「対立乗り越える包容力、沖縄県民の最大の力」 玉城デニー知事が初の所信表明
沖縄タイムス 2018年10月16日 10:51
沖縄県の玉城デニー知事は16日開会した県議会(新里米吉議長)10月定例会に、就任後初めて出席し、所信を表明した。「政治的な立場を超えて歩み寄ることのできるウチナーンチュの包容力は、対立や分断を乗り越える賢さであり、私たちの持つ最大の力」と強調。県民同士で負担を付け替え、新たな犠牲を強いることが県民の望む解決の道ではないと訴え、「辺野古の新基地建設反対」「普天間飛行場の1日も早い閉鎖、返還」を強く求める考えを示した。
また知事選で掲げた公約の達成のために「新時代沖縄の到来」「誇りある豊かさ」「沖縄らしい優しい社会の構築」の三つの視点を踏まえ諸施策を展開すると説明した。
その中でも柱となる政策として、世界各国との経済、文化、教育、人材交流などを促進する「万国津梁会議」の新設、畜産品、水産品などの県産ブランドの海外輸出体制を強化するための「高度衛生加工処理施設」の整備、持続可能な世界水準の観光都市沖縄を目指すための「観光・環境協力税」の導入、「琉球歴史文化の日」の制定などを具体的に挙げた。
米軍基地問題では、日米地位協定の見直し、跡地利用の促進に引き続き取り組むことを決意。中学生、高校生のバス通学の無料化、放課後児童クラブの設置促進と利用料の低減、子育て世代包括支援センターの全市町村への設置など、子育てや教育の支援にも力を入れる考えを示した。
故翁長雄志前知事について、「県民の心を一つにする」と深く望み、県民が持つ「力」を誰よりも信じ、「揺らぐことのない自らの決意がいつも県民とともにあることを命を懸けて私たちに伝え続けられた」とたたえた。
さらに「沖縄戦、米軍占領下を生きたウチナーンチュが涙とともに失ったもの、汗とともに得たものは社会を支え、希望の世紀を拓(ひら)くたくましい営みにつながっている」とした。
「『県民の生活が第一』『イデオロギーよりアイデンティティー』『肝心こそ大切~チムグクルドゥテーシチ』、このような言葉の持つ意義、意味を尊重し、全ての県民が笑顔と喜びを広げ、夢や希望が持てるよう、かけがえのない沖縄の未来を創り上げていく」と締めくくった。
【視点】知事演説、対立色避ける配慮も
- 八重山日報 2018/10/17
玉城デニー知事は県議会で行った初の所信表明演説で、改めて米軍普天間飛行場の辺野古移設に反対する考えを示した。ただ移設阻止を「県政運営の柱」とまで言い切った翁長雄志前知事に比べ、日米両政府に対する批判のトーンは抑制的で、「沖縄らしい優しい社会の構築」などの新たなキーワードを打ち出し〝デニー色〟を演出した。いたずらに本土との対立を煽るフレーズが消え、前県政よりも現実的な方向に踏み出した内容と評価できる。
翁長前知事は2月の所信表明演説で、米軍専用施設が沖縄に集中する現状を「異常」「日本の安全保障は、日本国民全体で考えるべき」などと激しい言葉で糾弾した。一方、玉城氏は米軍基地の整理縮小、駐留軍用地跡地の環境浄化対策などに「国の責務としての取り組みを求める」と述べたものの、政府や本土の住民を刺激するような言葉は避けた。
県は県民の意見を代弁する立場にあるが、国民の生命、財産の安全に最終的な責任を持つのは政府であり、安全保障政策である辺野古移設に反対することが「県政運営の柱」であっていいはずはない。新県政の所信表明で、この言葉が消えたのは良識の表れだ。「国と沖縄の対立」が異様にクローズアップされた翁長前知事時代とは違い、政府との対決色を前面には打ち出さず、一定の配慮を示したと言える。
辺野古移設をめぐっては、県が埋め立て承認を撤回し、政府が法的対抗措置を模索している段階。今後は法廷闘争に突入することが予想される。知事権限だけで移設阻止を可能にする決め手はなく、翁長前知事同様、基地反対という抽象的な理念の表明にとどまり、具体的な方策に言及できないのも事実だ。
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■撤回実施を忌避したデニー知事
デニー知事は「翁長知事の遺志を受け継ぐ」といううたい文句で、知事の座を得た。
だが、デニー氏を後継者に指名したといわれる「遺言」録音データはいまだに存在を確認されていない。
デニー氏は「遺言」を自身で確認することなく出馬表明をしたが、決意の前に再三出馬会見を延期した。
「出馬か否か」と心が揺れ動いた。
翁長前知事が遣り残した「撤回の実施」をたらい回しされるのを恐れたからだ。
政府は「撤回」により遅れた工事の経費を、県のみならず「撤回」実施をした県知事個人に損害賠償請求すると公言していた。
デニー氏は出馬決意の前、「撤回は翁長政権で実施する」を、出馬の交換条件にしたのではないか。
さもなくば、翁長前知事が、約1年半も前から叫びながら実施しなかった「撤回」を、謝花副知事が8月31日、あたふたと実施した説明がつかない。
「撤回」実施の数日前に、デニー氏は出馬表明している。
本来ならデニー氏が「翁長知事の遺志の後継者」として闘うには「撤回の実施」は絶好の公約になったはずだ。
公約の目玉となるべき「撤回実施」を、謝花副知事が知事選公示の約二週間前に行った理由は、デニー氏の「撤回」に関わる損害賠償の忌避といわざるを得ない。
デニー氏の「撤回」の責任忌避の心情をうかがわせる記事が、沖タイに・・・・・
玉城デニー氏一問一答 現県政の「撤回」を支持2018年8月30日 10:25
―知事選の争点と意義は。
「翁長知事が進めていた沖縄21世紀ビジョンやアジア経済戦略構想などをさらに進める。私の考えもその中に込める。辺野古の新基地建設の是非は避けて通れない争点だ。私は辺野古埋め立て承認の撤回を支持している。この選挙でもその思いをしっかり伝えたい」
―「撤回は支持する」と述べたが、現県政が撤回するのが望ましいということか。
「知事の遺志を引き継がれた両副知事が行政としてしっかり判断されると思う。私はそれをしっかり支えていく」
―撤回後には国との裁判が控えている。辺野古の基地建設をどう止めるのか。
「県民にいつまで日米安保の過重な負担を押し付け続けるのかと国会でも訴えてきた。その方向性は翁長知事と1ミリもぶれない」
―日米同盟、日米地位協定への考えは。
「私は保守中道で日米同盟を容認するスタンスだ。しかし現在の日米同盟は非常に偏った関係になっている。抜本的に解決するには日米地位協定の改定を含め、国がしっかり姿勢を示すことだ」
―相手は既に出馬を表明している。佐喜真氏への評価や思いは。
「人物評価は県民の皆さんにしていただければいい。だがこの間の報道を見ると(相手候補は)翁長知事と全く違う考えの方であるはずなのに、翁長知事の遺志を引き継ぐようなことを言っている。それを私は選挙戦で明らかにしたい。討論会には積極的に参加してほしい
さて、今日から政府が「撤回」により中止を余儀なくされ工事再開のため「法的対応」を実施するとのこと。
きょうの沖タイ一面左トップの見出しはこれ。
辺野古撤回 政府が対抗
きょう国交相に審査請求
デニー知事のお手並み拝見である。