今年も3月19日から27日まで、ファッションウィーク福岡(FWF)2016が開催される。
福岡アジアファッション拠点推進会議が主体となり、事業費は福岡市や福岡県、福岡商工会議所などが支援するものだ。
ただ、昨年の例で言うと、福岡市が拠出する資金は、「コンテンツを核とした国際ビジネスの振興」予算枠の中の「クリエイティブ関連産業の振興」として、約3373万円が拠出されている。
ファッションウィークと言っても、神戸市が行っているものとは似て非なるものだ。福岡には「テキスタイル」や「アパレル」といった産業がそれほどあるわけではない。だから、メーン産業である「小売り」を主体とした、特に都心部の天神や博多駅とその周辺エリア向けの客寄せイベントに過ぎない。
なおかつ、福岡市から拠出される3000数百万円のすべてが、この事業に使われるわけではない。ファッションウィークのしんがりを務める福岡アジアコレクション(FACo)を含めて2000万円程度が費やされているのではないかと推測される。
行政が拠出する予算は税金なのだから、市民感覚からすれば、決して少ない額ではない。きちんとした事業目的やコンセプト、成果があればいいのだが、それが明確でないところもこの事業が問題とされる部分だろう。
事業自体は、企画の段階から代理店に丸投げされているし、その代理店がファッション業界、特に小売りの実態や販促ニーズを把握しているわけでもない。結果、客寄せイベント程度の企画に落ち着いているのが実情だ。
昨年までは、物議を醸した問題事業「かわいい区」の予算も活用されていたが、今年はそれもない。例年、大した成果も上がっておらず、成果の検証もいい加減だ。
公共事業全体の予算が削減傾向にあるので、今年は一般から企画を募集する有り様だった。それがどんな理由で作用され、どんな目的で実施されるか。詳細が広報されていないのでわからない。
専用サイトを見ると、昨年の動画を使った告知がされている。大学生の企画なども盛り込まれている。おそらくこの辺りが目新しいものだろう。今年は天神や博多駅の商業のほとんどが協賛(ミーナ天神は不参加、ビブレも不参加だが、イオンショッパーズ福岡店が参加)している。これはこれまでにはなかった傾向だ。
http://fwf.jp/
各社は春物の実売期に入っているので、館ごとに販促をかけている。だから、本筋の企画としては、それらをファッションウィーク福岡(FWF)が大々的に告知化して、相乗効果を狙う程度の内容に落ち着いたようである。
つまり、告知をするには、メディアの力を借りなければならず、今年は新聞社、テレビ局、ラジオ局、フリーペーパー、Webなど、地場で活動するところがほとんどが後援している。これもこれまでになかった特徴ではないか。
後援が実際のスポンサードなのか、それとも単なる名前貸しかどうかはわからない。スポンサードする上では、メディア側にもファッションウィーク福岡(FWF)を取り上げることで企画枠や特番を組み、スポンサーを捉まえられるとの算段があるだろう。
では、集客のための「ギミック」=仕掛けはいったい何なのか。それが今イチハッキリしない。一応、天神のきらめき通りを利用したファッションショーなどのイベントがあるようだ。
まあ、天神か、博多駅かで、イベントをしかければ、買い物客は寄ってくる。しかし、一方で、どちらかに位置する商業施設からは反発を受ける可能性は無きにしもあらずだ。協賛金は取られときながら、大量動員の恩恵は受けられないでは、済まされないからだ。
企画立案がパッとしない中で、そうした利害調整が水面下で行われ、事業資金は福岡アジアコレクション(FACo)分も確保しておかなければならないため、こうした内容に落ち着いたと類推できる。
メディア各社を協賛させたのも、そうした課題に批判の矛先が向けられないためだろうか。
結果的に各社各様のミ二イベントに個別のイベントが玉石混合、細切れで合わさることで、本当に大々的な集客が図れるのか。また、天神や博多駅の周辺エリアで店舗展開する一般参加店がどれほどあるのかである。
特に一般店舗の参加は、主催の福岡商工会議所、行政とて気になるところだ。しかし、サイトでは3月9日現在、天神他、大名や今泉、薬院、警固などで123店舗。これはファッション、ビューティだけでなく、飲食店も含まれ、中には日本料理や焼鳥店もある。
ファッションウィークと言っておきながら、一般店の賛同を取りつくろうために何でもかんでも勧誘する。逆に考えると、純然たるファッション専門店への販促効果がなく、ファッションウィークへの期待の薄さを露呈するものだろう。
