二月中旬、冬ドラマも中盤を迎えたところでそれなりの感想を
「おちょやん」
杉咲花は朝ドラヒロインにドンピシャだなと毎日感心して観ている。漸く本題の役者修行の話になってきて、舞台をつくり上げるために皆の力を合わせるプロセスが面白い。朝ドラはヒロインの一代記を描くことが主眼ではあるけれど、やっぱり群像劇の中で成長してゆく姿が一番感動的だと思う。多分今のパーツもその内終焉を迎え新しい世界に飛び込む事になるんだろうけど、できるならこのままのノリを崩すことなく最後まで進んで欲しい。
「ウチの娘は、彼氏が出来ない‼︎」
あの北川悦吏子だって、もうキュンキュンするようなシナリオは書けないってことなんだと、毎週痛ましい思いで観続けている。象印の意味と娘の出自に何か曰くがありそうだからこの先の展開にもう少し付き合おうと思ってはいるけど、菅野美穂演じる小説家ママの色恋沙汰には全く興味そそられないし、浜辺美波の娘がトキメイテいる整体師もなんか違うかな。きっと最後はマンガヲタク仲間の彼に落ち着くんだろうけど、設定がヲタク娘ならもっとその辺をデフォルメしないとドラマに膨らみが生まれない。福原遥の拗らせ女も面白いキャラだけど、中村雅俊のおじいちゃんとはあり得ないので結局元サヤということになるのだろうか。オーソドックスに母娘の人情噺で終わらせるか、幼馴染の沢村一樹とじれったいような中年ラブストーリーに的を絞った方が良いように思う。
野木亜紀子を意識してか、徹子の部屋のパロディなんかもブチ込んできたけど、先端を捉えていた北川悦吏子の枯渇が侘しく感じる。
「天国と地獄」
中盤に来てようやく入れ代りに慣れてきた。二人とも上手い役者だから、こちらが違和感を払拭できさえすれば物語に集中できる。何故入れ代わりが起きたのかという謎解きよりも、猟奇的な殺人事件の真実に焦点はあてられ始めているのもミステリードラマとしては正解だ。どうやら真犯人は高橋一生演じる日高ではなさそうだし、綾瀬はるかの女刑事綾子とのバディ感みたいなものまで感じさせてきている。まあ、そうならないと入れ代わりドラマとしては成立しないので、やっとそこまで来たかという気もしているが。森下佳子脚本なので散らばった主要キャストがどんどん纏りを深め事件解決へと向かっていくんだろう。北村一輝のライバル刑事のかかわり方も楽しみになってきた。
確か日高はゲイだとの触れ込みがあったので、綾子のパートナー柄本佑演じる陸に注ぐ目線とかが面白い伏線として用意しているのであれば今日的ではある。それにしても綾瀬はるか、春には36歳になろうとしているが、いい女になったなとしみじみ思う。男と入れ代ったことで声のトーンを低く抑えているのも不気味さを醸し出しているし、ドレスアップした本来の美しさはある程度年齢を重ねないと出せない魅力でもある。
「にじいろカルテ」
三話で安達祐実演じる若年認知症主婦を取り巻く人々のエピソードは、岡田惠和ドラマらしくてとても好感が持てたのに、それ以外ははっきり言って酷い出来だ。あんなに実力のある役者を揃えたのにこんなドラマを作っていたんじゃ、テレビ朝日のドラマは敬遠されても仕方がない。最後まで観続けられる自信がないな。
「俺に家の話」
このシーズン一番のドラマになるのは間違いなさそうだ。設定の特異性だけで話のスカスカなドラマを観せられることの多い中、ちゃんと家族を描くことができているのが良い。認知症の父親との確執や兄弟との軋轢なんかもベースに描かれているからメルヘンの国のお話になっていないし、そうかといって暗く重たい雰囲気にならないのが宮藤官九郎の真骨頂だろう。父親の一番弟子だと思っていた男が、実は腹違いの兄弟だと新たな展開になってきた。腹黒そうな介護士の動向に気を取られていたけど、やっぱりそんな単純な話じゃなくなりそうだ。主人公長瀬智也の息子との親子関係も含めて家族の話は二転三転しそうだ。
個人的に好きなのはクドカンお気に入りの荒川良々演じるケアマネージャーと、江口のりこの旦那でラッパーのラーメン店経営者。
「モコミ」
このドラマもちゃんと家族が描かれている。だからとても小さなお話だけどみんなリアリティがあるんだ。モコミの特殊能力は裏を返せば異端者でもあるわけで、昨今の多様性を重んじる時代の流れをつかんでいるともいえる。家族同士でもなかなか分かり合えないこともあるのだから、ましてや利害の一致しない他者と柔軟な関係を築くことはとっても難しいことで勇気のいることなのかもしれない。インターネットの普及により現実感の薄れた人間関係に追い打ちをかけるようなコロナ禍での生活環境は潜在的なモコミを生みだしているし、そういう異端を糾弾しようとする悪意はなくとも富田靖子演じる母親のような思い込みや花屋の店員が表す不満感を誰しも持っている。
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