読書三昧

本は一冊一冊がワンダーランド。良い本との出会いは一期一会。そんな出会いを綴ります。

リベラリズムの終わり その限界と未来

2020年07月17日 12時18分10秒 | ■読む

萱野稔人著、幻冬舎新書刊
戦後教育の世代にはリベラルであることが格好良かった。自由を尊重し、旧弊な考え方を軽蔑していた。こうした雰囲気が最近は急速に無くなってきた。個人の自由を最大限尊重するという主張は、日本においては弱者の救済と結び付いているが、アメリカのリベラルとは異なるようだ。

自らをリベラルでありたいと願っていた私自身が、最近のリベラルとされる野党の言動の見苦しさ、リベラルと思しき文化人の言動が現実を無視した様が目に余ると感じるようになった。ふるさと納税のさもしさに通じる迎合的な姿勢が何ともいただけないと感じるようになってきた。また、EUでの移民問題による「右傾化」とされる政党の躍進や、アメリカの一国主義など、近年の政治の雰囲気が大きく変わってきているようだ。

本書の著者は哲学者だそうで、身近な例を引いて、リベラルであることの意味、リベラルと言われる態度が時代にそぐわなくなった理由を示している。更に、ロールズなどの哲学者の理論を紐解き、リベラリズムが適用できる領域と限界を明らかにしている。

しばらく前に見た「白熱教室」を思い出した。単純な事柄と思えることでも、より普遍的な視点で検討すると、判断が困難な場合があり、それが、人の価値観や生き方と密接に結びついているのだという自覚を促され、久しく聞いていなかった「正義」という言葉に心が震えた。

本書は、著者が述べているように「リベラリズムを否定する」意図で執筆した著作ではないことは明らかだ。弱者を助けようとする志が、現実世界では、条件付きで許容されるものだ、という当たり前の事実に気付くべきだろう。

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萱野稔人  ○リベラリズム
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評価は4です。

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