一般参加店を増やしたいなら、事前に店舗や品揃えを取り上げておかないと、プロモーション効果はない。各店とも春の商戦が絡むわけで、イチ押しの商品をピックアップし、売りにつなげてあげることが天神や博多駅周辺の個店へのフォローとなる。
店舗選択の公平性は、どれだけの店舗が前向きに自店や商品をアピールしたいか。そのやる気で判断すべきだ。また、アパレルメーカーやお客さんの推薦があってもいいはずである。そんなものはSNSを利用すれば、どうとだってできる。
当然、主催者側が店に入っていくことも必要になる。準備期間は昨年秋からあったはずである。それが元締めの仕事、地元ファッションを理解している人間ならできるはずだし、やらなければ福岡のファッションにとって何の意味も無い。
ところが、実態はどうなのか。天神地区や博多駅地区のイベントが盛り上がるほど、周辺にはお客が流れないのは、過去2回のイベントでも経験済みのはず。
しかし、それでは公共事業は通らない。何より福岡市は決算説明で、成果・実績を公開する。27年度の資料では「参加店舗260店・社」とあり、今年の目標は300社以上と掲げる。これをクリアするために、主催者側はギリギリまで勧誘を続けるつもりだろうか。それとも、行政お得意の名前だけ借りて、数字を水増しするのか。
どちらにしても、大儀なき事業であるのは確かだ。「盛り上がった」「好評をいただいた」というのは、何も持ってそう言えるのか。全く根拠を欠くし、客観的なデータを示しての説明は何一つ無い。
「今年は予算が減ったから、大掛かりなものはできない」では、理由にならない。ただ、何でもイベントができればいいという企画は継続しているのだ。
器を用意したから、勝手に参加してくださいとは、あまりに高圧ではないのか。そんなことをやってて商工会議所の組合員や繊維部会のメンバーが増えるはずはないのである。
福岡アジアファッション拠点推進会議では、昨年秋から企画を募集し、準備を重ねて来ているように言っているが、その結果がこれではあまりに薄っぺらい。まして、ファッションウィークと言っときながら、それを口実にメディアやイベント事業者が潤うに過ぎないような内容である。
ところで、メーンビジュアルのイラストレーションも苦肉の策がうかがえる。予算がFACoはじめイベントの方に費やされるため、ファッションウィークの広告デザインには経費がかけられない。
そこで天神や博多駅、大名、今泉といったエリアを歩く女性のストリートスナップをイメージイラスト化している。プロのモデル起用、カメラマンやスタイリスト、ヘアメイクを手配すれば、莫大な撮影費がかかる。また、一般人を勝手に撮影すると、いちいち掲載の許可を受けなければならない。
だから、イラストで逃げざるを得なかったのだろうが、そのイラストも「HAKATA LADY」「TENJIN GIRL」「IMAIZUMI LADY」「YAKUIN GIRL」「DAIMYO GIRL」という各タイトルを含めて、全く意味不明だ。
例えば、 IMAIZUMI LADYは、今泉地区に店を構える多くのショップテイストとそのエリアを闊歩するお客の実態と、モデルイラストが合致しない。どう考えても、ソラリアプラザやイムズに店舗を構えるショップで購入するお客向けのテイストである。
また、YAKUIN GIRLは「ガール」と言っておきながら、モデルはワンピースにスプリングコート。明らかに30代のヴェリー系ミセスのテイストだ。
代理店がお抱えのデザイン会社が子飼いのイラストレーターに発注したのだろうか。それにしても、適当にファッション雑誌を見て、描き起こしたようなふしが随所にみられる。せめてエリアやストリートをリサーチしてから描くべきではないのか。
エリアのファッションテイストを際立たせたいなら、リサーチと同時にストリートスナップを撮影する。それをそのまま掲載するには肖像権が絡むので、ウエアのみ現物を利用し、顔や手足はモデルのイラストにする手もあるだろう。
イラストレーターには罪はない。要はディレクションの問題である。全部をイメージイラストにしたところで、福岡のリアルなファッションは伝わらないし、販促にも結びつかない。この程度の感度、感性では福岡のファッションが評価されるどころか、内外から小馬鹿にされる素地を生んでしまうということである。
企画に参画している代理店や関係者の詰めの甘さ、ファッション音痴ぶりが窺い知れる。ファッションウィーク福岡と言っておきながら、福岡のファッションを全く見ていないということがよくわかるのである。
