なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

左房内血栓

2017年02月21日 | Weblog

 昨日80歳代前半の女性が腹痛でクリニックから消化器科に紹介された。腹部CTのオーダーを出して、結果を診たところで予定の大腸検査があるので、すぐには対応できなかった(現在一人消化器状態)。当方に連絡が来て、「肺動脈血栓らしい。大腸検査の間診ていてほしい」ということだった。

 もともと心房細動で抗凝固薬(NOAC)が処方されていたが、先月に不正性器出血で婦人かを受診して、抗凝固薬を一時休薬となっていた。モニター心電図を見ると、心拍がregularに見えた。心電図を確認すると、鋸歯状波様だが、よくよく見ると心拍はirreguarで、心房粗細動というところらしい利尿薬が処方されていたが、BNP1700と上昇している。大動脈弁置換術の既往があった。

 造影CTを見ると、肺動脈内に血栓はない。拡張した左房内~左心耳内に大きな血栓が陰影欠損を呈していた。これが飛んだら被害甚大だろう。元々認知症で施設入所中の方だが、明らかな麻痺はなく、神経症状としては(正確さに欠くが)なさそうだった。上腸間膜動脈など腹部の血管が閉塞してはいないようだ。右外腸骨動脈が閉塞していたが、その末梢に血流があり、慢性の閉塞で側副血管から流れているという判断になった。血栓については、他の問題がなければ開胸での摘出になるらしい。現在も消化管出血が疑われていて、抗凝固薬の投与もどうするか判断が難しい。

 胆嚢結石はないが、胆嚢が腫大していて、血流に乏しい。これも症状の把握が難しいが、右季肋部に圧痛があると判断された(右季肋部を圧迫した時だけ手で払いのけるから)。胆嚢動脈の虚血が疑われた。

 患者さんのADLは終日臥症状態(要は寝たきり状態で短時間の車いす移乗は何とか可能)で、認知症があり病状説明しても理解できない。以前の心エコーでEF20%台と評価されていて、外科で直腸脱と指弾されていたが、手術は見合わせになっていた。認知症がない時の自己意志だが、輸血拒否の方だった。心臓手術をしたのは、他県の大学病院で、その条件で手術したそうだ。(夫婦がそうだが、お子さんたちはそうではない) 血栓についても、胆嚢についても、保存的に経過を見るしかないということになった。

 消化器科・内科・外科・循環器科と計7名の医師がかかわって、誰が診るかという問題になったが、胆嚢炎?ということで外科の一番上の先生が診ることになった。

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