秋ドラマは一年で一番秀作が揃う時季
今年も結構な力作が顔を出している
視聴している作品を並べてみた。今回は途中リタイアはなさそうだ
「宙わたる教室」
昔から定時制(夜間学校)は映画やドラマの題材として結構使われていた。やっぱり記憶に残るのは、山田洋次監督作品「学校」シリーズだろうか。山田監督は寅さんの中でも定時制で学ぶ人々を描いたから、思い入れがあるのだろう
このドラマも色々な理由で夜間学校に通う老若男女が登場し、そのバックボーンが語られ物語に厚みを加えてくれるが、山田監督が主題に置いた貧困とか劣悪な家庭環境問題などとは違う今日的で普遍的な問題が多い
民放お得意のお涙頂戴演出に流れがちな舞台設定だが、そこはNHK、主人公の先生は科学的な思考と適度な距離感を持った物静かな人で金八先生のようなオーラは発しない
定時制の学校にも部活動があることも知らなかったが、この作品がユニークなのは授業より科学部に集まる生徒が目標に向かって段々熱くなって行くところ
まあ分かりやすい筋書きではあるが、実際にあった話らしいし、最近尾鰭を付けてわざとミスリード狙ったドラマが多くウンザリしてるから堂々横綱相撲で押し切って欲しい
「モンスター」
趣里の女優芸を堪能するためのドラマになってしまい、チームで法廷闘争を勝ち抜くカタルシスは味わえない
相方弁護士のジェシーの演技力なんて期待する必要はなくて、要は使い方次第で良いアクセントになる。宇野祥平やYOUのような逸材をどうして無駄遣いしてるのだろうか理解出来ない
YOUにせよ、敵役になりそうな古田新太が弁護士に見えないのがそもそもミスキャストなのだが
結構お話しの本筋は面白いエピソードもあったので、趣里の芸を楽しみながら観るとしますか
「その着せ替え人形は恋をする」
アニメがとても面白かったのと、設定や物語がわたくし好みだから採点は途轍もなく甘い
これは原作の勝利だ。雛人形の頭師を目指す地味で真面目な男の子がクラスのヒエラルキートップに鎮座する派手なギャルと絡んでいくのだけど、女の子は見てくれに反しヲタクでコスプレ好きで結構しっかりした考え方をした良い子
話しが進むにつれ地味な男の子に恋心を増幅させていくところも、お約束のシチュエーションだけれど心地良い
いかにも深夜ドラマらしい気やすさもハードル低目で、手放しで楽しめるのが良い
アニメも二期制作中らしいので、そちらも早く観たいもんだ
「海に眠るダイヤモンド」
大方この作品が秋ドラマの大本命だろう
夏に劇場公開され大ヒットした映画「ラストマイル」の主要スタッフが、ドラマブランドNO1枠である日曜劇場に大風呂敷広げた。セットもキャストもふんだんに金を使いテレビドラマとは思えないクオリティー
重厚で骨太な作品を貶すとこ無いんだけど、この手の物にありがちな登場人物の多さに序盤惑わされた。誰に感情を寄り添わせたら良いのか未だ決めかねている
軍艦島のバイタリティ溢れた過去パートが秀逸過ぎるからか、現代パートになるとトーンが落ちる。金持ちの老女が誰なのかくらいしか興味はなく、要らなかったんじゃないかと今は思っている
近年稀に見る大作ドラマなので、じっくり味わいたい
「放課後カルテ」
松下洸平の別の顔が見られる
地ならしとして柔らかく良い人キャラが根付いてるから、ちょっとキツイ言い方しても根っ子のとこでは優しさがゆえなんだろうなと思わせてくれるのはナイスキャスティング。ここでドラマの半分くらいは成功している
物語自体にもうちょっと工夫は欲しいけど、子役の皆んなが自然体の上手な演技をしてるので良いドラマになっている
森川葵は久しぶりにメインキャストで演技するのを観たが、少女の時にあった儚げな面影は残しつつ大人の女優になっていた
「ライオンの隠れ家」
ミステリー色が強い序盤からホームドラマの温かさを感じられる中盤になって、隠れ家に住まう3人を応援したくなってきた
ただし、まだ残されたライオン君のDVに対する謎が未解決なのと、母子逃亡のお粗末な筋書きに違和感があって物語に没頭するまでには至らない
自閉症の障害をもつ弟役を演じてる坂東龍汰はノーマークだったけど、嘘臭くないリアルで繊細な演技が出色
幸せな家族が戻れるような結末になることを期待している
「おむすび」
橋本環奈が悪い訳じゃないけど、いくらなんでも女子高生で尚且つギャルメイクはキツすぎる。器用にどんな役も演じ切る力と度胸は持っているとは言え、瞬間的な変顔するのとは違う
ヒロインが既に充分認知されているのも良い悪いじゃないかな。安定感はあるしすんなり馴染みやすいから、朝ドラの短い時間の中で話を進めていくには重宝だろう。でも、利点はそのまま欠点でもある
物語は神戸に移り本題に入ろうとしてる。これから等身大の橋本環奈が見られると期待したい
「光る君へ」
大河ドラマもいよいよ最終章
紫式部より道長の話がメインになってしまうのは仕方ないか。圧倒的に内裏で繰り広げられる政権争いの方が面白いから
事実そうなんだけど、光源氏のモデルは道長だから源氏物語を読んだことある読者は、結構納得してるんじゃないかな
栄枯盛衰
終盤は枯れて衰えてゆく姿に安寧の光をどう差し込むのかが、大団円を締めくくる脚本演出の腕の見せどころ