年令を考慮すればしっかりしていて、インスリン注射をする気もあるようだ。(以上、数日前の記載を変更して記録)