なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

脳腫瘍

2020年04月21日 | Weblog

 昨日の夕方に、痙攣で10代半ばの男性が救急搬入された。救急当番をしていた内科の若い先生が、救急隊からの連絡を受けて、どうしましょうかと連絡してきた。

 ちょうど新型コロナウイルス感染症の対策会議をしていたので、小児科の先生(小児神経が専門)に連絡するよう伝えた。長引いた会議が終わって、どうなったかと帰宅するところだった若い先生に訊いた。

 頭部MRI検査を行ったところで、小児科の先生が「あとは全部やりますから」と引き受けてくれた。頭部MRI画像を確認すると、右大脳半球(頭頂葉~側頭葉)に不整な腫瘤と脳浮腫を認めた。

 神経膠腫glioma疑いで大学病院脳外科に連絡して、(一晩当院に入院後)翌日大学病院に転院する手はずができていた。

 症状の経緯は、1か月前から右半身不全麻痺があり、鍼灸院に通院していたそうだ。筋骨格系の問題と思ったのだろう。鍼灸院では頚椎症と判断したのだろうか。マッサージをしてどうなるものでもないのだが。

 

 

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一瞬コロナかと頭をよぎる

2020年04月20日 | Weblog

 午前中に、内科医院から心不全の71歳男性が当院の循環器科に紹介されてきた。大動脈弁閉鎖不全症があり、EF24%と心機能が著しく低下していた。

 普段の処方は降圧薬4種類と高尿酸血症の処方だけで、血圧は180/80と高く(ARで脈圧↑)、利尿薬の処方はないので、まずラシックス静注で利尿がつけばいけそう?(非専門医の感想)。

 お昼に会った時に、「いやあ、何でもコロナウイルスの影に見えちゃうよ」と言っていた。鑑別に困るということではなくて、一瞬頭をよぎるという意味だ。まあ、この時期は仕方ないか。これで、特発性間質性肺炎の患者さんが来たら、鑑別できなくて途方にくれるかもしれない。

 心電図では正常洞調律でstrain patternを呈するLVHの所見がある。胸部X線・CTでは心拡大・胸水貯留・(肺門部から広がる)肺うっ血を認める。WBC6500・CRP1.2で、BNP1068と著明に増加していた。これは心不全で問題ないだろう。

 

 

 金曜日に80歳代男性が高熱で救急外来を受診した。右肺門部肺癌と肺気腫(喫煙継続中)があり、肺炎を併発していたが、気腫性変化に浸潤影が被るので間質影様に見えなくもない。当直の眼科医がコロナウイルスではと慌てたそうだ。

 疫学的にも、画像としても違うと思うが(100%の否定はできない)、入院した時に疑い例扱いになったので、今日PCR検査を提出した。セフトリアキソンで解熱軽快しているが。

 

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CareNeTV Dr.岡とDr.渋江のプレチナセッション COVID-19公開症例検討

2020年04月19日 | Weblog

CareNeTV
Dr.岡とDr.渋江のプレチナセッション
COVID-19公開症例検討

岡先生と、実際にクルーズ船のCOVID-19患者を診療した横浜みなと赤十字病院感染症科・渋江先生の講演。

 

症例1.はCOVID-19の軽症例、症例2.はCOVID-19の重症例、症例3.はCOVID-19との鑑別 緑色は先生がたのつぶやき

症例1. 69歳女性 発熱・咳嗽
・クルーズ船旅行中に、2/Xに咳嗽出現
2/X+1に38℃台の発熱が出現して、
2/X+4にSARS-CoV-2 PCR検査し、
2/X+6に陽性と判明して当院へ搬送

・BP128/60mmHg、P76/分、RR16/分、BT37.2℃、SpO2 95%(室内気)
・併存疾患・既往歴:特記なし
・ROS+:発熱、悪寒、咳嗽、倦怠感、筋肉痛、下痢

・身体所見:シックさはあまりない、眼瞼結膜蒼白なし、口腔内特記なし、胸部所見・腹部・背部・四肢に特記なし、皮疹なし
印象は通常の感冒
倦怠感も他疾患と違いはないか

血液・生化学検査:WBC7200、SEG70%、LYN22%、EOSINO0.2%、PLT13.4万、T-bil0.5、AST22、ALT12、LDH200、BUN12、Cr0.6、CRP2.6、glu123mg/dl
この身体所見で検査をするか?→通常は感冒として帰宅にするだろう
COVID-19の可能性はあるので、経過をみて改善しない時は連絡してもらう

胸部X線:右中肺野淡い陰影
軽症でも肺炎像があるのが特徴
通常感冒と思っても胸部X線をとるべきか→今どきは検査の閾値を低くする
胸部CT:両側肺(右S2、左S1+2、両側S6、S9-10)末梢の背側優位に汎小葉性の分布の斑状のGGOが散在
片側でもCOVID-19は否定できないが、片側に浸潤影だとらしくない

COVID-19
<臨床像>
・集中治療を要する症例では死亡率は5割
・平均的な死亡率は0.7%~高くて2%
・ただし80歳以上の高齢者では15%程度の死亡率と高い
・死亡者の多くが高齢者、心疾患や糖尿病を有している
・臨床症状は初期には4割ほどしか発熱しないことも多いものの、肺炎があれば経過のなかで9割に発熱あり
・咳81%、息切れ31%と呼吸器症状が主体
-加えて、筋肉痛や倦怠感
-喀痰は27%と目立たない
-鼻汁や消化器症状はまれであるが、少数ではみられる

