HAKATA PARIS NEWYORK

いまのファッションを斬りまくる辛口コラム

買うリスク、着る勇気。

2016-03-16 07:24:56 | Weblog
 さる3月4日、「ユニクロアンドルメール」で最後となるSPRING SUMMER 2016が発売された。今回も事前に告知がなされ、一部のサンプルが公開されていた。

 前回の秋冬企画は、オープン1週間で完売の商品が続出したため、商品をくまなく見ることはできなかった。そこで、今回の春夏企画はオープン日から2日連続で、キャナルシティ博多店を訪れてチェックしてみた。

 全体的な印象は明るさを出しつつトーンをやや落とした感じ。デザインはディテールでクリエーターらしい処理を施し個性を主張している。ただ、生地感はこれまでの春夏企画と大して変わらず、それほどのクオリティは感じなかった。

 目新しいのはシアサッカーだ。この生地は比較的薄手の織物だと理解しているが、ユニクロが採用すると張りやこしが劣り、ペタっとした印象は拭えない。

 だから、ハンギングしたワンピースが棚の狭いスパンに無理矢理に押し込まれると、アメリカンアパレルのように見えて、せっかくデザイナーファッションが台無しになる。

 ところが、ネット通販では違った。そうしたVMDを見ないから、購入の判断材料はモデルによるイメージショットと商品写真しかない。その点が逆に奏功したのか、シアサッカーでは完売した商品がすでにある。



 ノースリーブワンピースのレッドがそうだ。亜熱帯地域でも旅行しない限り、春先の日本ではまだまだ必要ない。でも、他のSPAが出させていないヴィヴィッドカラーで、筆者が女性ならギリギリ損はないかと購入したと思う。

 購入者の多くが同じ様な考えで先買いしたのではないか。前シーズンでもすぐに完売した商品があり、買い逃して残念な思いをしたお客もいたはずだ。そうした気持ちが購入に走らせたのだと思う。この辺はネット販売の妙と言えるだろう。

 このワンピースに対するコメントを見ると、生地感の目新しさ以外にも、カッティングからくるシルエットのきれいさ、これだけの感度で値ごろなところなどが30代にウケたようだ。

 同じく半袖のワンピースのレッドも完売している。こちらはマタニティウエアやウエストを別のベルトでマークすれば個性が主張でき、夏場の部屋着にも利用できることなどから、売れたようである。

 もともと、シアサッカーは凹凸の「しぼ」があるので、しわが気にならないような素材なのだが、街着にするとなるとやはりクタっとしたのは着にくい。いちいちアイロンをかけるのは面倒だから、楽なケアの方法なんかSNSで公開していただけるとありがたい。

 エクストラファインコットンのワンピースは、コメントにもあるように筆者も生地の薄さが難点との印象を受けた。この傾向はユニクロが「エクストラファインコットン」と称しているすべてのアイテムで、以前から感じていることだ。

 ブラックは「修道女のように見える」と感じた人もいるが、これからのシーズンは暑苦しい。辛うじてホワイトの方が使い勝ってが良いのかもしれないが、汗で生地がクタっとすればカラーに関係なく最悪である。この生地感なら実際に着た時の汗ジミも想定されるから、洗濯後のケアも気になるところだ。

 言い換えれば着こなしのうまい人にとっては、それだけド・ストライクのアイテムになるわけである。その辺がうまいパリジェンヌなんかがどんなレイヤードスタイルで着こなすか。ストリートショットをぜひ見てみたいものである。

 一方、ニットは春夏らしくメッシュを取り入れているが、肝心の糸質は価格からして量販レベル。ニューヨークあたりのデパートに売ってそうな感じに思えた。また、メッシュは見た目は涼しげで良いのだけど、何かに引っ掛けて糸がほつれる心配もある。

 筆者はリボンヤーンで何度も経験しているから、これが非常に気になった。かぎ針で伸びた部分を引っ掛けて裏に引きづり出せばいいのだけど、編み物の経験、技術が必要なのでそこが心配である。サイトではその辺の対応も告知してほしかった。

 スピーマコットのメッシュポロセーターは、マスタードがプロモーション写真に起用され、価格が安いことから、ネットではSサイズが完売している。同素材のクールネックセーターも同様に、カシミヤブレンドのタンクトップやボディーセーターとレイヤードする方法がいやらしさを感じずしっくりくると思う。