福岡アジアファッション拠点推進会議が主体となり、事業費は福岡市や福岡県、福岡商工会議所などが支援するものだ。
ただ、昨年の例で言うと、福岡市が拠出する資金は、「コンテンツを核とした国際ビジネスの振興」予算枠の中の「クリエイティブ関連産業の振興」として、約3373万円が拠出されている。
ファッションウィークと言っても、神戸市が行っているものとは似て非なるものだ。福岡には「テキスタイル」や「アパレル」といった産業がそれほどあるわけではない。だから、メーン産業である「小売り」を主体とした、特に都心部の天神や博多駅とその周辺エリア向けの客寄せイベントに過ぎない。
なおかつ、福岡市から拠出される3000数百万円のすべてが、この事業に使われるわけではない。ファッションウィークのしんがりを務める福岡アジアコレクション(FACo)を含めて2000万円程度が費やされているのではないかと推測される。
行政が拠出する予算は税金なのだから、市民感覚からすれば、決して少ない額ではない。きちんとした事業目的やコンセプト、成果があればいいのだが、それが明確でないところもこの事業が問題とされる部分だろう。
事業自体は、企画の段階から代理店に丸投げされているし、その代理店がファッション業界、特に小売りの実態や販促ニーズを把握しているわけでもない。結果、客寄せイベント程度の企画に落ち着いているのが実情だ。
昨年までは、物議を醸した問題事業「かわいい区」の予算も活用されていたが、今年はそれもない。例年、大した成果も上がっておらず、成果の検証もいい加減だ。
公共事業全体の予算が削減傾向にあるので、今年は一般から企画を募集する有り様だった。それがどんな理由で作用され、どんな目的で実施されるか。詳細が広報されていないのでわからない。
専用サイトを見ると、昨年の動画を使った告知がされている。大学生の企画なども盛り込まれている。おそらくこの辺りが目新しいものだろう。今年は天神や博多駅の商業のほとんどが協賛(ミーナ天神は不参加、ビブレも不参加だが、イオンショッパーズ福岡店が参加)している。これはこれまでにはなかった傾向だ。
http://fwf.jp/
各社は春物の実売期に入っているので、館ごとに販促をかけている。だから、本筋の企画としては、それらをファッションウィーク福岡(FWF)が大々的に告知化して、相乗効果を狙う程度の内容に落ち着いたようである。
つまり、告知をするには、メディアの力を借りなければならず、今年は新聞社、テレビ局、ラジオ局、フリーペーパー、Webなど、地場で活動するところがほとんどが後援している。これもこれまでになかった特徴ではないか。
後援が実際のスポンサードなのか、それとも単なる名前貸しかどうかはわからない。スポンサードする上では、メディア側にもファッションウィーク福岡(FWF)を取り上げることで企画枠や特番を組み、スポンサーを捉まえられるとの算段があるだろう。
では、集客のための「ギミック」=仕掛けはいったい何なのか。それが今イチハッキリしない。一応、天神のきらめき通りを利用したファッションショーなどのイベントがあるようだ。
まあ、天神か、博多駅かで、イベントをしかければ、買い物客は寄ってくる。しかし、一方で、どちらかに位置する商業施設からは反発を受ける可能性は無きにしもあらずだ。協賛金は取られときながら、大量動員の恩恵は受けられないでは、済まされないからだ。
企画立案がパッとしない中で、そうした利害調整が水面下で行われ、事業資金は福岡アジアコレクション(FACo)分も確保しておかなければならないため、こうした内容に落ち着いたと類推できる。
メディア各社を協賛させたのも、そうした課題に批判の矛先が向けられないためだろうか。
結果的に各社各様のミ二イベントに個別のイベントが玉石混合、細切れで合わさることで、本当に大々的な集客が図れるのか。また、天神や博多駅の周辺エリアで店舗展開する一般参加店がどれほどあるのかである。
特に一般店舗の参加は、主催の福岡商工会議所、行政とて気になるところだ。しかし、サイトでは3月9日現在、天神他、大名や今泉、薬院、警固などで123店舗。これはファッション、ビューティだけでなく、飲食店も含まれ、中には日本料理や焼鳥店もある。
ファッションウィークと言っておきながら、一般店の賛同を取りつくろうために何でもかんでも勧誘する。逆に考えると、純然たるファッション専門店への販促効果がなく、ファッションウィークへの期待の薄さを露呈するものだろう。
