高齢者は余力がないと認識していますが、
認知症といわれる状態になんとなく、しかも急激に突入された方を経験しました。
血液疾患で入院中に、これまでも度々自宅で転倒しやすかったのですが、今回も転倒。幸いに骨折はなく、打撲による疼痛にもめげず起居を行っていました。
8月15日に、院長宇塚が幼き日に心躍らせて鮎とりに励んだ栃木県の小倉川の”鮎”を夕食に出したのです。いつもですと、まっ先に”美味しかった。院長は……”とはつらつとした声が響いていたのがなかったので、鮎は好物でなかったかしら?と思っていた矢先に、家族から応答が半分ぐらいちんぷんかんぷんで、面倒くさいのがすぐ目を閉じてしまうとはなされたのが20日。
神経学的所見に局所症状は認められず、認識力の検査のための応答はゆったりとしてはいても間違いはないので、痛いというので動かないからだということで、
28日に整形外科受診を予定して実行しました(当院は単科なので車で15分以内の病院に。
それまでは、血圧は高く降圧剤を必要としていましたが、血圧が低めで、酸素飽和度(sPO2)も低下したので救急車で戻しますと連絡が入りました。
戻って5分も経過しない内に収縮期血圧は100以上、sPO2も間もなくほぼ100%に戻り、酸素吸入を中止しても低下しませんでした。
血液は、退院可能な状態に回復してきていたのと、本人は自宅に戻ればやる気が出るという発言があったので、神経学的精査後に判断しようということで30日、神経内科を受診。
同乗した救急車の搬送中に血圧低下、sPO2の低下を目の当たりにしましたが、目をつぶっていますが、救急隊の質問には間違えることなく名前、年齢、住所を応えている10分ぐらいの内に目的地に到着。
頭部のCT、MRI,MRI血管造影と検査を行いました。
この間、今まで経験したことのない血圧は低い値を示しました(80台)。
検査の結果は、脳には最近起きた病変は認められず、
CTではっきりしたのは、以前から徐々に進行した、年齢相応の脳の委縮。
MRIでは、ラクナ梗塞が多数。
血管造影で、内頸動脈、特に右が途絶。
かなり時間が経過したのち、内頸動脈の末端に血流があったことを示す所見。
→ 動脈硬化による血流不全。従来からあったもので新しい変化ではない!
全身状態の変化は著明! これは、血圧を高くしてかろうじて全身の血流を確保。
交感神経の緊張などで、高血圧を維持していたからで、
あるきっかけで無理をしない状態になると共に、血液の巡りが緩慢になり、酸素供給が不足し、傾眠傾向、移動による血流不全、心不全、血圧低下へと進展。
動脈硬化の病変は不変でも、活動能力の劇的な変化、すなわち、急速な認知速度の低下に=認知症といわれる状態 になることに改めて驚きました。
生活習慣病の予防、啓蒙をさらに強く言える契機となった、20年以上診療に従事した患者さんです。