Sofia and Freya @goo

イギリス映画&ドラマ、英語と異文化(国際結婚の家族の話)、昔いたファッション業界のことなど雑多なほぼ日記

キドリントンから消えた娘

2014-06-15 09:04:00 | モース&ショーン・エヴァンズ


「キドリントンから消えた娘」は「主任警部モース」のドラマでは通算5話目、1988年に初放送されました。原作の方は1976年初版で、「ウッドストック行き最終バス」に次ぐ2作目です。

実は私はこの原作をまず読み、途中までモースの考える仮説がとてもおもしろいので、これは傑作だ!と読み進んだのですが、ラストが劇的に終わるので、そのシーンの書き方はかっこいいとは思うけど真相の説明が今まで読んだ推理小説のようには親切にまとめてない(キャビプレでアーサーが言ったように、最後にミス・マープルが登場人物を全員一同に集めて犯人を指摘し、事件の真相を語る・・・ってのじゃない)わかったような、でもすっきりしない・・・モヤモヤしたまま最終ページから目を上げたのでした。

そのモヤモヤを晴らすべくドラマも見ました。ここで私は自分の行動に驚きました。だって読んだのは日本語で、それでもよくわからないからって、英語のドラマで解決しようって順序が逆。(笑)

見た結果、登場人物、ストーリー共にドラマは原作からのマイナーな変更が多いことが発覚し、結局ふたつ別の話を追ったようなことになってしまいました!そしてドラマの方がまとまって親切でした。

原作では、モースが仮説を何度も組み立てるのです。まったく別の大筋で。そのひとつが証拠の発見により立証されないと、次の仮説を・・・というように進行するのです。まるでシャーロックの飛び降りトリック解明のように、どれが本当だかわからなくなりどうでも良くなって来たりして(笑)。

それは私の知能の問題なので置いておくとして、別の原作(日本語訳)とドラマの違いについての感想を書きます。

まずこの日本語訳は、翻訳調ではなく文章が自然なのでとても読みやすいです。ドラマではよくわからない、モースやルイスが考えていること、感じていることが細かく出て来て、お互いにブツクサ言いながらも仕事では精神的にも必要としていることがよくわかります。その二人のどちらの考えにも共感することが多く、私は自分の内面はオジサンなのではと危惧してしまいます。

ただ訳者の大庭忠男という人はエラリー・クリーンなども訳しているのですが、生活に密着したチップスとか庭とか家とか中の間取りの名称などをよくご存知でなく間違いがあると思います。でも話の展開には関係ないので訳本の世界ではそれはOKなのかな。例えば、「テラスつきの家」という日本語では、「大きめのテラス(ベランダ/バルコニー)が目につく一軒家」を想像しないでしょうか?でも原語が「terraced house」だという可能性があります。だとしたら、それは道沿いに何軒も繋がったタウンハウスのことで、両隣とは壁を共有している家です。つまり高層マンションや団地ではないけれどある意味集合住宅で、労働者階級が主に住んでいる家、とその雰囲気が想像つくのです。

それだけが原因ではないでしょうが、このお話の場合、原作ではロンドンのSOHOはストリップ劇場、娼婦、ゴミ処理場など汚く怪しい部分も出て来て、モースは今回の事件を渋々引き受けているし、モースの内面の高尚な部分と淫らな美しい女に引かれる部分との葛藤もあり、ダークな感じがしたんです。

ところがドラマの方だと、オックスフォードの私立女子校、美人の副校長、大きな庭付きのお屋敷とモダンな家具、など壮麗な部分の印象の方が強く、(ストーリー中、別の公立学校との対比が必要だったのですけど)中産階級の話だったんだ、と思ったのです。ドラマでは話の変更もあるから描かない部分があるとはわかりますが、原作では私が読んで壮麗なオックスフォードを想像することができなかったのは私の読解力のせいなのかなあ。。。。(ちょっと翻訳に何かしらの原因はないのかなあ、と人に責任を押し付けようとするあがき)



外国作品を紹介する上で、日本の読者に間違った印象与える要因として、本の装丁もあると思います。
一番上の抽象画の表紙は、ハヤカワ・ポケット・ミステリーのシリーズで揃ってるから仕方ありませんが、文庫版の表紙絵も日本版のオリジナルのようです。



この家の絵も、本を読み終わった後に何を意味するのか謎で、オックスフォードは平坦な町でこういう切り立った崖の上の家はないと思うしもちろんロンドンにもこのような家はない。少女の失踪・殺人事件という怪しい雰囲気をこめた?

対して英語版の方はこうです。

1976年ハードバック

学校の昼休みに制服を着た生徒が失踪した事件をこの絵は語ってます。

1977年ペーパーバック

上の秤は法廷ものの話のシンボルで、下はオックスフォードを象徴する典型的な写真でモースドラマでもおなじみ。

現行のペーパーバック

オックスフォードには自転車が多く、その駐輪が乱れた夜の路地で、端正な町の暗い面を語ってますよね。

英語の本も特別な写真/絵じゃないですけれども、本の内容に合ってます。日本版もせめてそれくらいはしてほしいと思います。

最後にドラマが華麗な印象を残した原因の一つ、学校の制服姿のエリザベス・ハーレーのシーン