幸田露伴作、東京エーヴィセンター発行:峰惠研朗読
文語体なので、聞き初めは分かり難いのですが、耳が慣れてくると、文章の持つリズム感が心地良く、次第に作品世界に入って行けます。明らかに韻を踏んだ文章で、美しくかつ力強く感じました。「五重塔」での終盤の嵐の描写でも鬼気迫る感がありましたが、本作でも、終盤で、主人公が恋しい女性を一心に彫刻する場面や、葛藤にのたうち回る場面での描写が凄まじい。
さて、本作は、才能豊かな仏師の珠運(しゅうん)が修行の途上である旅先の宿で、お辰という悲しい身の上の美しい女性に巡り会う。たちまち心惹かれ宿の主人から、その詳しい身の上を聞いて、行きがかり上その娘を助けることになる。修行に重きを置く身ながら、縁あって二人が結ばれようとした時、思いも掛けない事情で引き裂かれてしまう。深く傷つき悩んだ主人公は思い立ってお辰の像を彫り始める。そして、・・・。
人が人を好きになる、という、事情も理由も関係のない不思議と深さが美しく描かれています。泉鏡花の「外科室」が、桜の一瞬の美しさを切り取った作品とすれば、本作は鮮やかな牡丹の美しさを描いた、とでも喩えられるのではないでしょうか。
評価は4です。
文語体なので、聞き初めは分かり難いのですが、耳が慣れてくると、文章の持つリズム感が心地良く、次第に作品世界に入って行けます。明らかに韻を踏んだ文章で、美しくかつ力強く感じました。「五重塔」での終盤の嵐の描写でも鬼気迫る感がありましたが、本作でも、終盤で、主人公が恋しい女性を一心に彫刻する場面や、葛藤にのたうち回る場面での描写が凄まじい。
さて、本作は、才能豊かな仏師の珠運(しゅうん)が修行の途上である旅先の宿で、お辰という悲しい身の上の美しい女性に巡り会う。たちまち心惹かれ宿の主人から、その詳しい身の上を聞いて、行きがかり上その娘を助けることになる。修行に重きを置く身ながら、縁あって二人が結ばれようとした時、思いも掛けない事情で引き裂かれてしまう。深く傷つき悩んだ主人公は思い立ってお辰の像を彫り始める。そして、・・・。
人が人を好きになる、という、事情も理由も関係のない不思議と深さが美しく描かれています。泉鏡花の「外科室」が、桜の一瞬の美しさを切り取った作品とすれば、本作は鮮やかな牡丹の美しさを描いた、とでも喩えられるのではないでしょうか。
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