一般参加店を増やしたいなら、事前に店舗や品揃えを取り上げておかないと、プロモーション効果はない。各店とも春の商戦が絡むわけで、イチ押しの商品をピックアップし、売りにつなげてあげることが天神や博多駅周辺の個店へのフォローとなる。
店舗選択の公平性は、どれだけの店舗が前向きに自店や商品をアピールしたいか。そのやる気で判断すべきだ。また、アパレルメーカーやお客さんの推薦があってもいいはずである。そんなものはSNSを利用すれば、どうとだってできる。
当然、主催者側が店に入っていくことも必要になる。準備期間は昨年秋からあったはずである。それが元締めの仕事、地元ファッションを理解している人間ならできるはずだし、やらなければ福岡のファッションにとって何の意味も無い。
ところが、実態はどうなのか。天神地区や博多駅地区のイベントが盛り上がるほど、周辺にはお客が流れないのは、過去2回のイベントでも経験済みのはず。
しかし、それでは公共事業は通らない。何より福岡市は決算説明で、成果・実績を公開する。27年度の資料では「参加店舗260店・社」とあり、今年の目標は300社以上と掲げる。これをクリアするために、主催者側はギリギリまで勧誘を続けるつもりだろうか。それとも、行政お得意の名前だけ借りて、数字を水増しするのか。
どちらにしても、大儀なき事業であるのは確かだ。「盛り上がった」「好評をいただいた」というのは、何も持ってそう言えるのか。全く根拠を欠くし、客観的なデータを示しての説明は何一つ無い。
「今年は予算が減ったから、大掛かりなものはできない」では、理由にならない。ただ、何でもイベントができればいいという企画は継続しているのだ。
器を用意したから、勝手に参加してくださいとは、あまりに高圧ではないのか。そんなことをやってて商工会議所の組合員や繊維部会のメンバーが増えるはずはないのである。
福岡アジアファッション拠点推進会議では、昨年秋から企画を募集し、準備を重ねて来ているように言っているが、その結果がこれではあまりに薄っぺらい。まして、ファッションウィークと言っときながら、それを口実にメディアやイベント事業者が潤うに過ぎないような内容である。
ところで、メーンビジュアルのイラストレーションも苦肉の策がうかがえる。予算がFACoはじめイベントの方に費やされるため、ファッションウィークの広告デザインには経費がかけられない。
そこで天神や博多駅、大名、今泉といったエリアを歩く女性のストリートスナップをイメージイラスト化している。プロのモデル起用、カメラマンやスタイリスト、ヘアメイクを手配すれば、莫大な撮影費がかかる。また、一般人を勝手に撮影すると、いちいち掲載の許可を受けなければならない。
だから、イラストで逃げざるを得なかったのだろうが、そのイラストも「HAKATA LADY」「TENJIN GIRL」「IMAIZUMI LADY」「YAKUIN GIRL」「DAIMYO GIRL」という各タイトルを含めて、全く意味不明だ。
例えば、 IMAIZUMI LADYは、今泉地区に店を構える多くのショップテイストとそのエリアを闊歩するお客の実態と、モデルイラストが合致しない。どう考えても、ソラリアプラザやイムズに店舗を構えるショップで購入するお客向けのテイストである。
また、YAKUIN GIRLは「ガール」と言っておきながら、モデルはワンピースにスプリングコート。明らかに30代のヴェリー系ミセスのテイストだ。
代理店がお抱えのデザイン会社が子飼いのイラストレーターに発注したのだろうか。それにしても、適当にファッション雑誌を見て、描き起こしたようなふしが随所にみられる。せめてエリアやストリートをリサーチしてから描くべきではないのか。
エリアのファッションテイストを際立たせたいなら、リサーチと同時にストリートスナップを撮影する。それをそのまま掲載するには肖像権が絡むので、ウエアのみ現物を利用し、顔や手足はモデルのイラストにする手もあるだろう。
イラストレーターには罪はない。要はディレクションの問題である。全部をイメージイラストにしたところで、福岡のリアルなファッションは伝わらないし、販促にも結びつかない。この程度の感度、感性では福岡のファッションが評価されるどころか、内外から小馬鹿にされる素地を生んでしまうということである。
企画に参画している代理店や関係者の詰めの甘さ、ファッション音痴ぶりが窺い知れる。ファッションウィーク福岡と言っておきながら、福岡のファッションを全く見ていないということがよくわかるのである。