読書三昧

本は一冊一冊がワンダーランド。良い本との出会いは一期一会。そんな出会いを綴ります。

IoTとは何か 技術革新から社会革新へ

2025年01月27日 08時19分21秒 | ■読む

坂村健著、角川新書刊
先に読んだ「デジタル化する新興国 先進国を越えるか、監視社会の到来か」の参考図書に含まれていた著作で、TRONプロジェクトで名高い坂村さんの著作なので、興味を持ち手に取りました。

著者は、IoTの一般的な解説ではなく、TRONプロジェクトを率いてきた著者の視点と立場から執筆したそうです。
とはいっても、IoTの概念や、具体的な応用形態などが沢山紹介されています。
また、128bitのIDを、必要な物全てに付与して、どの様に活用するのかについても、様々な具体例を挙げています。

例えば部屋に入ると自動的に照明やエアコンが動き出すなどは、私にとっては全く不要で余計なお世話と思える内容でしたが、社会インフラの管理、物流や供給の場面で配送や在庫を最適化したり、付近のIDを付与された物から、地図や情報を入手するための位置情報を得たりするなど、現実的に有用な多くの事例には納得しました。

更に、IoTの実現の為の技術的な面よりも、社会に実装する(具体化する)ことの困難さを指摘しています。
最後の方で指摘している法体系の違いの説明を読んで納得できました。
つまりイギリスやアメリカなどの慣習法の法体系では、禁止事項を方で定める方式「ネガティブリリスト」であるのに対し、日本が範にしたヨーロッパ大陸の国々の行って良いことを定める「ポジティブリスト」の違いが根底にあるとのことです。
この議論は、日本の防衛の要である自衛隊に関しても「ポジティブリスト」方式なので、想定していない敵国からの攻撃の際の対処に不安を覚えるとの、自衛隊の元幹部の指摘と同様です。
アメリカが革新的な技術を社会に実装することに積極的なことの理由の一つと思います。
また、最近様々に議論されてきたマイナンバーカードに対する日本国内の、時代錯誤と思える議論に代表される様な、現状維持思考がIoTの社会実装を阻むかもしれません。
著者は、婉曲にそうしたことを繰り返し述べています。

幾分、昔の科学少年の様な印象を受けましたが、世界に先駆けたTRONプロジェクトを立ち上げ、世界的に、その先進性を認められた著者の先見性と情熱が行間から熱く伝わってきました。
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坂村健  ○IoT  ○TRONプロジェクト
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評価は4です。

※壁紙専用の別ブログを公開しています。
カメラまかせ 成り行きまかせ  〇カメラまかせ 成り行きまかせその2


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