橋本毅彦著、講談社選書メチエ刊
日常用いる「標準」は「普通の状態」と言う程の意味だと思います。本書のタイトルの標準は、下記URLの二つ目に記されているように「標準化によって決められた「取り決め」のこと。一般的には「規格」と同じ意味で使われることも多いですが、厳密には規格の「普及」といった意味合いも含まれるため、規格より広義の概念になります。」ということだそうです。
ISO14001の認証を受けるために調べた際、「規格」について知ることがありました。そもそも規格が何故必要になったのか、ということです。
規格は標準とほぼ同じ意味だそうですが、今日の生活に溢れている全てのことが規格によって律せられ、社会全体の仕組みが上手く動いています。
身近な例では、ネジの規格がありますが、パソコン関係のネジはインチネジが使われていることが多く、日本の標準規格であるメートルネジは使えない。
水道水の飲料の規格があり、供給事業者はその規格に基づいて水質検査を行い、規格をクリアーした水を供給しています。
鉄道の線路の幅は、JRの在来線の狭軌、新幹線の広軌、その中間の幅など幾つかありますが、それぞれの幅が違っているので、走行できる電車に互換性はありません。(線路を同時に違った幅で用意しておけば別でしょう)
本書は、その重要な規格(標準)がどの様な事情で必要とされ普及していったかを、様々な例を挙げつつ紹介しています。理系の人であれば、基本的な素養としてぼんやりと知っているエピソードがある一方、へ~~、と刮目に値するものもありました。
詳述は避けますが、現代社会においては、「標準」が社会経済の全ての活動に亘って重要なインフラになっており、新たな標準の主導権を握ることが極めて重要な状況になっています。
最後は、「デファクト標準:市場競争で勝ち残った結果、市場において広く利用されている標準。事実上の標準」と「デジュール標準:一般に認められている標準化団体が作成した又は作成している標準。公的標準。(例 JIS、ISO、IECなど)」について論じています。
近代フランスに端を発した標準化の動きが、主に戦争の武器の運用に必須な互換性の確保のために生じたこと、更には、一般の社会経済活動の普及を促進するために進展したことが、極めて平易に記されています。理系の人に必須の書籍で、その他の人にもお勧めしたい。
因みに、私なりの感想ですが、産業革命によって大量生産が可能になり、手づくりから機械による大量生産への移行と、製品が一般大衆に大量に普及したことが、今日の「標準」の成立を促したのだとの結論に至りました。
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○橋本毅彦 ○標準とは
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