経過をみて流れの中で診断をつける。特異的な症状がない

身体所見のどこに注目する?
・最も診断に有用なのは呼吸数
高齢者ではRR>24はとくに有用
・体温<37.8℃、HR<100/分、RR<30/分
肺炎の確率はかなり低下(陰性尤度比0.18)
COVID-19では通用しない

Heckerling score
・体温37.8℃以上
・心拍数100/分以上
・Crackleがある
・呼吸音低下がある
・喘息がない
合計0-1だと肺炎の可能性は1%以下
COVID-19では通用しない
当てはまれば、むしろ市中肺炎を考える

<診断>
・WBCは90%が正常から低下
-リンパ球数低下が35%で低下
-初期からWBC上昇しているとらしくない
・CRPは多くは上昇し、5程度上がる
-あまり高いとらしくないかもしれない
・プロカルシトニンは6%でしか上昇しないため、除外診断に有用な可能性

・WBC24%で低下、9%で上昇
・リンパ球は35%で低下
・LDHが76%で上昇
・軽度の肝障害35%
・腎障害13%
・CRP平均5mg/dlと上昇 86%で上昇
・PCT6%で上昇
(Lancet Jan 29,2020)
他のウイルス性肺炎、間質性肺炎と鑑別困難!

WBC↑
好中球↑
リンパ球↓
LDH↑
D-dimer↑
が重症化リスク

<治療>
・確立した有効な治療はない
・試験管内の効果からロピナビル・リトナビル、ファビピラビル、Remdesivir、クロロキン、トシリズマブが期待されている
・対象れ用法はイブプロフェンを避けてアセトアミノフェンの処方が無難かもしれない

重症化を見抜くには
・発熱は長引く
・呼吸数の増加
・酸素飽和度の低下
・検査所見の悪化
・画像所見の悪化

<予防>
・接触、飛沫感染予防策を行う
→流水またはアルコールの手指衛生、顔を極力触らない、咳エチケットが大切
・支柱において無症状者のマスク着用は感染予防のエビデンスに乏しく、不要なコストと必要時の供給不足を招くためCDCは推奨していない
・症状がある患者とそのケアをするものはサージカルマスクを着用
・採痰、気管挿管、NPPV、気管支鏡
実施、CPRなどエアロゾル発生の恐れがある場合にはN95マスク、フェイスシールドを着用
・ただし物品が十分でない場合にはN95マスクは必須ではなく差0時かるマスクで代用可

発症者
・隔離予防の解除は、臨床症状の消失と2回の気道検体からのPCR陰性が目安
・軽快後、24時間後のPCR陰性
・さらに24時間後のPCR陰性
・感染管理管理の責任者と相談のこと

 

症例2 69歳男性 発熱、咳嗽、呼吸困難感
・クルーズ船旅行中に、2/Xに発熱・咳嗽出現し、徐々に呼吸困難感が増悪した。
2/X+6にSARS-CoV-2 PCR検査提出(咽頭拭い)し、同日当院へ搬送となった。
・BP118/72、P78/分、RR18/分、BT38.2℃、SpO295%(O21L/分カヌラ)
(一見軽そうに見えるのが特徴)
・併存疾患・既往歴:糖尿病(食事療法のみ)
・ROS+:発熱、咳嗽、呼吸困難感
身体所見:シックさはあまりない、眼球結膜蒼白なし
口腔内特記なし
胸部:右側胸部でlate inspiratory cracklesあり、腹部・背部・四肢特記なし 皮疹なし
血液・生化学検査:
WBC3100、SEG 72%、LYN 20%、EOSINO 9%、PLT9.8万/μL、PT-INR 1.01、APTT31.9秒、D-Dimer 0.6μg/mL、T-bil 0.6mg/dL、AST 67、ALT39、LDH 521BUN 12mg/dL、Cr 0.6mg/dL、CRP 3.7mg/dL、glu 154mg/dL、HbA1c 7.1%
胸部X線:右中肺野に浸潤影
胸部CT:右肺S2にcrazy paving patternを伴う汎小葉性のGGO
(マスクメロンの皮のような陰影)

宿主
・バイタルサインは?
-急性?慢性?市中?院内?
-既往歴、基礎疾患は?抗菌薬使用歴は?
-免疫不全の関与は?
-病原体暴露の可能性は?
(渡航・出身、動物、食事、趣味、仕事、Sick contact)

市中肺炎の起炎菌
1.肺炎球菌
2.インフルエンザ菌
3.モラキセラ・カタラーリス
4.マイコプラズマ
5.クラミドフィラ
6.レジオネラ

インフルエンザウイルス後
→黄色ブドウ球菌
・糖尿病、肝疾患、アルコール多飲
→クレブシエラ
・動物接触
→オウム病、Q熱、野兎病、パスツレラ
・気管支拡張、嚢胞性線維症、好中球減少
→緑膿菌

この症例は、入院時の咽頭拭い液SARS-CoV-2のPCRは陰性

新型コロナウイルス2019
<診断>
咽頭よりも鼻咽喉の方がウイルス量が多い
PCRは鼻咽喉スワブまたは喀痰をエアロゾル対策のもとで採取
・気道検体が取れない場合には便や尿も検体になる
実際には明らかなウイル性肺炎像を呈して、初期のPCRは陰性で、のちにPCRが陽性となりうる

経過:
第6病日入院
セフトリアキソン+レボフロキサシンで開始

第12病日
酸素化増悪O2 5L/分
WBC 3700、neut 80↑ 、Lymph 16↓、AST 53、LDH 376、CRP 12↑
ロピナビル・リトナビル開始

