1月29日に行われた代執行訴訟の第三回口頭弁論で裁判長から提示された2種の和解案が公表された。
内容は、8日の第2回口頭弁論で裁判長が被告の県に異例の質問をしたことに関係がある。
和解案のないように立ち入る前に、裁判のこれまでの経緯を説明しておこう。
裁判長は、被告の県側に「仮定の話」と前置きしながらも「敗訴の場合はどうするか」などと質問すしている。
審議過程では中立のはずの裁判長が、一方の当事者が敗訴した場合の対応を質問するのは前代未聞である。
裁判長の異例の質問を10日付沖縄タイムスの2面に次のように報じている。
(裁判長は)県側には仮定の話として、「違法確認訴訟で県側が敗訴したら、どうするのか」と質問。 敗訴が確定した場合、翁長知事が承認取り消し処分などを取り下げる可能性について触れたとみられる。 県側の加藤裕弁護士は「即答は不可能だが、検討する」とした。
裁判長としては、「秒殺」の判決を出したい気持ちだが、県と国とが全面対決する訴訟は全国的注目を浴びており、しかも翁長知事を支援する沖縄2紙の報道が常軌を逸している。
そのため、いくら中立の裁判長でも簡単に「県側敗訴」の判決は出しにくいのだろう。
昨年8月の集中協議以来、頑なに取り消しを主張する県に対して、裁判長は敗訴した場合の県の対処を、念のため、聞いてみたのだろう。
裁判長の質問には二つの意味がある。
一つは、ここで一方的に「県敗訴」の判決を出したら、県の面目が丸潰しになるので、「取り消し」を撤回させて和解に持ち込むという「温情」の面。
もう一つは、県がこの「温情」を無視し「和解案」を蹴るようだったら「秒殺」で敗訴の判決を出すぞ、という「脅迫」に面だ。
これだけの予備知識を持って、今朝の沖縄タイムスの関連見出しを拾ってみよう。
■一面トップ
証人取り消し撤回促す
高裁和解案 判明
代執行訴訟で知事に
■二面トップ
基地問題置き去り
高裁判決 解決つながらず
辺野古新基地 国に30年返還要求
知事に取り消し撤回促す 辺野古代執行訴訟の和解案判明
名護市辺野古の新基地建設の埋め立て承認取り消しをめぐる代執行訴訟で、福岡高裁那覇支部(多見谷寿郎裁判長)が国と沖縄県に勧告した二つの和解案の内容が2日、分かった。一つは、県が埋め立て承認取り消しを撤回し、国は建設する新基地を30年以内に返還する根本的解決とする案。もう一つは、国が代執行訴訟を取り下げて工事を止め、県と再協議するよう促す暫定的解決案としている。国と県の両者が合意しなければ和解案は採用されず、両者の判断が注目される。
和解案は、多見谷裁判長が1月29日の第3回口頭弁論後、非公開の協議の場で提示した。裁判所の指示で公表されず、県は裁判所に公表を要求していた。
「根本的な解決案」とされる県の承認取り消し撤回は、国の計画通りの新基地建設が前提となるため、県側は受け入れない可能性が高い。期限付きで返還か軍民共用にする国と米側の交渉も不可避となる。
一方、「暫定的な解決案」とされる国の提訴取り下げは工事の中断が同時に求められ、根本的な解決策とはならず、国にとって歓迎する内容ではないとみられる。
翁長雄志知事の埋め立て承認取り消しに対し、国が違法確認訴訟や「是正の指示」など、別の手段で争う可能性も残る。
翁長知事は第3回口頭弁論後、記者団に対し新基地建設は造らせない方針を示し、和解案への対応は「まったく白紙」と述べた。県側の竹下勇夫弁護士は、「行政事件訴訟の中で和解勧告は、かなりまれではないか」との認識を示していた。
代執行訴訟は、今月15日に翁長知事、29日に稲嶺進名護市長の証人尋問を終え、同日結審する。和解案を国、県ともに受け入れない場合、3月中にも判決が言い渡される見通し。
