映画と渓流釣り

物忘れしないための処方箋

夏のドラマ

2019-08-03 05:04:00 | 旧作映画、TVドラマ

2019年夏ドラマを一通り観たので、感想をしたためます。

Heaven~ご苦楽レストラン~
三話まで観たけど、もういいかな。
石原さとみはファッショナブルで見ているだけなら充分楽しめるのだけど、如何せんドラマそのものが酷すぎる。TBS火曜10時枠なのに、脚本演出ともチープだ。レストランを舞台にしたドラマは「王様のレストラン」「問題のあるレストラン」と好きなものがあったからちょっとだけ期待したのだけど、この先も面白くなりそうな予感は全く無い。四話目も録画したので観ることは観るけど、多分そこでリタイアすると思う。
そして、四話もかなり酷かったので、心置きなくリタイアします。

これは経費で落ちません!
このところ傑作を排出しているこの枠。第一話は多部未華子中心の登場人物紹介で走り抜けた。キャラクター設定が漫画的にはっきりしているから掴みやすいドラマになりそうだ。ポップなつくりもNHKらしからぬ臭いがするけど、「トクサツガガガ」がそうだったようにNHKドラマはかなり挑戦的に変化している。そういえばガガガのヒロイン小芝風化もそれまでのイメージを覆すハマリ役だったけど、多部未華子もなんか大化けしそうな気配を感じる。今まで彼女が魅力的に感じたことは無かったけど、地味な制服を着て淡々と経理処理をする姿はある種のフェティシズムを醸し出し艶っぽい。脚本家が信用置けない渡辺千穂なのが気にかかるところ。金曜10時は本命ドラマを録画しているので、こちらは深夜の再放送を録画している関係で鑑賞が遅れ気味。

凪のお暇
一話目が少しもたついた感じがしたが、二話目からは人物設定も馴染んできて、古アパートに住む他人だらけのホームドラマとして楽しめるようになった。黒木華の存在感はこのドラマのリアリティを担うのに欠かせない。所謂美人女優が演じてしまうと嘘臭くなるし、共感できるハードルは高くなるだろう。高橋一生、中村倫也、三田佳子の共演陣が浮いてしまう心配をしていたけど、上手い人たちばかりだからその心配も杞憂だった。吉田羊(子役共)も含め豪華な役者が繰り広げる擬似家族ドラマの中で、主人公がどのように自分を見出して行けるのか見守っていきたい。アパートの住人は一癖ありながらも愛すべき人々なのかと思いきや、中村倫也扮するゴンがきな臭い。友達として近所に引っ越してきた市川実日子も危うい臭いがする。結局元の鞘に収まって高橋一生の下へ戻りましたみたな結末は嫌だな。

だから私は推しました
NHK本当に凄いな。一話30分が濃いので、民放ドラマ三話分くらいの重みがある。今一番油が乗ってる脚本家森下佳子なので、普段観ない深夜ドラマだけど期待している。導入部分の一般OLがたった一人のアイドル推しになるまでが、分かりやすく細やかな描写で描かれている。丁寧になぞりすぎれば説明過多になりドラマの面白味は失せる。下手な脚本と演出にかかると、登場人物に感情移入できない。初回の冒頭から取調べを受けているシーンで始まるから、何らかの犯罪がらみに展開してゆくのだろうけど、観たいのは自分の存在価値を地味なアイドルの女の子に投影してゆくOLの姿と、応援を受けて輝いてゆくだろうアイドルの女の子の成長だ。二話目で犯罪に走った理由がかなり明確に語られた。推しているアイドルに絡みつくようなストーカーファンを嫌らしく描写することで、主人公のOLに肩入れすることができる。不器用なアイドルを自分も応援している錯覚をも起こしている。もしかしたら、この夏一番面白いドラマかもしれない。

監察医朝顔
上野樹里を観るのは随分久し振りだ。映画「スウィングガール」で大好きな女優になって以来、テレビ映画を追いかけたけどいつの間にか疎遠になっていた。当たり前だけど随分歳をとったなと言うのが感想。彼女の魅力は無責任な若さゆえの暴走力だとばかり思っていたから、落ち着いた雰囲気で解剖所見を語る上野樹里はわたくしの知らない女優みたいだ。変わらないのは舌足らずな甘え口調の喋り方。良い女優の必須アイテムの一つに声(口調)があると常々感じているが、彼女も例外ではない。
このドラマの売りは単なる法医学謎解きストーリーにしていないところだろう。野木亜紀子脚本の「アンナチュラル」が本格的な謎解きで唸らせてくれたから、比べてしまうと見劣りするけど、父と娘そして津波で失った母の家族が深く描かれており感動的だ。

なつぞら
折り返しを過ぎ、主人公なつは祝福の中で結婚した。てっきり北海道帯広の幼馴染と結ばれると思っていたからちょっと変化球を投げつけられた感じだ。
折りしも京アニの惨劇が、アニメーション製作現場を中心に描かれるこのドラマに重なって感慨深い。本当の現場とドラマでは違うところも多いのだろうけど、良いものを皆が喜んでくれるものを作りたいと願い筆を入れるスタッフの想いは同じだろう。ドラマを観ながら京アニの犠牲者へ哀悼を捧ぐ。
前々から書いているけど、舞台が帯広になるとドラマのリズムが躍動的になり俄然面白くなる。アニメを捨ててもいいからまた帰ってきてはくれないだろうか。じいちゃんとバター作りに没頭するなつが見たい。