・シクレソニド 200μg1日2回1回2吸入14日間
あるいは
・ロピナビル・リトナビル2錠1日2回14日間
※薬剤相互作用の注意、HIV検査陰性を確認
(HIV陽性者にHIVの薬を単独使用すると耐性化)
いずれの場合も適応外使用である
ロピナビル・リトナビルの重症肺炎に対するRCTは声明予後の改善は証明できずウイルス量の減少も差はないが、1日ほど改善が早い
消化器症状による中断が多かった

第13病日の鼻咽頭拭い液PCR陽性

・実際には明らかなウイルス亜飛円像を呈しても、初期のPCRは陰性で、のちにPCRが陽性となりうる
・重症例で疑いが強ければ、PCR検査は繰り返してもよい
-気道検体を複数箇所採取してもよい
-1回では51%しか陽性にならず
-3回目で11%陽性になる

第17病日 
酸素化増悪O2 15L/分
WBC 4800、Neut 89、Lymph 6、AST 30、LDH 450、CRP 21
人工呼吸管理へ(転院)

重症化のパターン
発症から7日くらいの経過で症状が増悪し、数日のうちにARDSになる
肺炎の回復には2週間程度、重症なら3~6週間要す

 

症例3 40歳女性(医療従事者)発熱、咳嗽
・3/Xから頭痛がありその後発熱が出現し、近医受診して感冒と診断されてロキソプロフェン、デキストロメトルファンが処方された。
改善せず、38-39℃台の発熱が持続し、3/X+2で再度受診してガレノキサシン、バロキサビル・マルボキシルが処方された。
発熱が持続して3/X+3に精査目的に当院受診。
とくに渡航歴、シックコンタクトなし
・BP 128/60mmHg、P 76/分、RR 16/分、BT 37.2℃、SpO2 95%(室内気)
・併存疾患・既往歴:特記なし
・ROS+:発熱、悪寒、乾性咳嗽、頭痛
・ROS-:咽頭痛、鼻汁、鼻閉、下痢、嗅覚・味覚障害
・身体所見:
シックさはあまりない、眼球結膜蒼白なし、口腔内特記なし、
胸部:左側胸部にinspiratory crackles、腹部・背部・四肢特記なし、皮疹なし
血液・生化学検査:
WBC 4400、SEG 58%、LYM 29%、EOSINO 0.7%、PLT 31.3万/μL、T-bil 0.3mg/dL、AST 28、ALT 33、LDH 238、BUN 7.9mg/dL、Cr 0.6mg/dL、CRP 16mg/dL、glu 105mg/dL
胸部X線:左下肺野に浸潤影
(COVID-19との鑑別のためCT施行)
胸部CT:左肺S9末梢に浸潤影
陰影が片側で浸潤影=COVID-19らしくはない

非定型肺炎疑い
1.年齢60歳未満
2.基礎疾患がないor軽微
3.頑固な咳
4.胸部聴診上で所見が乏しい
5.痰がない、迅速キットで原因不明
6.末梢白血球10000/μL未満
4つで特異度93%

・尿中肺炎球菌抗原陽性でキノロン継続とした
・その後マイコプラズマ咽頭拭い液陰性、SARS-CoV-2のPCR陰性判明(医療従事者のため検査)
・数日以内で解熱して改善した

ガードを固めて、正しく恐れる
そして、いつもの風邪、肺炎診療の応用だ

すべての気道感染症に対してCOVID-19の可能性を考えて対応する

感染臓器
発熱+α
-発熱+咽頭痛
-発熱+頭痛
-発熱+下痢・・・etc
発熱+αがない
-尿路(腎盂腎炎、前立腺炎)
-肝・胆道系(肝炎、胆管炎)
-胸膜炎(膿胸含め)
-初期のカンピロバクター腸炎
-皮膚・軟部組織(蜂窩織炎、足壊疽)
-感染性心内膜炎、菌血症
-リケッチア、レプトスピラ、輸入感染症(マラリアなど)
・ウイルス性疾患
※ROSなど病歴をしっかりと訊くことが大前提

Modified Centor Score(細菌性咽頭炎)
・38℃以上の発熱 1点
・咳嗽なし 1点
・前頸部リンパ節腫脹・圧痛 1点
・滲出を伴う扁桃腫脹 1点
・年齢15歳未満 1点
・年齢45歳以上 -1点
RSAT(Rapid Streptococcal antigen test)陽性

まとめ
COVID-19は症状のバリエーションに富んでおり、症状経過・所見など総合的な判断が必要
疑ったら接触予防策+飛沫予防策が基本だが、すべての患者対応に標準予防策は必要
発熱以外の+αからCOVID-19以外の疾患も考慮し、思考停止しない

 

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急性虫垂炎

2020年04月18日 | Weblog

 木曜日に隣町の診療所から、急性虫垂炎疑いの42歳男性が紹介されてきた。紹介した若い先生は自治医大出身で、3月まで当院に勤務していた。義務年限の地域医療を絶賛遂行中になる。

 前日の午後10時から心窩部痛が出現して、下痢便(軟便程度)が2回出た。その後に嘔気・嘔吐もあった。翌日に診療所を受診して、身体診察で虫垂炎疑いと判断された。

 当院に4月から来ている若い先生(自治医大出身で初期研修終了後)が対応した。血液検査では白血球19400・CRP1.2と発症半日ちょっとに相当するような炎症所見だった。腎機能を確認して、腹部造影CTを行っていた。

