HAKATA PARIS NEWYORK

いまのファッションを斬りまくる辛口コラム

大人のモードが帰ってきた。

2014-06-18 13:30:26 | Weblog
 5月初め、セレクトショップのユナイテッド・アローズが「アストラット」という新業態をオープンした。先週末、東京に出張する機会を得たので、青山詣でのついでに寄って見てきた。

 場所は国道246、青山通りのザラホームの脇から入った路地の一角。東に歩けばコムデギャルソン、その南にはY’s、アンダーカバー、ヨウジヤマモトが立ち並び、筆者にとっては昔から馴染みのあるエリアだ。

 アストラット青山店は20坪もあるだろうか。エントランスを中心にした横広いフラットな作りで、余分な虚飾を排したシンプルな内装になっている。

 南青山という場所柄でもないだろうが、事前の記者発表には「大人が満足できるクオリティと価格のバランス。インポートと同じ立ち位置で見てもらえるブランド」と、あった。

 だから、UA業態のアップグレード版かと思いきや、これが意外にコンテンポラリーで、モード感をもつ商品による構成。デザイナーズやインポートを除き、百貨店にも駅ビルにも「大人のモード」がないと言ってきた筆者にとっては、待望のショップと言える。

 アイテムはシャツ、ブラウス、パンツ、スカート、ジャケット、ドレスにアクセやシューズ、そしてフレグランス。コンテンポラリーモードを象徴するように、ウエアはモノトーンを基調にしたミニマルデザインが中心。セレクションとして極彩色のブラッシュプリントのボトムを差し色にして、メリハリを付けている。

 中にはエレガンスなブラウスもあり、UAらしさのニュアンスも残す。もっとも、「セレクション」を謳ってきた大手セレクトショップは、商社支配によってどんどんSPA化し、MDはトラッド&スウィートの売れ筋狙いにシフトしてしまった。これに飽き飽きしている大人の女性は少なくないと思う。

 かといって、インポートのラグジュアリーブランドは高くて手が出ない。その点、アストラットはカットソーが1万円以下、トップス&ボトムスが2万円代、ドレスが3万円代、ジャケットが7~8万円代と、価格はプレステージとベターの間。これなら港区界隈のビジネスウーマンにとっても、買いやすい価格帯と思う。

 それでいて、テイストはベーシックとアドバンスの中間で、インポートがもつモード感を漂わすのだから、大人の女性にとっては「待ってました」だったのではないか。チープな原宿やボリューム化した渋谷から、まさに「あか抜ける」ことができるのだから。

 かつて、南青山から神宮前、千駄ヶ谷にかけては、キャリアゾーンを狙う専門店系メーカー、マンションアパレルが多数あった。筆者もこうした商品に携わっていたから、この地にはメーカー、小売りを問わずコンテンポラリーな商品を発信する土壌があると思う。

 安倍政権は、「女性の力の活用」「社会参画の促進」が日本の強い経済を取り戻すために不可欠と、公言している。つまり、大人の女性がどんどん社会進出し、キャリアを形成していけば、まさのそのゾーンの服飾は大きなマーケットになる可能性をもつ。

 長らく低迷を続けてきたドメスティックブランド、専門店系&マンションアパレルにもようやくチャンスが到来するということだ。業界内部では「これからはミセスだ」と言う声もあるが、それは単なる「お母さん」「おばさん」でない。

 社会進出する大人の女性は、商品を見きわめる審美眼、商品が醸し出す世界観を見る目をもつ。うわべだけでなく、その商品が自分をどう演出して、「できる女」に仕上げてくれるかを本能的に察知して、商品を選ぶのだ。

 現時点で、アストラットは青山店の他に名古屋と大阪での出店のみで、実験的な要素が強いかもしれない。でも、福岡のようなビジネスライクな地方都市でも十分ニーズはあると思う。ただ、パッケージのままではUAの域を出ないし、百貨店やデベロッパーはそのままリーシングするだけだろう。

 しかし、国内アパレル仕入れによるセレクションは、地域専門店の方が得意としてきたものだ。それだけに顧客が高齢化したり、経営者の世帯交代が叫ばれている店舗こそ、一気にMDの若返りを図り、働く女性に向けたセレクションに舵を切ってもいいのではないだろうか。

 ICTを駆使してネット販売を並行したり、店内コレクションによる販売予約を仕掛けをたりと、ピンポイントのお客に焦点を当てて、チャレンジしてみるのも面白いと思う。
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