
友野典男著、光文社新書54刊
経済学は、経済を担う一人一人の人間が「経済人」という、理性的で利己的な人間が主役となって、社会経済生活を送っている、と仮定されて理論が構成されています。しかし、実際の人間は、経済人に相応しくない選択や行動を取る。そうした、経済学の根本的な矛盾を認めた上で、現実の人々の行動の背景にある心理や文化体系に迫る「行動経済学」の様々な知見を400ページ弱のボリュームに、みっちりと詰め込んでいます。
それは、人間の判断の根拠となる理性が、如何に頼りないものであるかを示し、現代の社会で尊重されている理詰めの考え方が、現実の複雑な事象の前にあって、余り力を発揮できない、却って、経験値の方が正しい答えに導くことすらある、としています。
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URL => http://ja.wikipedia.org/wiki/行動経済学
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人が毎日生きて行く過程で、実に膨大で多彩な意志決定をしていることか。それらは、実は、ほとんど経験則に従って判断しているように思います。そのことが、普通の場合、ほぼ正しい答えを導き出しています。しかし、私たちは、自身が思う程には、理性的な判断をしていないし、能力もない、ということを、学問の成果として赤裸々に示されると、(元々残り少ない)自身が透けて見えるほど、実態のないことが分かってきます。入門書に最適であると思います。
評価は4です。
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