 検査終了後に連絡がきた。軟便があったことと、CTで小腸壁が軽度に肥厚して消化液貯留があることから、腸炎かもと思ったらしい。下腹部全体に圧痛がありますという。

 診察すると、圧痛は右下腹部に限局して反跳痛もある。CTを確認すると、腫大した虫垂と周囲脂肪織の炎症像を認めた。虫垂炎でいいので外科と相談だと思っていると、放射線技師さんから若い先生のPHSに連絡が来て、虫垂炎のようですと言ってきた。若い先生が勤務し始めて間がないので、指摘してくれたようだ(技師さんは地域の基幹病院に勤務する先生の奥さん)。

 定年延長(3年)も終了して、今年から非常勤になった放射線科医が来ていたので、一緒に行って相談した。診察してCTを行う→放射線科医に診てもらってCT像を確認する→外科医に相談する、という流れを今回は一緒に行った。

 放射線科の向いにある救急室で、その日の外科当番の先生を確認しようとしたら、ちょうど救急搬入された高齢男性を診察していた。若い先生にプレゼンテーションしてもらって、外科で入院にしてもらった。一過性意識障害で救急搬入された患者さんは内科で引き継いで診ることにした。

 金曜日に無事手術(虫垂切除術)が行われたようだ。

 診療所の先生と4月からの先生は自治医科大学の2学年違いになる。初期研修後の数年は技量が大きく伸びていく期間で、指導する方も責任がある。

 

  

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非けいれん性てんかん発作

2020年04月17日 | Weblog

 糖尿病・高血圧症・脂質異常症で通院している現在82歳男性。2年前の外来予約日に娘さんがいっしょに診察室に入ってきた。普段は患者さんが一人で診察室に入ってくる。これまでも、病院の送り迎えは娘さんがしていたそうだ。

 診察室に入ってきた娘さんは、認知症ではないかと言った。その前年から、活動量が減少して、ずっとぼんやりしていておかしいという。薬のせいではないかとも言っていた。

 確かにこれまでも受け答えには無関心な印象があった。名前を呼ぶと診察室にちゃんと入ってくるが、自分から話すことはない。血糖値の説明をすると、そうですかと言うだけで、さっと帰ってしまう。

 年齢的には認知力障害なのかという気もしていたが、一番忙しい外来日なのでそのままになっていた。頭部MRI検査では軽度のの王委縮があり、長谷川式は21/30点だった。娘さんの希望で、神経内科外来に紹介した。

 神経内科外来受診時に意欲の低下・反応性の低下を認めて、さらに診察時にボーッとして反応がない状態があり、てんかんが疑われた。

 脳波検査で左前頭部に律動性δ波・単発性sharp waveを認めて、局在性てんかんと診断された。抗てんかん薬(イーケプラ1000mg/日)が開始されて、症状は改善した。非けいれん性てんかん発作と診断確定された。

 その後の外来でも、血糖の結果を聞くと、そうですかと言ってすぐに帰ってしまうのは変わらないが。

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新型コロナウイルス感染症の肺炎

2020年04月16日 | Weblog

 昨日、新型コロナウイルスPCR検査で陽性となったの50歳代後半の女性が紹介されてきた。コロナウイルス感染者の濃厚接触者として、PCR検査が行われただけで、胸部X線や血液検査は受けていない。自覚的にさほどの症状を訴えないので、軽症と判断されたのだろう。

 微熱・咳で発症して8日目になり、軽症で経過するか重症化するかの境目にあたる。最初に胸部X線・CT像を行ったところ、両側肺野に広範なすりガラス様陰影を呈していた。左下肺野の一部は浸潤影になっていた。

 酸素飽和度80%(室内気)で、酸素吸入3L/分を開始して飽和度93%になった。その後90%をきって酸素吸入5L/分を要した。中等症から重症へ移行する段階で、ここから一気に人工呼吸管理になる寸前と判断した。保健所を通して県と交渉して、高次医療機関への救急搬送となった。患者さんの病院滞在時間は2時間。

 実際に初めて見た新型コロナウイルス感染症の肺炎像。

 

 当院では、軽症(酸素吸入不要)から中等症(酸素吸入5L/分未満、または重症化因子あり)まで引き受けることになっている。呼吸器内科のない病院なので、重症(酸素5L/分以上、人工呼吸、ショックなど)は高次医療機関に搬送する。

 5L/分で区切っているのは、この疾患では急激に低酸素が進行するので、そこからすぐに酸素量が増加して人工呼吸管理になるからという。

 患者数が多くなって重症者を搬送できない状態になれば診るしかないが、県内の状況はまだ搬送する余裕はある。

 濃厚接触者としてPCR検査を受けて陽性になった場合は、自覚症状は確認するのだろうが、他の検査なしで入院先を決めているようだ。今後はホテルなどで経過をみることもあるようだが、重症度判定なしで経過をみているうちに急変する可能性がある。

 発症1週間目に胸部X線(できれば胸部CT)で肺炎の程度を確認する必要があると思う。

 

 搬送後は、内視鏡的胃瘻造設を行って、夕方に保健所からの依頼でPCR検査を行った。診療の幅が広いというか、本当になんでも内科。

 

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閉塞性腎盂腎炎

2020年04月15日 | Weblog

 昨日の午後に隣町の診療所から、腎盂腎炎疑いの79歳女性が紹介されてきた。発熱38.7℃。確かに尿混濁・炎症反応上昇を認め、肺炎など他疾患が否定的だったので、急性腎盂腎炎でよかった。

 ただ、CTで右尿管結石を認めて、右水腎症を呈していた。閉塞性腎盂腎炎なので、泌尿器科エマージェンシーになる。当院の泌尿器科は非常勤だけなので、紹介になる。

 地域の基幹病院泌尿器科に連絡した。新型コロナウイルス感染症の影響で発熱外来扱いになることや、今後コロナウイルス感染症の患者受け入れがあって、言われた。ここは診ていただくしかないので、食い下がって頼み込んだ。何とか受け入れてもらえて、救急搬送した。ありがとうございます。

