◆東京出身の米元さん優勝、ロシアのバイオリンコンクール
【モスクワ30日共同】モスクワで開催されていた第4回パガニーニ国際バイオリンコンクールの最終選考会が29日夜開かれ、東京都出身の米元響子さん(22)が優勝した。同コンクールで日本人の優勝は初めて。
米元さんは「聴衆の前で力を出し切れたのがよかった。今回の優勝は大事なワンステップになる」と喜びを語った。
6人による最終選考会で米元さんはドボルザークのコンチェルトを演奏。「難しい曲でありながら美しく情緒的で、熟達したプロフェッショナルの演奏だった」と審査員から高く評価された。コンクールには50人が参加した。
米元さんは3歳からバイオリンを習い始め、13歳の1997年にイタリア・パガニーニ国際コンクールで4位に入賞、最年少入賞者として注目を浴びた。2002年には若手演奏家の登竜門、ロン・ティボー国際音楽コンクール(バイオリン部門)で3位に入賞するなどの経歴を持つ。日本国内でも多くの演奏活動を行っている。(日本経済新聞) (09:32)
音楽家の名を冠した音楽コンクールは多数あるが作曲家でかつ当時の最高の演奏家でもあった音楽家の冠コンクールというとショパン・コンクールとパガニーニ・コンクールがすぐ脳裏に浮かぶ。
パガニーニと言えばそのあまりの技巧の素晴らしさに、悪魔に魂を売って代償にヴァイオリン技術を得たと言う噂が流れるほどの超越技術のヴァイオリニスト。
肖像画で見るパガニーニはやせ細って本人自身が死神の風貌である。
日本人俳優でパガニーニを演じられる俳優は死神博士で子供の人気を得た怪優・天本英世さんくらいのものだろう。http://chopinthethird.nobody.jp/puro/puro.html
そんなことはどうでもいいが、鬼神のようなヴァイオリン奏者パガニーニの名を冠した国際ヴァイオリンコンクールはチャイコフスキーコンクール、シベリウス・コンクールと並んで入賞するだけで難関の一流ヴァイオリニストの登竜門だと聞く。
そのパガニーニ国際コンクールで日本女性が優勝と言うから最近の日本のヴァイオリンのレベルアップも著しい。
だが、一寸待てよ。
パガニーニ国際コンクールに優勝した女性には史上最年少の16歳で優勝した庄司沙矢香さんがまだ記憶に新しいけど・・・。
それに一寸前にこんな新聞報道もあった。
◆調布の女子高生3位 パガニーニ国際バイオリンコンクール
桐朋女子高校(調布市若葉町)音楽科3年の正戸里佳さん(17)が、9月にイタリアで行われた「パガニーニ国際バイオリンコンクール」で3位入賞を果たした。最近のバイオリニストには珍しく、かつての巨匠を彷彿(ほうふつ)とさせる「温かく、美しい」音を奏でるのが最大の魅力だ。国際的な知名度はまだ高くないが、大型新人の登場に注目が集まっている。(山本雄史)
パガニーニコンクールは、19世紀に活躍した超絶技巧で知られるバイオリニスト、ニコロ・パガニーニの名を冠した由緒ある国際コンクール。日本人では、庄司紗矢香さんが平成11年に史上最年少の16歳で優勝を果たしている。(★印参照)
正戸さんは、広島市出身。テレビで見たバイオリン演奏に感動して「やりたい」と母親にせがみ、3歳からバイオリンを始めた。「祖父がバイオリン、母もピアノをやっていたので、音楽に向いている家系かもしれません」と話す。
中学時代に学生コンクールで入賞。「なるべく早く東京の音楽学校に行くべきだ」という師のアドバイスに従い、桐朋女子高へ進学。寮生活を送りながら、毎日5~6時間以上の練習をこなしている。
高校入学後、国際大会での入賞が期待されるようになったが、これまでセミ・ファイナル止まりが続いていた。
「コンクールは期待すると裏切られるので、入賞を聞いて本当にびっくりしました」と振り返る。
コンクール本選で、チャイコフスキーのコンチェルトを弾き終えた際、2000人の聴衆の拍手が最高潮に達した。風邪で熱を出すなどコンディションは最悪だったが、後で関係者から「なぜあなたが1位でないのか」と言われたほどの演奏だった。