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新基地に30年期限 国は返還か軍民共用、米と協議を 代執行訴訟の和解案
名護市辺野古の埋め立て承認を翁長雄志知事が取り消したことの適法性をめぐり、国が県を訴えた代執行訴訟に関し、福岡高裁那覇支部(多見谷寿郎裁判長)が県と国双方に提示した和解案の内容が2日、分かった。同支部は、県が承認取り消しを撤回した上で、国は新基地を30年以内に返還するか、軍民共用にするかを米側と交渉する「根本的な解決案」と、国が代執行訴訟を取り下げて工事を中止した上で、県と協議し、なお折り合いが付かなければ、より強制力の弱い違法確認訴訟で法的正当性を争う「暫定的な解決案」の2案を示した。和解の提案に応じられない場合は、判決期日は4月13日とすることを裁判所が原告の国と被告の県に提示していたことも分かった。
裁判所が和解の選択肢として、都道府県に米軍基地建設を容認するよう提案するのは初めてとみられる。
30年期限案については、「辺野古に新基地は造らせない」とする翁長知事の公約に反することから、県が受け入れる可能性は低い。国も、米軍基地に使用期限を付けた提案は受け入れない公算が大きい。
1月29日に開かれた代執行訴訟の第3回口頭弁論終了時に多見谷裁判長は「和解を勧告する」と述べた後、非公開の進行協議の中で、2種類の和解案を提示した。裁判所は原告の国と被告の県双方に、和解勧告の内容を公開しないよう求めていた。
和解勧告の提案をどう評価するかについて、翁長知事は29日の弁論終了後、記者団に「全く白紙だ。関係者の意見を聞きながら、検討していきたい」と述べていた。菅義偉官房長官は同日の会見で「今後、政府として対応が可能かどうか検討する形になる」と述べている。
県弁護団は和解案を検討する場合、県議会に説明する必要があるとして、県議らへの説明を認めるよう、2月1日に福岡高裁那覇支部に申し入れた。弁護団によると、同支部は「国の意見を聞いて検討する」と回答した。
代執行訴訟は15日に翁長知事への本人尋問、29日に稲嶺進名護市長への証人尋問が行われ、29日に結審することが決まっている。
沖縄タイムス、琉球新報の両紙は翁長知事の応援団という事実を勘案しても、次のことは容易に導き出せる。
国側が代執行訴訟を取り下げるとは考えにくいが、県が「取り消し」を撤回することはそれ以上に困難だ。
翁長知事が知事の座に座れたのは「あらゆる手段で辺野古阻止」という公約を掲げたからだ。
それをいまさら撤回したら「オール沖縄」の中心勢力である共産党が黙って見過ごすはずはない。
これまで翁長知事礼賛の提灯記事をかいていた沖縄2紙も、知事の「取り消し撤回」と同時に知事攻撃に転じるだろう。
では、県がいずれの和解案も拒否したらどうなるか。
裁判長は、和解案が不成立の場合は4月13日に判決を下すという。
筆者の見立ては当然県の敗訴。
翁長知事は和解案拒否の場合も、判決で敗訴の場合も「あらゆる手段で辺野古阻止」の公約違反ということになる。
そこで以下は推測の域を出ないが、最近翁長知事が頻繁に口にする「けじめ」をつける行動に出る。
つまり公約違反の責任を取り、知事を辞任する。
辞任後の進路は次の二つが考えられる。
一つは「戦う知事」の印象が消えない間に、再度県知事選に挑戦する。
もう一つの選択肢は7月の参院選へ出馬し、「オール沖縄」から「オール日本」の神輿にのって安倍政権と戦う野党連合の象徴となることだ。
工事が多少遅れたとしても、普天間移設が約20年も遅れたことを考えれば工事中止には合意できるだろう
以上筆者の推測を述べたが、代執行訴訟で現在確定していることは次の日程だけである。
1)15日に翁長知事への本人尋問。
2)29日に稲嶺進名護市長への証人尋問、同日に結審。
3)4月13日に判決。