 新型コロナウイルス感染症を扱う病院でいいか、家族に確かめてくれという(まだ入院はないはず)。家族を呼んで、先方はこう言っているが、すぐに専門医に診てもらわないと(尿管ステントなどの処置)敗血症性ショックになる可能性があると伝えて、強引だが了解を得た。

 コロナウイルス感染症入院に備えて病棟を改変しているそうで、頼りにしている通常の重症疾患の受け入れが難しくなるのは痛い。

 

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高血糖

2020年04月14日 | Weblog

 金曜日の夜間に85歳女性が救急搬入された。夕食後から嘔吐・下痢(水様便が)が続いて、一時的に意識低下した。

 搬入時は意識は戻っていた。血圧145/101mmHgと血圧低下はなかったが、自宅では低下して横臥によって回復したのかもしれない。

 市内の内科医院に心房細動・高血圧症・心不全・糖尿病で通院していた。血糖は460mg/dlと高く、HbA1cも9.9%だった。当直の外科医(女性医師)は点滴を開始して、まずヒューマリンRを8単位皮下注して、生食50ml+ヒューマリンR50単位の点滴静注を開始していた。

 土曜日の日直で病院に来た時に、入院したことを聞いた。朝の血糖が69mg/dl(病棟での簡易血糖測定では60mg/dl)と低下したと病棟からの連絡があり、50%グルコース20mlを静注したという。

 土曜日に日直の時は金曜日の内科当番を兼ねることにしている。当直医が外科医でも、内科疾患で入院した患者さんの朝までの指示治療をしてもらえるのはありがたい。

 土曜日の午前中は内科医院は診療を行っているので、当直医が電話で普段の血糖を問い合わせてくれた。院長ではなく、大学病院から来ていたバイト医が出た。当地域随一のご盛業なので、土曜日はバイトを頼んでいるのだった。

 最近は随時血糖300mg/dl・HbA1c8~9%で血糖コントロールは悪かったそうだ。悪いとは思っていたが、具体的にどうしようかと思いながら、そのままになっていたということか。

 脱水症による急性腎前性腎不全になっているので、点滴してもらったのはよかったが、インスリンは皮下注だけでよかった。検査上に高浸透圧高血糖症候群にも当てはまらないので、急激な血糖低下はけっこう危険になる。

 例の高血糖クライシス時の生食50ml+ヒューマリンR50単位は(ヒューマリンR50単位=0.5mlを引いた、生食49.5mlにするとプロっぽい)、糖尿病性ケトアシドーシスで5ml/時高浸透圧高血糖症候群で2ml/時になる。どちらの場合も補液が優先される。

 いったん点滴をソリタT3・500mlにして、血糖が200mg/dlちょっとに戻っていた。食事摂取はできるので、点滴はグルコースを含まないヴィーンF(ソルアセト)500mlにして脱水症の治療を継続した。

 内科医院の治療はDPP4阻害薬だけだったので、土曜日の昼から再開した。とりあえず、インスリン量少な目の強化療法(トレシーバ3単位+ヒューマログ2~4単位のミニスライディング)として、週明けまで経過をみることにした。

 月曜日の検査では脱水症は軽快しており、その日までで点滴は終了とした。空腹時血糖が140mg/dl、昼夕の血糖が200mg/dl前後になっている。

 高齢なのと、今回脱水症で入院したことを考えると、SGLT2阻害薬は使用し難い。外注検査で血清Cペプチドを提出した。自己インスリンがある程度出ていれば、DPP4阻害薬+持効型インスリンのBOTを目標にする。

 夫と二人暮らしで、ご本人は認知症があるが、夫はしっかりしているので、1日1回のインスリン注は頼めそうだ。インスリン注射無理となれば、DPP4阻害薬+SU薬極少量にするしかない。

 

 

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CareNeTVプラチナレクチャーCOVID-19特講

2020年04月13日 | Weblog

 CareNeTVでの岡先生のCOVID-19特講を繰り返して視聴した。これまでのプラチナレクチャー同様に歯切れのよい講義でわかりやすい。岡先生の病院は指定病院ではないので、鑑別のコンサルトをされているそうだ。さらに繰り返して視聴する予定。

 

CareNeTV
Dr.岡のプラチナレクチャーCOVID-19特講

ガードを固めて、正しく恐れる
そして、いつもの風邪・肺炎診療の応用だ

2020年3月現在 新型コロナウイルス感染症は指定感染症となっている

指定感染症
(感染症法第6条)
既に知られている感染性の疾病(1類、2類、3類および新型インフルエンザを除く)であって、感染症法上の規定の全部または一部を準用しなければ、当該疾病の蔓延により国民の生命及び健康に重大な影響を与える恐れがあるものとして政令で定めるもの

指定感染症になると
メリット
・法的な拘束力
・指定医療機関での診療
・医療費の公的負担
・流行状況の把握が容易
デメリット
・指定医療機関の負担
・患者プライバシー

新型コロナウイルス2019(COVID-19)
<特徴>
・コロナウイルスには感冒の原因になる4種類に加え、SARS、MERSが知られていた
・新しく見つかった王冠を意味する7つ目のコロナウイルスである
・ACE2レセプラー(肺)を介して感染する

新型コロナウイルス名称
病名:COVID-19
COrona VIrus Disease 2019
原因ウイルスはSARS-CoV2

2019年末
中国武漢を発端に中国各地、日本、韓国、イタリア、イランなど各地に感染拡大し欧州・米国でも流行(2020年3月現在)
WHOもパンデミックと認定している

