
最相葉月著、新潮文庫刊
誠に長大な作品です。文庫本で600ページ程。しかも、密度が高い。青いバラにまつわる西欧の伝説に始まり、世界各国と日本の育種の歴史。取り分け日本の育種の歴史は、圧倒的なボリュームがあり、しかも深い。このような高密度のノンフィクションは読んだことがありません。読了するのに、半年ほども掛かりました。決して面白くない、というのではありませんが、様々な人物や事柄の後付が圧倒的に濃密なのです。読んでいて目眩がするほどです。最相さんの作品は初めて読みましたが、本棚には、最相さんの「絶対音感」が、読まれるのを待っています。はてさて、どうしたものでしょうか。読むのが少し怖くなってしまいました。しかし、大分前に読んだ、松本修さんの「全国アホ・バカ分布考」以来の、ドスンッと来る、スーパーヘビー級のパンチのような作品でした。
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URL => http://ja.wikipedia.org/wiki/最相葉月
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作品中、鈴木という育種家が、物語の縦糸になっており、作者は、遺伝子組み換え技術まで持ち出して「青いバラ」の実現に挑む現代の研究者に、かすかな非難と不安を呈しています。人間が人間たる故に「青いバラを求め」つつ、人間の愚かさの象徴としても「青いバラ」を追求し続けているのだと示唆しています。
評価は5です。
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