今年の天候不順な夏同様、この一月心身ともに不調。
是枝作品なので見過ごす事はできないから、初日初回の鑑賞。
ドキュメンタリータッチが真髄だと思うけど、海街然り、作劇も風格ある本格派だなと改めて感心した。弟子の西川美和が前作で家族を正面から描き、師匠に似てきたなと思ったら、師匠はホームドラマから離れた作品を発表するなんて面白い。
法廷劇と宣伝されている様だけど、そんなに直球じゃ無い。まあ、ありきたりな角度でしか映せない被告人との面会シーンも、上手くアクリル板に反射するの陰影を重ね、弁護人との埋められない溝を観せてくれる。テレビに毒されてしまった脳味噌には、その藪の中がもどかしいのだろうけど、多分、白でも黒でも無い曖昧さが真実なんだと思う。と言うか、そう映画は語っている様に思えた。
父親にレイプされていた少女を救うための殺人だと映画が断言してしまえば、至極座り心地の良い物語になって、犯人の情状を慮った日本的伝統芸能の後継作品になるところだった。あの名作「砂の器」みたいに。でも、なんかそうなっちゃったら幻滅しただろうな。なんか、陳腐な落とし所過ぎて、リアリティと言うより引き算して残った理由がそうでした。みたいな。食品偽装は旬じゃ無いけど、よほど説得力あるし、斉藤由貴が悪妻(ちょうど今不倫報道でこちらは旬)の濡れ衣被るのも納得。
役所広司は上手だと再認識。嘘か本当かの二択以外を演じることが出来るんだ。福山雅治のガリレオっぽい青さでは太刀打ちできない。割りを食ったのは、広瀬すずも同じ。彼女の良さは封印されてしまった。
是枝作品の温かさは無いけれど、久しぶりにドップリ映画に浸かった。