・感染様式は接触飛沫感染により人から人へ感染する
・8割の感染者は他者への感染を起こさず、一部の患者が感染を拡大させているようである
・その要因として、クルーズ船、屋形船、ライブハウスなどの集団感染の事例から閉鎖空間のクラスター感染が懸念されている

・潜伏期間は2-7日、平均4日
 11.5日97.5%で発症 
 最大14日を見積もる
・基本再生産数は1.3-2.5
(麻疹は12-18、SARSは3、インフルエンザが1-2)
・2次感染は濃厚接触者の
 中国の報告で1~5%、米国の報告で0.45%

<臨床像>
・無症状~感冒症状~重症肺炎と幅広い
・80%は軽症にとどまる
・およそ半数で肺炎
・14%で重症化
・5%で集中治療を要するショック、呼吸不全、多臓器不全(心筋炎?、半数は死亡)
※日本におけるクルーズ船の感染では17%でウイルスが陽性であったが、半数で診断時は無症状

・集中治療を要する症例では死亡率は5割
・平均的な死亡率は0.7~高くて2%
・ただし80歳以上の高齢者では15%程度の死亡率と高い
・死亡者の多くが高齢者、心疾患や糖尿病を有している
・小児の発症者や重症者は少ない
・10名の小児患者の経過では発症しても24時以内に解熱し呼吸不全はなし
・妊婦での重症化や先天性感染のリスクは今のところ確認されておらず、羊水、新生児からのウイルス検出なし

・臨床症状は初期には4割ほどしか発熱しないことも多いものの、肺炎があれば経過の中で9割に発熱あり
・咳81%、息切れ31%と呼吸器症状が主体
-加えて、筋肉痛や倦怠感
-喀痰は27%と目立たない
-鼻汁や消化器症状はまれであるが、少数ではみられる

初期には感冒と区別がつかないだろう
接触歴がない場合には経過が感冒より長いことで疑うしかない

重症化のパターン
・発症から7日くらいの経過で症状が増悪し、数日のうちにARDSになる
・肺炎の回復には2週間程度、重症なら3~6週間要する

厚生労働省
新型コロナウイルス感染症診療の手引きより
 風邪症状が3~4日までは、通常の風邪・インフルエンザと鑑別がつかない。(風邪、インフルエンザはここで軽快する)。
 この時期は肺炎、尿路感染症など通常の感染症との鑑別を要する。
 7日~10日で治まらなければ、新型コロナウイルス感染を考える。
 他の肺炎との鑑別を要する

<検査所見>
・WBCは90%、正常から低下
-リンパ球数が35%で低下
-初期からWBC上昇しているとらしくない
・CRPは多くは上昇し5程度上がる
-あまり高いとらしくないかもしれない
・プロカルシトニンは6%でしか上昇しないたまめ、除外診断に有用な可能性

・WBC24%で低下、9%で上昇
・リンパ球は35%で低下
・LDHが76%で上昇
・軽度の鑑賞ギア35%
・腎障害13%
・CRP平均5g/dlと上昇 86%で上昇
・RCT6%で上昇
他のウイルス性肺炎、間質性肺炎と鑑別困難!
(Lancet Jan 29,2020)

・肝障害は35% 腎障害は初期にはまれ
・LDHはたいてい上昇
 Dダイマー上昇、WBC上昇、リンパ球減少とともに重症化のマーカーになりうる

<診断>
胸部X線
・初期には異常を捉えにくい
-胸部X線異常は発症から10日ほどが最も顕著と遅れる
-肺炎の疑いが残ればしっかりした感染予防のもとで胸部CTを検討する
(初期に肺炎像がなくても否定できない)

胸部CT
・症状が顕在化する前やPCR陰性でも病変が検出されることがある
・初期の胸部CTの典型像は下葉優位に胸膜直下がスペアされない両側すりガラス陰影や斑状陰影
・重症例では発症10日ほどが最も悪く見える
・胸水、リンパ腫脹、胸膜肥厚はまれな所見
・ただし画像診断は初期には片側であったり、進行するとARDSになり非特異的
・画像だけで判断しない
・PCR陽性例での感度97%と除外に有用な可能性
・ただし特異度は25%と低い
ゆえに他のウイルス性肺炎、ニューモシスチス肺炎、他の間質性肺炎との鑑別を要する

実臨床では・・・・
・渡航歴、暴露歴のある患者
-インフルエンザ肺炎やマイコプラズマなどの非定型肺炎をまず鑑別
・経験的な治療が奏効しない肺炎
・原因不明の重症肺炎
-鼻咽頭や気道分泌物のPCR検査を行うのが現実的

・咽頭よりも鼻咽頭の方がウイルスぅが多い
-PCRは鼻咽頭スワブまたは喀痰をエアロゾル対策のもとで採取
・気道検体が取れない場合には便や尿も検体になる
・検出率はBALが最も優れ下気道>上気道=便 
・尿は低い

PCR検査について
・疫学調査の目的を除き、本感染症が蔓延した場合に無症状はもちん、軽症者のウイルスPCR検査は行うべきではない
・ウイルスPCRの診断制度はそれほど高くないと考えられており、検査陰性で本疾患を否定できないばかりか陽性で確定しても有用な治療法は確立していない

・PCR検査陰性により
・感染防御がおろそかになるリスク
・検査をすることでかえって感染が拡大するリスク
・患者集中による医療施設の疲弊
・一定数に生じるであろう偽陽性による混乱
・検査コストの問題
 などデメリットが大きい

