
風俗産業が当たり前に営業し、ポルノがすっかり広がっている日本にあって、昔ながらの雰囲気を保っていた飛田を取材したルポタージュです。
書き始めてからしばらくは、著者が取材で駆け回るのが空回りしてしまい、中々、飛田の実像に迫れない感じでテンポが悪く、少し外したかなと感じました。
その後は、文献をなどを中心として飛田の歴史を辿ります。
長い取材時間の甲斐あって知り合った人々から断片的な情報が入り始め、この当たりから乗ってくる感じです。
終盤は、飛田の有り様を、様々な人々に苦労して取材した得た情報を整理し、人間味豊かに述べています。
このあたりになると、大阪弁での会話が中心となって、引き込まれて読みました。
著者は、飛田という存在の是非について論じない方針であったようですが、言葉の端々に、否定的な意識を覗かせています。
しかし、経営者と雇われた人々の会話によって、飛田に流れ着いた必然のようなものが感じられたようで、終盤では雰囲気が変わってきました。
単行本は2011年に出版されましたが、2015年に文庫本(本書)が出版されるに当たり書き加えられています。
その時点で著者が再訪して大きな変化を感じたからです。
流れ着くべくして流れ着いたのではなく、目的を明確に持って主体的に参入した女性が多くなったからのようです。
本書の解説は、著者と親交のある桜木紫乃さんが筆を執っていますが、これが素晴らしい。
この解説で、本作の値打ちが更に高まったように感じます。
女性らしさが満ちた良書と思います。
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○飛田遊廓 ○井上理津子
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評価は5です。
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