技巧や力強さで勝負するバイオリニストが多い中、正戸さんはやわらかい、深みのある音を奏でる。
「コンクールはただの通過点。もっとうまくなって、早く自分の演奏会を開きたい」
17歳とは思えないプロ意識で、世界の「マサトリカ」を目指す。(産経新聞)
(11/20 10:04)
結局パガニーニの名を冠したヴァイオリン国際コンクールがパガニーニの母国イタリアとロシアの2カ国であるって事か。
そういえばモスクワのパガニーニ国際コンクールは今回で第四回だと言うから、未だ四年目の歴史の浅い大会で、日本人の優勝者は今回が初めてと言うのも道理だ。
だが、それにしても本家イタリアからはクレームはつかないのだろうか。
こんなややこしいヴァイオリンコンクールを持たなくともロシアには伝統のあるチャイコフスキー国際コンクールがあるじゃないか。
1999年には諏訪内晶子さんが史上初めて優勝もしている。
そのロシアにまた一つヴァイオリン国際コンクールを創るのなら紛らわしいパガニーニなんて止めてアウァー・コンクールにでもして欲しかった。
アウァーはロシアの大ヴァイオリニストで20世紀のヴァイオリンの巨匠エルマン、ジンバリスト、ハイフェッツ、ミルンシュタインを育てた。
20世紀最高のヴァイオリニストといわれるヤッシャ・ハイフェッツが演奏するパガニーニのカプリースを聴いてみよう。
因みに映像の最初に出てくる楽譜表紙によるとこの曲は演奏者ハイフェッツの師匠アウァーの編曲による。
◆パガニーニ作曲「カプリース 24番」(演奏ヤッシャ・ハイフェッツ)
http://www.youtube.com/watch?v=vPcnGrie__M
【蛇足】上記映像に関して: ヴァイオリンは左手の指で弦を押さえ音程を取り、右手の弓で弦を摩擦して音を出す。 弓で弾かずに右手の人差し指で弦を弾いてギターや三味線のように音を出す技法があり「ピッチカート奏法」と言う。 ところが映像中、右手の弓で弾きながら左手の弦を押してない指でピッチカーとをしたり、右手も弓とピッチカーと交互に弾く場面が途中(3分45秒くらい)から出てくるが、作曲者パガニーニと演奏者ハイフェッツの面目躍如と言ったところ。
最後の部分(5分20秒前後)は圧巻で、弾き終わって「どうだ!」という感じで伴奏者を見るハイフェッツ。自分の技術に対する自信が滲み出しているシーン。 なおこのややこしい奏法は後のスペインの作曲家で大ヴァイオリニスト・サラサーテのお馴染みツィゴイネルワイゼンの最終部分に見事に引き継がれている。
【蛇足】その2:ハイフェッツ兄弟子に当たるアウァー門下のエフレム・ジンバリストは日本のヴァイオリニストの長老江藤俊哉の先生であり、息子のエフレム・ジンバリスト・ジュニアはアメリカの有名なテレビ俳優で、孫も世界的に人気のある女優である。
★庄司紗矢香http://www.universal-music.co.jp/classics/shoji/
★1999年12月23日 特集 天才ヴァイオリニスト、庄司紗矢香の世界http://www.tbs.co.jp/news23/onair/tokusyu/1999_12/19991223.html
あの筑紫哲也先生もパガニーニ国際ヴァイオリン・コンクールで、日本人として初めての優勝を史上最年少の16歳で飾った庄司紗矢香さんを番組で特集していたようだ。... このコンクールは、時によっては優勝者が出ないほど厳しい審査で知られ、これまでにギドン・クレーメルなどが優勝している。 ...
◆参考:チャイコフスキー国際コンクール
【蛇足】その3:ロン・ティボー国際コンクールは「ロン・ティボーさん」の名を冠したコンクールではない。
⇒ロン=ティボー国際ヴァイオリンコンクールhttp://www.gorodiary.com/long-thibaud/thi5.php