・実際に明らかなウイルス肺炎像を呈しても、初期のPCRは陰性でも、のちにPCRが陽性となりうる
・重症例で疑いが強ければ、PCR検査は繰り返してもよい
-気道検体を複数箇所採取してもよい
-1回では51%しか陽性にならず
-3回目で11%陽性になる

PCR検査 必ずしも陽性にならない
 検査陽性=COVID-19確定
 検査陰性=疑い
(他疾患がなければ疑いは残る。他疾患との併発もある。)

診断するには?
・発熱83%
・咳81%
・息切れ31%
・筋肉痛11%
今までは、
・渡航歴
・流行状況
・接触暴露歴
を確認して診断できた
インフルエンザや市中肺炎と鑑別困難
さらに、病歴もあてにならなくなる

疑い患者の要件と検査の流れ
・発熱(37.5℃以上)または呼吸器症状 かつ 暴露歴(新型コロナウイルス感染症であることが確定した者と濃厚接触歴がある
・発熱(37.5℃以上)かつ呼吸器症状 かつ 暴露歴(発症から2週間以内に、流行地域に渡航または居住していた又は流行地域の渡航又は居住していた者と濃厚接触歴がある)
・発熱(37.5℃以上)かつ呼吸器症状 かつ 入院を要する肺炎が疑われる
・医師が総合的に判断した結果、新型コルナウイルス感染症を疑う
  ↓
・季節性インフルエンザ検査
・その他の一般的な呼吸器感染症の病原体の検査
  ↓(陰性)
PCR検査の実施について保健所へ相談

ガードを固めて、正しく恐れる
そして、いつもの風邪、肺炎診療の応用だ

肺炎?気管支炎?
身体所見のどこに注目する?
・最も師d何に有用なのは呼吸数
(高齢者では呼吸数>24は特に有用)
・体温<37.8℃、心拍数<100/分、呼吸数<30/分
・肺炎の確率はかなり低下(陰性尤度比0.18)
・ヤギ音が肺炎に特異的
・呼吸音減弱や呼吸音の左右差も重要な所見
・Cracklesが聴取できない肺炎が半分以上

Heckeling scoe
・体温37.8℃以上
・心拍数100/分以上
・Crackeがある
・呼吸音低下がある
・喘息がない
合計0-1だと肺炎の可能性は1%以下

肺炎? 気管支炎?
・バイタル異常
・胸部聴診異常
・免疫不全
いずれもなければ気管支炎
どれかあれば肺炎疑い

市中肺炎の原因微生物
細菌性肺炎
 Streptococcus pneumoniae
 Haemophilus influenzae
 Moraxella catarrhalis
非定型肺炎
 Mycoplasma pneumoniae
 Chlamidia pneumoniae
 Legionella pneumophila
肺炎球菌は常に考慮
 緑膿菌、黄色ブドウ球菌はまれ!

どんな肺炎? 非定型、定型
1.年齢60歳未満
2.基礎疾患がない、あるいは軽微
3.頑固な咳がある
4.胸部聴診上所見が乏しい
5.痰がない、あるいは迅速診断法で原因菌が証明されない
6.末梢血白血球数が10000/μL未満
4項目以上合致した場合、非定型肺炎(感度77.9%、特異度91.0%)

市中肺炎 外来経験治療
・明らかな非定型肺炎
 アジスロマイシン500mg1日1回
 ビブラマイシン100mg1日2回
・通常の肺炎
 アモキシシリン500mg1日3回 
レスピラトリーキノロンは極力使用しない
市中肺炎経験治療 入院
中等症
・セフトリアキソン2g24時間ごと
重症
・セフトリアキソン2g24時間ごと
 +
アジスロマイシン500mgまたは
レボフロキサシン500mg24時間ごと
(+抗インフルエンザ薬も考慮)

市中肺炎効果判定 
 原則72時間後に行う
よくなる順番(重要!)
1.循環(血圧、脈拍)
2.呼吸(呼吸数、SpO2)
3.体温
ここがピットフォール!
・画像所見は最も遅れる
・2週間でも半数は陰影が残る!高齢者は12週間も!
・重症例、複数肺病変、既存の肺疾患、高齢者では反応が遅い
ルーチンな72時間後のX線の再検は必要ない

市中肺炎 治療期間
最低5日間 解熱後2~3日
・バイタル安定化、食事が取れれば経口抗菌薬に切り替え可能
・抗菌薬投与期間中央値
 5日間と10日間で効果に差はなし
・重症例、腸内細菌や緑膿菌、黄色ブドウ球菌ではエビデンス不足
・黄色ブドウ球菌、肺膿瘍、膿胸などでは長期治療

正しく恐れる・正しく備える①
これからは渡航歴や暴露歴によらず
なかなか良くならない風邪
抗菌薬が効かない肺炎
原因不明の間質性肺炎
これらで疑い
隔離予防策を検査結果によらず、継続!
感染症専門医や呼吸器専門医へコンサルトを
PCR陰性でもガードを下ろさない
(繰り返して検査も考慮)

<治療>
・確立した有効な治療はない
・試験管内の効果からロピナビル・リトナビル(カトレラ)、ファビピラビル(アビガン)、レムデシビルRemdesivir、クロロキン、トシリズマブが期待されている
・吸入ステロイドの1つシクレソニド
-抗ウイルス活性があり期待されている
-他の吸入ステロイドにはその効果はない
・ステロイドの全身投与
-効果が乏しいばかりか、MERSにおいてウイルスの排出が遷延したことも踏まえ推奨されない