 企画の段階でこうしたトランスペアレントを想定し、カシミヤブレンドのボディーセーターを今回MDに加えたのであれば、それはそれで中々秀逸と思う。

 布帛であるオックスフォードのワイドパンツ、ガウチョパンツはネットでは素材感がわからないので、特に店頭で確かめた。白は透けると思ったが、やはり購入者も同じ印象だったようで、「返品した」とのコメントは少なくない。



 逆にコットンツイルパンツは上質に感じたし、こちらは白でも透けない印象だ。ここ数年続いたスキニー、タイトなシルエットではなく、メンズライクでアンクル丈。ひと昔前に流行ったトラウザースをやや短くした感じだろうか。

 新鮮なデザインではあるのだが、デザインはまだ万人向けではないと思う。ユニクロ側がアンドルメールをテストマーケティングにして、レギュラー企画に採用することも想定しているのなら、陳腐化したパンツシルエットの中で、どこまでトレンド化させられるかがカギになると思う。

 筆者が専門のウィメンズを見た印象はざっとこんなところである。一方、メンズは専門ではないので、一消費者としての感想になる。

 全体的にはカラーがウィメンズに反して、中間色系でボケた印象を受けることだ。ジャケットにしてもブルゾンにしてもパンツにしてもである。

 売場の最初に目にとまったのは、正面向きにハンギングされていたコットンパーカ。素材がしっかりしている印象を受けたが、ボタンフライで共地の短冊布を継ぎ足した前合わせ、スクエアのフラップポケットと、いかんせんフロントデザインがダサい。これがルメールのデザインなのかと疑うほどだ。

 コットツイルのシャツブルゾン、シャンブレーのシャツブルゾンもデザインが今イチだ。ピンが甘いプロモーションフォトではモデルがブルーを着ていたので、シンプルな印象しか受けなかったが、いざ商品をみるとげんなりした。

 どうみても工場で働く人たちの作業ジャンバーにしか見えない。まさか企画の段階で、そうしたワークウエアを意識したとも考えにくい。おまけにユニクロの春夏生地は総じてこしがなく薄いので、どうしてもデニムジャケットなんかと比べがちだ。ファッションとしては失敗ではないだろうか。



 スピーマコットを使ったクールネックセーターは、メッシュでこれからシーズンには良いのだが、店頭ではユニクロのメンズではどうなのかと思った。後で通販サイトを見ると、全色、全カラーが完売になっていた。よくよく考えると、購入者が目新しさを感じたのは、これくらいだからだろうか。

 長袖のTシャツやニットは、従来の企画とさほど変わらない。筆者の周辺では、「スピーマコットのTシャツは生地が薄い」とか、「ユニクロは春夏商品の企画製造が苦手なように感じる」との意見も聞かれる。この程度の価格帯なら限界はあるのかもしれない。

 チノパンはコットン100%になる。レギュラーのスリムパンツのようなストレッチ性を出す合繊が入ってないので、この先のシーズンには爽やかで穿きやすいと思う。

 パンツで印象的だったのは、ユニクロのデザイナーズコラボで「ツータック」が復活したことだ。DCブランド全盛期のトレンドだったことを考えると、デザイナーズでは30年ぶりくらいになるだろうか。当時を知り、実際に穿いていたものとしては懐かしいが、ファッションとして今さら穿く勇気はない。

 パンツトレンドとしてはメンズもスリムからワイドへの揺り戻しがないわけではない。果たして、20代、30代の若者がどう反応するかである。

 ただ、DCブランドの時はシューズが革靴であろうとスニーカーであろうと、穿き丈は長めでくるぶしは見せていなかった。短めのトレンドのままで、ツータックが浸透するにはよほど脚が長く、トップとのバランスが良くないと難しいのかもしれない。

 アンドルーメールを見た全体の印象は、2シーズンでは企画の消化不良が否めないところである。ルメール側にもやってみたいことはいろいろあっただろうが、デザイナーズコラボは契約上のリスクもあることから、ユニクロとしては引っ張らない戦略のようだ。

 ただ、事前にネットで見ていろいろと購入を検討し、いざ店舗でチェックすると幻滅した商品も少なくない。近くに店舗がなく、取り扱いの無い商品はネットで購入するしかないお客にとっては、返品した商品も少なくないようだ。やはりそうした問題はずっとついて回るし、ECではしかたないことだ。

 そうした課題にどう取り組んでいくか。次なるデザイナーの起用と合わせて、今後どう改善されていくかが気になるところである。
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