「シン・ゴジラ」からここのところ、当りばかり観ています。
期待はしていましたが、「君の名は。」の衝撃的な感動を超えることは無いとふんでいたのですが・・・
なんかね、吼えたくなるような映画なんですよ。ラスト一緒にね、すずと一緒に吼えたくなるんです。まっとうに怒りを抱えているのはすずだけでしょ。オジサンもなんかやってあげたくなるんですよね。でも、それは彼女には迷惑なのかな。
沖縄問題をこんなに身近に感じた事ありませんでした。ニュースになる度に毎度毎度、米兵はしょうもねぇなぁと思っていたんですけど、身内や知人に起ることだとは思っていないですもんね。内地の人は。すずは「海街diary」「ちはやふる」以来、わたくしの娘ですからね。そりゃ憤りMAXなわけです。同級生の男の子以上に怒り心頭だっつうの。(誰にキレてるんだ?)頭の悪い野獣のような米兵個人への怒りだけじゃないから根深い問題です。米軍の沖縄在留を必要悪なんていう言葉で濁らせても仕方ないし、沖縄の人はそんなことを何時までも言ってる政府や米軍にイラついているんでしょう。そのもっと根源的な恨みは、見てみないふりを続けている内地の人たちへの不公平感じゃないかな。
渡辺謙と宮崎あおいの父娘には思う存分感情移入をしました。泣いた泣いた。
少し頭の足りない娘を思いやるが故に強面の父親の哀愁は観る者の心を揺さぶります。惚れた男を信じきれず、殺人犯じゃないかと通報した娘が放つ慟哭に正面から付き添う姿は、同じ年頃の娘をもつわたくしとして同化するしかないっしょ。結果、犯人ではなかった(彼の言う事を信じ切れなかった)事がわかった時、娘にかかってきた携帯電話にかぶり付いて帰ってきてくれと懇願する姿はかっこ悪いけど、とってもかっこ良かった。
宮崎あおい、文句の付けようがありません。天真爛漫だけど少し足りない感じって、微妙に難しいと思うんですね。オーバーにやっちゃうと、少しじゃなくなるし、抑えちゃえば語りの中での説明になっちゃう。上手いんですね。今年の助演賞は決まりじゃないかしら。
昔「ブロークバックマウンテン」を観て泣いたんです。同性愛者の話し観て泣くなんて思いもしなかったんですけど、ラストにヒース・レジャーが死んでしまった彼のシャツを抱きしめて嗚咽するシーンに感動しました。
妻夫木聡が綾野剛を信じきれずかかわりを断った後、彼の死を知り街をさまようシーンでやっぱり泣いてしまいました。一緒の墓に入るなんて日本人的感覚、今時仲の良い夫婦だってもたない考え方かもしれません。「一緒は無理でも、隣りならいいかな?」・・・ってさ、そんな愛情だってあるんだよな。
文字通り二人とも身体を張った熱演でした。
火曜サスペンス劇場なんかに毒されてしまった観客には、犯人が誰だとか気になっちゃうのかもしれないけど、テーマは人を信じられますか?と言う事です。三様の真実と信頼がしっかり描けていた脚本と芸達者な演者、そして効果的な音楽。それらを得て、李相日監督の揺るぎない代表作となりました。
最後にもう一度申し上げます。
怒りをまっとうに抱えているのはすずだけです。
ラストカットのアップはその事をわたくしたちに訴えています。