安倍晋三首相が3日の衆院予算委員会で、甘利明経済再生担当相の金銭授受問題が政策決定に影響したとの懸念を示した民主党の岡田克也代表に対し「具体的に何に影響したのか。言わないなら、ただの誹謗中傷だ」と声を荒らげる一幕があった。

 民主党のトップバッターとして質問に立った岡田氏は甘利氏が大臣室で50万円を受け取った問題で「面識がない人と会い、菓子折りを置いていき、後で確認したら祝儀袋に50万円が入っていた。これは政治資金と思うか」とただした。政治資金収支報告書に記載された日付と、甘利氏が実際に受け取った日付が異なることも挙げ「意図としては裏金と見ざるを得ない」とも述べた。

 首相は「政治資金にのっとって正しく対処していくことだ」などと淡々と述べるにとどめ、個別的な話には触れなかった。

 しかし、岡田氏が、献金によって政策が左右されることはないとする首相の発言の根拠を求めると、首相は「ないからだ」と吐き捨てるように語った。

 岡田氏が「甘利氏はグレーだ。甘利氏が、大きな権限を持ってアベノミクスの司令塔、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の最終交渉をした。きちんと検証すべきだ」と迫ると、首相はさらにボルテージを上げた。

 首相は「週刊誌報道がTPP交渉や経済財政政策に影響するのか。するはずないじゃないですか」と身ぶり手ぶりを交えて大声でまくしたてた。

 岡田氏は「TPPは農家に死活問題だ。週刊誌報道ではなく、こうしたお金にルーズな事務所、あるいは本人が大きな権限を持っていたことに、危機感を持つべきだ」と再反論。

 首相はたまりかねたのか、「公党の代表として嫌疑をかけるなら、具体的にどの品目に影響を与えたかいわないと、ただの誹謗中傷だ。週刊誌報道に頼らず、具体的な案件をいってほしい。ないものをないと証明するのは悪魔の証明だ」とまくしたて、「交渉をけがすのはやめてほしい。甘利氏は命がけでがんばった」と甘利氏をかばった。

 岡田氏は「ない、と言ったのはあなただ。説明する責任がある」と応戦した。

 消費税増税時に導入する軽減税率による減収分1兆円を穴埋めするメドが立っていない点を岡田氏がただすと、首相は「腹案があるといって、なかったということにはならない」と述べ、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設問題で、「最低でも県外」「腹案がある」などと大風呂敷を広げた民主党政権当時の鳩山由紀夫首相を皮肉りながら、自信満々の様子だった