・診断未確定の軽症者の場合には可能な限り自宅静養、経過観察とする
・対症療法はイブプロフェン(などのNSAIDs)を避けてアセトアミノフェンの処方が無難かもしれない
・マイコプラズマ、細菌性肺炎、ニューモシスチス肺炎のように有効な治療の確立している疾患を見逃さない
・軽症の肺炎は極力入院させず、可能な限り外来治療を行う方がよい

・原因不明の肺炎は初期から接触飛沫予防策のもとでインフルエンザや市中肺炎として経験的治療を開始しつつ
 ↓
・ウイルスPCRを待ち、結果が陽性となり、病状が進行し重症化するようであれば、シクレゾニド、ロピナビル・リトナビル、ファビピラビルの投与を検討することになる(倫理委員会の承認を得て)
-シクレソニド200µg1日2回1回2吸入
14日間 あるいは
-ロピナビル・リトナビル2錠1日2回14日間
※薬剤相互作用に注意、HIV検査陰性を確認
いずれの場合も適応外使用である
ロピアビル・リトナビルの重症肺炎に対するRCTは生命予後の改善は証明できず、ウイルス量の減少も差はないが、1日ほど改善が早い
消化器症状(リトナビル)による中断が多かった
残念ながら・・・エイズの薬は劇的には効かなそう(多少差はある?。すべて重症例での結果。)

治療は?
?ロピナビル・リトナビル
?Remdesivir(エボラ治療薬)
✕?ステロイド
?クロロキン(マラリア治療薬)
?ファビピラビル(新型インフルエンザ治療薬)
現時点で効果が証明されたものはない
基本は支持療法

・現時点では確定例の治療は指定医療機関にて原則行われる
・2次細菌感染は10%程度
・重症化の際には院内肺炎に準じて抗菌薬投与を検討する

<予防>
詳しくはCDC Webサイトを!

感染しないためには
・病気の人と接触しない
・不潔な手で眼、鼻、口を触らない
・アルコールや流水で手洗い

・若年既往のない患者の死亡率は低い
・高齢者や既往のある患者の死亡率が高いことから、医療関連の感染の懸念が大きい

・接触、飛沫感染予防策を行う
→流水またはアルコールの手指衛生、顔を極力触らない、咳エチケットが大切
・市中において無症状者のマスク着用は感染予防のエビデンスに乏しく、不要なコストと必要時の供給不足を招くなめCDCは推奨していない

・症状がある患者とそのケアをするものはサージカルマスクを着用
・採痰、気管内挿管、NPPV、気管支鏡実施、CPRなどエアロゾル発生の恐れがある場合にはN95マスク、フェイスシールドを着用
・ただし物品が十分でない場合にはN95マスクは必須ではなくサージカルマスクで代用可(CDC)

・確定、疑い患者の入院加療の際
-可能であれば陰圧個室
-難しい場合には個室隔離
-適切なPPEの着用(手袋、ガウン、マスク、フェイスシールド)とアルコール手指衛生を行う
-医療器具は専用とし、高度接触面の定期消毒を行う

・濃厚接触者
-PCR結果によらず14日間の健康観察
・発症者
-隔離予防の解除は臨床症状の消失と2回の気道検体のPCR陰性が目安
-軽快後、48時間後のPCR
-さらに12時間後のPCR陰性で退院
-感染管理の責任者と相談のこと

院内感染を回避せよ!
・えっ!新型コロナだったの!?
・うち指定病院じゃないのに?!
・渡航歴あるなら受診拒否?

すべての気道感染(下痢も)に対して接触飛沫感染予防策を

正しく恐れる・正しく備える②
・手指衛生
・経路別予防策の実施
・調子が悪いなら、上司に速やかに相談
今のうちに、復習、見直し、対策を

ガードを固めて、正しく恐れる
そして、いつもの風邪、肺炎診療の応用だ

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偽痛風

2020年04月12日 | Weblog

 1か月前に肺炎で入院した87歳男性は、肺炎軽快後も酸素飽和度の改善が遅かったが、なんとか酸素吸入を止められた。

 認知症で在宅介護は困難となり、地域包括ケア病棟に移動して施設入所待ちになっていた。先週から発熱が断続的にあり、胸部X線では新規の肺炎像を指摘しがたいが、誤嚥性肺炎の再発が疑われた。

 末梢血管が見えにくく、また自己抜去するので、抗菌薬内服で経過みていた。解熱傾向かと思われて、抗菌薬は1週間投与で中止する予定だったが、金曜日にまた発熱した。胸部X線ではやはり明らかな新規の肺炎像は指摘しがたい。血液検査は白血球7700・CRP10.8だった。

 もともと変形膝関節症で整形外科に通院した既往があり、膝関節内に石灰化があった。膝はどうかと訊くと、痛いという。足関節も痛いようだ。触診では両側膝関節に(軽度だが)熱感があり、他動的な屈曲によりはっきり痛みを訴えた。

 話かけないと自分からはしゃべらないが、痛いのは言いそうなものだ。難聴があるので、耳元で大声で話かけても、聞き取れていないので、ただ「大丈夫」としか言わない。

 偽痛風による関節炎として治療することにした。ただし、血清クレアチニン3mg/dl前後の慢性腎臓病CKDがあり、NSAIDsは使えない。CKDがなければいつものセレコックスだが、ステロイドの短期漸減使用にするしかない。

 いつもの、「すぐに使える リウマチ・膠原病診療マニュアル」(羊土社)に記載されている投与法にした。プレドニゾロンを20mg/日を2~3日、10mg/日を2~3日、5mg/日を2~3日、2.5mg/日を2~3日、その後中止となる(あくまで1例で、裏づける文献はないと記載されているので、経験的なもの)。今回は15mg/日からの開始にして、翌日には解熱した。

 

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