「三門で下車する。
ホタホタ灯がつきそめて、駅の前は、桑畑、チラリホラリ、藁屋根が目につく、私はバスケットをさげたまゝ、ぼんやり駅に立ちつくしてしまった。」
林芙美子
放浪記
ちょうど今、森光子の放浪記が上演2000回を迎えたということで、話題になっています。
以前、木下順二の「夕鶴」が山本安英の主演で1000回を超える公演を行ったことがありました。夕鶴の公演は山本安英さんがお亡くなりになるまで続いたのです。
森光子さんの「放浪記」は、代役なしで、2000回。森光子さんは今年89歳。こちらもほんとうに凄い記録ですね。
その放浪記の中の一節に、岬のうちから一番近い駅、三門駅が出てきます。
JR東日本 外房線三門駅。(いすみ市日在)無人駅。駅舎は最近新しくされたけど、基本的にトイレだけという程度の寂れた駅。
車が数台駐まれる駅前の広場にも商店もない。駅への入り口に一・ニ軒あるだけ。
一日の乗車客が123人とのこと。
ここでは、主人公は日在の海のほうへと歩き出すのですけど、、、
私はこの駅か、その手前の長者町駅で降りてそれとは反対の山側のほうへ歩くことになる。
駅の周りの住宅地を抜けると後は、何もない田んぼの中を半時間ほど歩く。
人の作ったものを文化と呼び、進歩と呼ぶのであれば、ここはあまりにも自然の中。
もちろん田んぼは人の手になるものだけど、、
「岬な日々」の中の花や鳥などのほとんどがその道路沿いで撮られたもの。
文化、進歩だけが人間の楽しみではないのだなって、、、
文化(芸術)に絡んで仕事をしてきた人間としては、自分が触れてきた安っぽいエセ芸術作品よりも、小さな自然の営みに改めて感銘を受けてしまう自分の存在がちょっと哀しい。
今、東京にいてこれを書いています。
今度、岬に参りましたら、三門駅、あるいはその周辺を撮りまして、こちらに追加いたしましょう。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます