映画と渓流釣り

物忘れしないための処方箋

山田尚子が伝えたい「きみの色」

2024-08-31 15:13:00 | 新作映画
いつの間にか京都アニメーションを離れていたのか
あの忌まわしい事件以降、京アニで作品を作り続けるのは難しかったのだろうか
アニメーションの場合スタジオの色は如実に表に出るから、京アニの山田尚子が好きだった人にはショックだろう

「けいおん!」「たまこラブストーリー」はテレビシリーズの延長を描かざるを得なかったので、作家主体の作品としては「聲の形」「リズと青い鳥」に続く3作目としてカウントすべきだと思う今回の新作について感じたことを書く

結果として、京アニを離れ一層作家性が際立ったと思う
繊細で透き通るような美しい京アニ作画風も継承しつつ、キャラクターは漫画チックなものから距離を置き写実的になった。前作前々作の雰囲気を踏襲しながらも、登場人物の苦悩や希望が一層身近であり共感しやすい

監督の出自でもある音楽(バンド活動)がけいおんの緩さとは違う角度で主軸になる
多分、監督がやってたバンドはこっちの方に近いのかな。ポップな感じよりマニアックな音が鳴っていた
それでいてライブのシーンは学園祭(のようなもの)で感動的に演奏されるところは心得た演出だ

バンドを組んだ三人の終わりつつある十代のひと時が主に描かれる
ミッション系の学校に通い4人部屋の寮生活を送っている主人公の女の子は、身の回りの人が発色して見える。それなのに、自分の色がどんな色なのかは分からない
主人公と同じ学校に通っていたのに退学して古本屋で働きながらギターを抱える少女は、家族に学校を辞めたことを言えないまま自分が何者かを見つけられない日々を過ごしている
古本屋でギターを弾いている少女に導かれるようにバンドを組むことになった男の子は、音楽を愛しながらも離島の家業(医者)を継ぐべく進学のために予備校にも通う

自分が発する色ってどんな色なんだろう
大人になってしまうと、どうでもいいように思い気にもしないそんな事にこだわる季節を切り取っていて鮮烈だ
自分の色を他人はどの様に捉え感じているのだろう
きっとその事に悩み萎縮し極力無色透明になろうと必死になっている子供たちが多いのじゃないのかしら
山田尚子はそんな子たちに声高じゃないけど、自分の好きな色で生きていきなさいと囁いているようだ