映画と渓流釣り

物忘れしないための処方箋

ダンケルクの海

2017-09-17 05:57:25 | 新作映画

有名なノルマンディ上陸作戦を描いた映画はたくさん観てきた。米英の連合軍が多大な犠牲を払ったが、結果としては勝利したから物語にもなる。俄か知識でダンケルクの戦いをお浚いすると、ドイツ軍優勢の序盤戦、イギリス軍の撤退とフランス軍の敗北の歴史らしい。そんな負け戦を題材にしているから勇猛果敢な映画では無い。やっぱり作戦の失敗を描いた「遠すぎた橋」に雰囲気は似ている。あの作戦もイギリス軍がメインだったと思い出す。高校生の頃楽しみに観に行ったのに、ジリ貧になる戦闘はスカッとしたオールスターキャスト映画を期待していただけにガッカリものだった。
だからと言って、この作品にケチをつけるつもりはない。浜辺と海と空でやり取りされる命の物語は、過激なシーンを割愛する事で、静謐な戦場の恐怖を観せてくれる。
ノーランの作品が独特なのは時間軸を紡ぐ事で、別角度からの視線や視点を共有できる事だ。今回の作品は陸から逃げ惑う兵士と救助に向かう海上の船乗り、それを援護する空飛ぶ飛行士の時間を体験できる。それぞれが独立しながら徐々に大きな流れに合流して行く演出は見事で、非凡さを思い知るばかりだ。前作が大好きだったのであれ以上とまでは思い入れできないけれど、いちいちイギリス人のこだわりをみせるあたりも風格を感じさせる作品に仕上がった。