川内原発、再稼働禁止の請求を却下 鹿児島地裁
九州電力川内(せんだい)原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)の再稼働をめぐり、鹿児島地裁(前田郁勝〈いくまさ〉裁判長)は22日、運転差し止めを求めた住民の仮処分の申し立てを却下した。争点となった再稼働の前提となる新規制基準、原子力規制委員会による審査はいずれも「不合理な点は認められない」とした。住民側は福岡高裁宮崎支部に即時抗告する方針。
再稼働をめぐっては、今月14日に福井地裁が関西電力高浜原発(福井県)の運転を禁じる仮処分を出した。新規制基準に主要部分が適合したと規制委が認めた二つの原発の運転をめぐり、異なる司法判断が出されたことになる。九電は川内原発1号機の再稼働を7月上旬に予定している。
仮処分を申し立てたのは、川内原発の運転差し止めを求める民事訴訟の原告住民のうち鹿児島、熊本、宮崎の3県に住む23人(辞退により現在は12人)。
前田裁判長は、新規制基準について「福島第一原発事故後の最新の科学的知見などに照らし、不合理な点は認められない」と指摘。九電が新基準に従って定めた、川内原発で想定される最大の揺れ「基準地震動」についても、適合するとした規制委の判断に問題はないとした。
住民側は、基準地震動を超える揺れが2005年以降、全国の4原発で5回観測された点などを挙げ、基準地震動の算定方法は不合理だと主張したが、前田裁判長は「新規制基準では地域的な特性が考慮されている」として、住民側の主張を退けた。耐震設計についても「安全上の余裕は確保されている」と認定した。
広範囲に壊滅的被害をもたらす火山の「破局的噴火」の評価も争われた。前田裁判長は、「火山学者の間で危険性が高まっていることを具体的に指摘する見解は見当たらない」として、破局的噴火の可能性は極めて低いとする九電側の主張を認めた。
川内原発は昨年9月、全国の原発で最初に、主要部分が新規制基準に適合すると規制委が認めた。昨年11月には地元自治体、議会の再稼働への同意も得られ、規制委が現地での検査を続けている。
再稼働をめぐっては、福井地裁が昨年5月の判決で関電大飯原発(福井県)の運転差し止めを命じ、今月14日、高浜原発の運転を禁じる仮処分決定も出した。同じ裁判長による判断だったため、鹿児島地裁の判断が注目されていた。
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■鹿児島地裁決定理由の骨子
・川内原発1号機、2号機の運転差し止めを命ずる仮処分命令の申し立てを却下する
・原子力規制委員会が策定した新規制基準は、最新の科学的知見などに照らし、不合理な点は認められない
・九州電力は新規制基準に従って基準地震動を定め、耐震設計を行っていると認められるから、規制委の適合性判断に不合理な点は認められない
・九電は福島第一原発事故を踏まえた重大事故対策をしており、耐震安全性を確保していると評価できる
・火山噴火に対する九電の評価も、火山学の知見により一定程度裏付けられている
・地元自治体の避難計画は、一応の合理性、実効性を備えているものと認められる
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これに対して九州電力は、国の基準に従って対策を取ったと反論していた。
鹿児島地方裁判所の前田郁勝裁判長は、「国の新しい規制基準は、専門的知識を持つ原子力規制委員会によって策定されている。過去10年間に当時の基準を超える地震の揺れが全国で5例観測されたが、新しい規制基準はその原因を考慮して手法が高度化されていて、最新の科学的知見に照らして不合理な点は認められない」という判断を示した。
そのうえで、「地震の揺れの想定は地域的な特性を踏まえたうえで一定の余裕が確保されていて、巨大噴火の可能性についても火山学者の間で頻度が小さいという認識は共通している。川内原発が基準に適合しているかどうかの判断について不合理な点はない」などとして、住民の申し立てを退ける決定をした。
原発の再稼働についての仮処分では4月14日、福井地方裁判所が「国の規制基準は緩やかすぎて、原発の安全性は確保されていない」として、同じく審査に合格した高浜原発3号機と4号機の再稼働を認めない決定を出していて、国の新しい規制基準について裁判所の判断分かれた。